“ぼくほし” “いつか、無重力の宙で”……最近、天体と結びついたドラマや映画が多いな、と思いませんか?

“ぼくほし” “いつか、無重力の宙で”……最近、天体と結びついたドラマや映画が多いな、と思いませんか?
“ぼくほし” “いつか、無重力の宙で”……最近、天体と結びついたドラマや映画が多いな、と思いませんか?
CULTURE 2025.10.16
配信サービスに地上波……ドラマや映画が見られる環境と作品数は無数に広がり続けているいま。ここでは、今日見るドラマ・映画に迷った人のために作品をガイドしていきます。今回は謎多き“天体”と結びついたドラマや映画について。

なぜか気になる“天体系”ドラマたち。

このコラムを書いていて、ドラマが終わって、次のドラマが始まるまでの間に何を書いたらいいのか、困ってしまう期間が存在する。7月からのクールは、終わってしまったが、気になるのが、昨今のドラマや映画には、「天体」について描いたものが多いということだ。

7月クールの『僕達はまだその星の校則を知らない』は、関西テレビ制作・フジテレビ系列で月曜の22時台に放送されていたオリジナルドラマだ。弁護士の白鳥健治(磯村勇斗)が、スクールロイヤーとして高校に週三日、派遣されることから始まる話。この白鳥が、コミュニケーションが苦手で、学校という場所自体にも学生時代から抵抗があったが、教師の幸田珠々(堀田真由)などとの交流の中で、次第に変わっていく。

学校では高校生たちのトラブルに見舞われ、そのたびに向き合うが、その中で天文部の顧問をすることになり、夏の合宿にも立ち会うことになる。しかし、合宿をする予定であった天文ドームが閉鎖されることになり、急遽、白鳥の家での合宿が行われることとなる。

このドラマは、高校生たちの成長を描くだけでなく、年齢的にも職業的にも大人である白鳥の成長…というと何かもっと違う言葉が必要な気もするが、変化を描いているところが良い作品であった。

7月クールには、ほかにも天体を描いた作品があった。NHKの夜ドラ『いつか、無重力の宙(そら)で』は、NHKの夜ドラ枠で放送されていたオリジナルドラマ。

高校時代に天文部に所属していた望月飛鳥(木竜麻生)は、仲間たちとともに宇宙に行こうと約束し合っていたが、現在は広告代理店に勤務し、毎日に疲弊していた。そんなとき、天文部の仲間のひとり、日比野ひかり(森田望智)が飛鳥の前に現われる。ひかりは宇宙飛行士の試験に落ちたことを飛鳥に打ち明けるが、おちこんだひかりに、飛鳥は超小型の人工衛星の打ち上げを目指そうと提案するのだった。

高校時代の二人のメンバーにも声をかけ、再び夢に向かって歩みだす姿に希望を感じる物語である。冒頭での飛鳥の広告代理店でパワハラをするわけでもセクハラをするわけでもないのに、明らかに飛鳥を削って来る上司の描写に、現時点での絶望感があって、以前からの夢を思い出し一歩、前に踏み出したくなる気持ちにいたく共感してしまった。

作品によって異なる登場人物と天体や宇宙の関係性。

ここからは、過去に放送されたドラマになるが、NHKの『宙わたる教室』は、伊与原新の小説を原作に、2024年の10月から放送されていたドラマだ。新宿にある定時制高校を舞台に、二十歳で定時制高校に通い始めた柳田岳人(小林虎之介)や、起立性調節障害を抱える名取佳純(伊東蒼)、フィリピン人の母を持ち、幼い頃に十分な教育が受けられなかった越川アンジェラ(ガウ)、七十代の長嶺省造(イッセー尾形)など、さまざまな問題を抱えた生徒たちが登場する。

