食ライターが教える、大銀座で行くべき洋食屋さん4軒。
老舗の洋食屋さんが集まる大銀座地区。その奥深い世界を知るために、食のライターPさんこと渡辺紀子さんに行くべきお店を教えていただいた。
〈銀座木村家〉老舗の焼きたてパンは、洋食とともに心も満たす。
銀座のメインストリート・銀座通りに映える、白地に赤い文字で大きく掲げられた「キムラヤのパン」の看板。日本を代表する元祖あんパンの名店〈銀座木村家〉のトレードマークだ。パンのイメージもさることながら、現在の自社ビルが建てられた1971年以来、ともに歴史を重ねるのが3階の洋食グリル。粗めのパン粉をフワッとまとわせ、こんがりきつね色に仕上げた「ズワイ蟹のクリームコロッケ」は当時からの定番メニューだ。
ベシャメルソースが見えないほど蟹の身がたっぷり詰まったコロッケは、未冷凍の身をほぐして入れることで風味も豊か。ナイフを入れてまずは香りを味わい、トマト、タルタルの2種類のソースに絡めていただこう。「そしてなんといっても、パンの食べ放題がうれしい。気軽に、上質なファミレス感覚で楽しめます」(渡辺さんん、以下同)。7・8階で毎日作られる焼きたてのパンは、ほうれん草やレーズンなど日替わりで6種類。気に入ったパンを1階のベーカリーで買って帰るのも、粋な楽しみ方だ。
住所:東京都中央区銀座4-5-7 3F|地図
TEL:03-3561-0091
営業時間:11:00~20:00(19:00LO)
定休日:無休
席数:48席
〈洋食屋 伊勢十〉伊勢から神保町、そして銀座エリアへ。洋食シーンを彩る新顔店。
「松阪牛を身近な洋食を通して楽しんでもらいたい」と伊勢神宮おはらい町に門を構える、松阪牛専門焼肉店〈伊勢十〉の洋食店が東京に続々進出中。この店の名物の牛タンシチューは、肉を熟知した目利きのプロだからこそ実現した、ほどけるようなタンの柔らかさが格別だ。「ハンバーグやメンチカツなど、松阪牛メニューのお手頃価格に驚くばかり。夜は酒場使いをおすすめします」。
住所:東京都千代田区有楽町1-10-1 有楽町ビルヂングB1|地図
TEL:03-6810-0251
営業時間:11:30~15:00(14:00LO)、17:30~23:00
定休日:土日祝休
席数:80席
〈つばめグリル 銀座コア店〉時代の移り変わりとともに歩む、ハンバーグの歴史。
老舗洋食店をはじめ外食産業も変化するなか、昔ながらの味で勝負する〈つばめグリル〉。銀座で食堂としてスタートし、戦後は洋食、さらにハンバーグへと特化していった。「このメニューは外せない!」と渡辺さんも語るハンブルグステーキは、魚や肉などを包んで蒸し焼きにするパピヨット料理が由来。ハンバーグとビーフシチューを一緒に包み焼きにすることで生まれた贅沢な一皿は、根強いファンが後を絶たない。
住所:東京都中央区銀座5-8-20 銀座コアB1|地図
TEL:03-3569-2701
営業時間:11:00~21:30(20:30LO)
定休日:休みは施設に準ずる
席数:90席
〈銀座スイス〉リクエストから生まれた、銀座の定番カツレツカレー。
宮内庁御用達〈宝亭〉の総料理長だった岡田進之助氏が、終戦直後の1947年に創業。小麦粉を使わず、すりおろした野菜や果物を2週間かけて煮込んで作るカレーは何杯食べてももたれないといわれる。カツとの相性も良く、プロ野球選手のリクエストをきっかけに生まれた「カツレツカレー」もロングセラーの理由がうかがえる。「オムハヤシも捨てがたい。カニクリームコロッケや、ビーフクロケットも忘れずに」
住所:東京都中央区銀座3-4-4 大倉別館2F|地図
TEL:03-3563-3206
営業時間:11:00~21:00(20:30LO)
定休日:無休
席数:44席
【日本洋食協会の岩本さんに聞いた 】銀座の洋食について。
岩本 忠 いわもと・ただし/一般社団法人日本洋食協会の創設者で現会長。洋食の魅力を広める活動を行う。10月末には自身が腕をふるう洋食店を麻布十番にオープン予定。
銀座の洋食店は歴史に紡がれたロマンが満載。
祖父母が伝説の洋食店〈銀座キャンドル〉を営んでいた影響もあり、子どもの頃から洋食になじ みが深かったという岩本さん。国内外で飲食店の立ち上げなどに携わるなかで「日本の食文化としての洋食の魅力をもっと広めたい」と一念発起。 2016年には一般社団法人日本洋食協会を設立し、洋食のさらなる発展を目指して活動をしている。
「昔の銀座って大人の街だったんです。いまは閉店していますが、僕が20年前に〈キャンドル〉のオ ーナーになったときもその雰囲気が残っていました。いま、また洋食が注目されているのは、そういった古き佳きイメージを洋食に重ねる人が増えているからなのかなと思います。
昔から銀座の洋食店には華があった。美輪明宏さんに〈キャンドル〉のチキンバスケットは宇宙一、と言っていただいたことがあるんですが、銀座の洋食店のスペシャリテはお客さんに育ててもらって、いまもレシピが受け継がれている料理も多いです。
フレンチからスタートした〈煉瓦亭〉もいろいろな洋食の元祖といわれますが、いまでは当たり前になっているキャベツの千切りやパン皿にご飯を盛り付けたのも〈煉瓦亭〉が発祥。そういうヒストリーも含めて、洋食の色褪せない魅力を伝えていきたいです」
Navigator…渡辺 “P”紀子
わたなべ・みちこ/愛媛県今治出身。 文化出版局を経て、フリーの料理記者に。料理本の企画・編集のほか 『CREA』『BRUTUS』『Hanako』でも執筆。