「かき氷は日本料理」 季節の果実を楽しめる。神奈川・藤沢の名かき氷専門店〈埜庵〉、人気の秘密をとことん知りたい!vol.1
かき氷に一家言ある人たちに好きな店を尋ねると、必ずその名が挙がるのが、創業16年目のかき氷専門店〈埜庵〉。2回にわたって、その魅力に迫ります。
夏の風物詩・かき氷で、四季を表現する名店。
〈埜庵〉の一年の始まりは、吐く息がまだ白い1月の第2土曜。とろりとした酒粕のシロップをかけ、頂に角切りイチゴをちょこんとのせた、おめでたい紅白の「白酒」で迎える。
そして、「りんご」「さくら氷」「ゆず」と続き、6月1日〝氷の日〞を特別な氷でお祝いしたら、いよいよ夏支度。
柑橘を経て、暑い盛りは、定番に「生めろん」や「マンゴー」が加わり、黒板がにぎわう。
本来は夏のスイーツなのに、こんなふうに季節の移ろいを感じさせてくれるのが、かき氷好きが足繁く通う理由のひとつ。
「かき氷は日本料理」。店主の石附浩太郎さんは、たびたび、そう口にする。四季折々の氷はもとより、少しずつ買い足したという昭和40〜50年代の器を使い分ける心遣いもまた、その表れ。なにより、「氷という素材を活かすこと」を最優先した作り方が、まさに日本料理のそれそのものなのだ。
石附さんが鎌倉に〈埜庵〉を開いたのは、かき氷といえば、まだ海の家か、甘味処の専売特許だった2003年のこと。秩父で、生まれて初めて口にした天然氷のかき氷に衝撃を受け、そのおいしさを伝えたいと思ったのがきっかけだという。
シロップの秘密。
静岡のクラウンメロンをはじめ、各地のメロンに、秋田・男鹿の白桃……。厨房には、石附さんが選び抜いたフルーツが必ずある。それは、生のフルーツを煮詰めて作った濃厚なシロップに、新鮮な果肉を加えてはじめて、〈埜庵〉のフルーツシロップは完成するから。ナチュラルな色合いも、それを物語る。
〈埜庵〉/藤沢
オーディオ機器メーカーの会社員から、かき氷店の店主になった石附浩太郎さん。今では“かき氷文化史研究家”として著作の執筆や講演もこなす。
■神奈川県藤沢市鵠沼海岸3-5-11 1・2F
■0466-33-2500
■11:00~17:00LO(氷がなくなり次第終了) 月火不定休(10~3月は不定休) ※混雑時は整理券配布
(Hanako特別編集『いつだってかき氷。』掲載/photo:Hisako Yanagihara text & edit:Yuko Saito)