わざわざ行きたいベーカリー。 群馬にはハイレベルなベーカリーが勢揃い。パン好き必訪のおすすめベーカリー3軒
群馬県にはハイレベルなベーカリーが勢揃いしていて、実はパン屋激戦区。そんな群馬でパン好き必訪のベーカリーをご紹介します。この秋、ドライブしながらベーカリー巡りはいかがですか?
1.アメリカ西海岸の経験を群馬に。地元若手生産者と作るパン〈CROFT BAKERY〉
アメリカ西海岸でベーカリーのシェフを務めた久保田英史さん。この10年、現地で起こったパンの革命的進化を目の当たりにした。地元産小麦を、地元の製粉所で挽き、フレッシュなうちに使う。パンは飛躍的においしくなり、農業や地域経済が活性化された。「日本でも、なにかおもしろいことができるんじゃないかってわくわくしました」希望とともに、久保田さんは故郷に帰還した。群馬は昔からの麦どころ。おもしろい若手生産者と出会い、彼らの作る素材を、西海岸仕込みの技術でパンにする。
高崎の〈すみや農園〉から届けられる無農薬の「農林61号」全粒粉は「パンコンプレ」に。ふすまをお湯で処理してからパンにするので、イメージに反して食べやすい。藤岡市の〈福田農園〉では自然栽培でファッロ(古代小麦)が作られる。これにキヌアやアマランサスも加え「古代穀物のパン」にする。群馬という土地柄から新しいパンも生まれた。北関東ならではの素材である鞍くら掛かけ豆まめや花豆を使ったパン。群馬のご当地パンである「みそパン」も独自解釈で作る。それらは世界を俯瞰しながら作られる「ローカル」なパンだ。
〈CROFT BAKERY〉
バゲット、パン・オ・ルヴァン、じゃがいものパンなどバラエティに富んだ食事パン、〈ぐろーばる〉のハムなど良質な地元素材使用の惣菜パン、奥さんが作る焼き菓子。
(Hanako1181号掲載/photo:Kenya Abe)
2.群馬の隠れ家ベーカリーへ。ひたむきに作り続けた魂の“おいしいパン”を求めて。〈Rinascimento Cafe〉
追い詰められた崖っぷちで、全身全霊をかけて作る。松本正廣さんのパンから感じるのは、そんな職人だけが込められる精神性だ。店舗さえ持っていなかった。前身の〈リンカフェ〉時代、作ったパンをキッチンカーにのせ、自ら売りに出かけた。畑の真ん中に車を停めてみるが、待てど暮らせど客は来ない。怪しまれながら、通りがかりの人に声をかけ、パンを食べてもらう。作ったパンは売れ残り、ほぼそのまま持って帰る。そんな希望もない毎日。移動販売に見切りをつけ、自宅の敷地に自分で店舗を建てようとするも、建築許可が下りず、1年以上中断。その間、厨房の窓からパンを売っていた。
パンの森をさまよい続ける。パン酵母(イースト)は使わず、発酵種を自分で育てる。その数7種。どの種を使うか、どの小麦粉を使うか、どんな発酵をとるか。昨日より今日、少しでもいいパンを、と試行錯誤を繰り返す。「パン作りって毎日単調な作業。その中で、100回に1回、1000回に1回、『これは!』と思うものを見つけることがある」
〈Rinascimento Cafe〉
店主渾身のパン、サンドイッチ、コーヒーを静かに楽しむ小さなサロン。自家培養発酵種をいくつも組み合わせ、風味のハーモニーを作り出す。持ち帰り可。
Navigator…¥池田浩明(いけだ・ひろあき)/パンの研究所「パンラボ」主宰。パンライター。自称「ブレッドギーク」(パンおたく)。NPO法人新麦コレクション理事長として、日本においしい小麦を普及する活動も行う。
(Hanako1179号掲載/photo:Kenya Abe)
3.パン好き必訪!群馬・韮川の人気ベーカリーカフェ〈発酵所+ぱんのとなり〉
「食事を出す店を開きたい」というシンプルな思いを胸に行き着いたのが、パン屋さんだった。パンにこだわりがないように思える経緯だが、店主・松岡秀さんが抱える熱量は棚に並ぶパンの数を見ればわかる。リュスティックをアレンジしたオリジナルのパン「トナリ」など、約30種にも及ぶ多彩なパンをたった1人で焼き上げる。定番のパンには季節のフレーバーも。
〈パーラー江古田〉では約1年働いたものの、形式張った修業や勉強はせず、自由な発想でここまで来た。パンを作る上で決めていることは、バターや卵をなるべく使わず、少ない材料で仕上げること。クロワッサンよりもカンパーニュのように、食事に寄り添う素朴なパンを提供する。
(Hanako特別編集『おいしいパンのこと、すべて。』/photo:Taro Hirano text:Kahoko Nishimura)
※掲載しているパンはすべて取材時のものです。