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奥渋谷にできた新たなお茶スポット。 一つの茶葉を、飲んで、食べて、ゆったり過ごす。〈SAKUU 茶空〉
2月にグランドオープンした〈JINNAN HOUSE〉。渋谷から少し離れ、落ち着いた雰囲気の神南エリアに誕生した小さな複合施設だ。緑の生茂る庭には水色のフードトラック、2階建ての建物にはギャラリー&イベントスペース、そして“茶食堂”〈SAKUU 茶空〉が入居している。伊藤園が茶葉を厳選するこのお店は、ブランディングディレクターの福田春美さんがディレクション。お茶を新たな角度から見つめられる、豊かな体験ができる。
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日本茶のティースタンドやティーサロンは今やスタンダードになりつつある。静岡茶、鹿児島茶というざっくりした呼び名ではなく、お茶にもシングルオリジンが登場している時代だ。日本茶の奥深さが再認識されている今、「天竜茶」のみでドリンクや定食に展開する〈SAKUU 茶空〉の在り方はまた新鮮に映る。
”氷蒸し”で茶葉の旨みを味わう。
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ここでは、「スタンダード 三煎」と「氷蒸し 四煎」、2種類の淹れ方で提供する。「今回改めて日本茶について勉強してみたら、茶葉をいかにコントロールするかが大事だと気がつきました」と福田さん。独自に開発した“氷蒸し”で抽出されるのは、茶葉の旨味(テアニン)だけを引き出した出汁のような味わいだ。
茶葉ごと食べるヘルシー定食。
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「お茶は普通、抽出して飲むときには茶葉の3割程度の栄養しか取れないと言われています。そこで茶葉ごと食べられるようにしたらどうかと考えました」と福田さん。唐揚げの衣や野菜炒め、自家製のほうじ茶塩などで茶葉をそのまま摂取することができる。福田さんが「いくら食べても罪悪感がない!」と自負する唐揚げには、埼玉の米農家から取り寄せる無農薬の米粉を使用し、ヘルシーな印象。男子も満足できるボリュームだが、ペロリと完食できる。ここでまた茶葉の楽しみ方の幅広さを実感する。
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お茶の世界は道具を揃えるのも楽しい。〈SAKUU 茶空〉で使われる急須や器は、店頭での販売も行っている。氷蒸しに使う急須は、萬古焼の窯元〈南景製陶園〉と磁器作家イイホシユミコさんのコラボ作品。対して三煎に使うのは、今トレンドだという平型急須だ。これが、茶葉がよく広がる形なのだそう。食事を提供するオリジナルの器は、笠間で活動する陶芸家、菊地亨さんによるものだ。
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いつまでも過ごしていたくなる居心地の良さも魅力。「気取らず、お茶にまつわる食べることを発信していけたらと思っています」(福田さん)。夜には卵焼きや生姜焼きなどのおつまみとともに、オリジナルティーカクテルなどアルコールも提供している。
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〈SAKUU 茶空〉
■東京都渋谷区神南1-2-5
■03-6434-9675
■11:30〜21:30LO(日〜19:00)
■無休
■16席(テラス席あり)
■禁煙
photo:Norio Kidera text:Kahoko Nishimura