教師の藤竹叶(窪田正孝)は、宇宙に関する実験に興味を持ったや柳田を誘い、科学部を設立、次々とほかの生徒を誘っていくのだった。

境遇も年齢も、なぜ定時制高校に通うことになったのかの理由もまったく違う生徒たちが、宇宙に関する科学実験にひたむきに取り込む姿が胸を熱くさせるドラマであった。

映画にも天体を扱った良作が。

映画でも、天体を扱ったものは昨今、たくさん見られる。『夜明けのすべて』は、瀬尾まいこの小説を原作に、三宅唱が2024年に映画化。

栗田科学という会社で働く“山添くん”(松村北斗)と先輩の“藤沢さん”(上白石萌音)。山添くんはパニック障害を持っており、また藤沢さんもPMSに悩まされている。

二人は元々、同僚としてそこまで仲がよかったわけではないが、ある日、山添くんが藤沢さんと同じ薬を飲んでいることに気付き、次第に距離が縮まっていく。

会社は、教育商材を扱っているため、宇宙や天体を学ぶためのキットを作っており、その啓蒙活動として学校で移動プラネタリウムの活動をしている。そのときのナレーションを二人が考えるという作業を通じて、さらに心を通じ合わせるのだが、そこに恋愛感情があるわけではないところがいい。

個人的にも、2024年に見た映画の中で最も印象に残っているし、韓国の俳優や監督などにインタビューしても、『夜明けのすべて』の評判がすこぶるいい。日本映画のイメージや評価が韓国で刷新されたのを感じた。

今年の夏に公開された『この夏の星を見る』は、辻村深月による小説を、商業映画初監督となる山元環が映画化。

舞台はコロナ禍の日本。部活動を制限されて、行き場のない気持ちを抱いていた茨城県の砂浦第三高校の二年生の溪本亜紗(桜田ひより)は、日本各地で同時に天体観測を行うスターキャッチコンテスト」の開催を試みる。亜紗の情熱とリンクするように、東京、長崎、五島の学生たちが、このコンテストに参加することになるのだった。

忘れかけていたコロナ禍の閉塞感を改めて思い出す作品だが、そんな中にも、ひたむきに天体観測に情熱を注ぐ高校生たちの姿は、大人が見ても胸にくるものがある。生徒たちのキャラクターも生き生きしているが、岡部たかしや、近藤芳正、上川周作、朝倉あきなどが演じる先生の存在も、若い学生を導く大人の在り方が見えて印象に残った。

そして今年10月10日から公開となる、映画『秒速5センチメートル』は、新海誠監督による2007年公開の劇場アニメーションを、奥山由之監督が実写化したもの。

主人公の遠野貴樹を演じるのは『夜明けのすべて』の松村北斗。1991年、小学校の頃の遠野は、同級生の篠原明里と心を通わせるようになったが、明里は引っ越して離れ離れに。交換日記を郵送しあってやりとりをしていた二人だったが、中学一年生の冬、遠野は意を決して明里の住む栃木県に電車で行くことを決意。しかし、その日はあいにくの雪で、なかなか時間通りに待ち合わせ場所につくことができないでいた。

2009年に同じ場所で再会することを誓った二人。その前年、遠野は東京でシステムエンジニアとして、明里は書店員として働いていた。

ふたりをつなぐのが、この映画でもやはり天文で、天文手帖が小道具として使われたり、後に天文に関する仕事に遠野が就いたりするところに『夜明けのすべて』を思い起こさせる部分がある。遠野に天文の仕事を勧める上司は、昔堅気なところもあるが、実は部下思いという役柄で、演じるのは岡部たかし。昨今の天文ものの映画には、松村北斗と岡部たかしが不可欠だなと思ってしまった。

このように、ここ数年の天文に関するシーンの出てくる映画やドラマには、良作が多い。なぜ天文に関する作品が増えたのかを追及するつもりはないが、宙や星がテーマのひとつになっている作品があると、ついつい期待してみてしまう自分がいる。

text_Michiyo Nishimori illustration_Natsuki Kurachi

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