町家でいただく、モダンな食。革新的な現代の“お茶事”体験ができる〈立礼茶室 然美〉
古より京都の人々の生活に密着し、発展し続けてきた町家は京都の建築文化の象徴ともいえる存在。その空間に今、新しい息吹を与える革新的なお店が続々と登場中です。築100年の美しい町家で、おいしさと京都らしさを同時に味わえるのは〈立礼茶室 然美〉。日本の伝統と新しい感性を融合させた、日本茶と菓子のペアリングコースをいただきます。8月26日(金)発売Hanako1212号「365日楽しい街。京都」よりお届け。
築100年の美しい町家で、より抜きの茶と菓子を味わう。
2021年に日本に本格上陸した、ニューヨークを拠点とするブランド「TaigaTakahashi」。このブランドのデザイナーで現代美術家でもある髙橋大雅氏が、自身が手がけた服と茶室、建築、彫刻作品で構成した総合芸術空間として〈T.T〉をオープンさせた。「過去の遺物を蘇らせることで、未来の考古物を発掘する」というブランドコンセプトは、築100年以上の数寄屋あじいしを改築した建築など、空間のすべてにその哲学が息づいている。高度な職人技による伝統的な素材をあえて使うことで技術を伝承させ、さらに磨きをかけて空間を作り出すことで、何もかもが簡易で画一的になってしまった現代のモノ作りに対するアンチテーゼを体現した。
中でも特筆すべきは、2階の〈立礼茶室 然美〉。ここでは日本の伝統と新しい感性を融合させた、日本茶と菓子のペアリング計5品のコースを満喫できる。菓子は、老舗和菓子店出身の菓子職人と一流ホテル出身のパティシエが共同で制作。旬の果物や京都の素材を使い、一期一会の心を伝えている。
品書きを見ながら待つと、目の前で冷茶、温茶が丁寧な所作で淹れられる。同時に、茶に合わせた菓子が、国内外で活躍するアーティストに特注した器にのって一品ずつ目の前へ。菓子は、美しさや個性ある味わいが際立ち、5品それぞれに驚きがあふれる。和洋のエッセンスが絶妙なバランスで盛り込まれ、甘いだけでなく酸味や塩味も感じられる内容は、まさに懐石料理。お茶は〈一保堂〉や〈利招園〉など、京都の名だたる茶舗から仕入れ。ペアリングティーのうち、2種はアルコールとの組み合わせも選べるのがうれしい。この館を作り上げた髙橋氏は、残念ながら今年4月に逝去。しかし、日本の美を再解釈し、現代に甦らせるという彼の遺志、そしてこの空間は、今後ますます注目されるはずだ。
とある夏のペアリングの一例。
一品目:「苔茂る」はあおさ、オリーブ、黒飴、発酵バター、昆布を使ったお菓子。あおさや昆布の磯の風味とバターのコクがマッチ。希少価値の高い「天然玉露」といわれる「京研」の283番が好相性。
二品目:玉蜀黍(とうもろこし)を使った小さな団子と、原料が同じポップコーンを合わせ、さらに玉蜀黍のすり流しと合わせる...という、素材のグラデーションを楽しむため考案された菓子。こちらは〈一保堂〉の極上ほうじ茶でいただく。
三品目:「雲の峰」は生姜と蜂蜜、レモンを使った夏らしい生菓子。これに合わせるのは〈利招園〉の和紅茶とライムミントコーディアルのブレンドティー。なおアルコールのペアリングコースの場合は、これにウォッカを加えたカクテルになる。
四品目:パインとココナッツ、タピオカを使う「日盛」。〈利招園〉の碾茶と、碾茶の葉脈や茎を使う「うすおれ」という2種の緑茶を水出しし、パッションフルーツピューレ、エルダーフラワーコーディアル、八角を入れたカクテル風の一杯を合わせた。
五品目:〆にはライチとザクロの水まんじゅうのような一品が登場。これには、四品目にも使用した〈利招園〉の希少な「うすおれ」を合わせる。煎茶のような見た目ながら、抹茶の甘み、香りを感じさせるお茶とのペアリングで、瑞々しい余韻が残る。
〈立礼茶室 然美〉
〈立礼茶室 然美〉/りゅうれいちゃしつ さび
住所:京都府京都市東山区祇園町南側570-120│地図
TEL:075-525-4020
営:13:00〜、16:00〜(各回一斉スタート)
休:無
席:17 ※完全予約制
茶菓懐石は5種の菓子&茶コース(アルコールを含むコースも可)で1人5,500円。