【ウディ・アレン インタビュー 】「ぼくはまだ88歳。名作を撮るための時間はまだあるんだ」
ウディ・アレン監督の最新作『サン・セバスチャンへ、ようこそ』の公開が始まった。スペインのサン・セバスチャンで開催されている国際映画祭を舞台に、監督が愛する過去の名作映画へのオマージュも込めたロマンティック・コメディ。今回、映画の公開に合わせ、ウディ・アレンにオンラインでインタビュー。88歳になってもなお精力的に映画を撮り続ける監督に、映画のこと、老いのこと、映画を撮る理由など、いろいろと質問をぶつけてみました。
最新作 『サン・セバスチャンへ、ようこそ』
かつて大学で映画を教え、いまは人生初の小説の執筆に取り組んでいる熟年ニューヨーカーのモート・リフキン(ウォーレス・ショーン)が、映画業界のプレス・エージェントである妻スー(ジーナ・ガーション)に同行し、スペインのサン・セバスチャン映画祭に参加する。ところが、スーとフランス人の映画監督フィリップ(ルイ・ガレル)の浮気をモートは疑い、ストレスに苛まれ、現地の診療所に赴くはめに。そこでモートは人柄も容姿も魅力的な医師ジョー(エレナ・アナヤ)とめぐり合い、浮気癖のある芸術家の夫との結婚生活に悩む彼女への恋心を抱く。サン・セバスチャンを訪れて以来、なぜか昼も夜も摩訶不思議なモノクロームの夢を見るようになったモートは、いつしか自らの「人生の意味」を探し求め、映画と現実の狭間を迷走していくのだった……。(1月19日より新宿ピカデリー他全国公開)
――『それでも恋するバルセロナ』(2008年)以来、再びスペインが舞台になっています。個人的にはスペインの解放性と監督のシニシズムの相性が良いと思いますが、なぜスペインだったんでしょう?
――ちなみに、昨年(2023年)に公開された『Coup de chance(クードシャンス)』(日本での公開は未定)はフランスのパリが舞台で、全編フランス語で撮影していますよね。こちらは『ミッドナイト・イン・パリ』(2011年)以来でしょうか。
――映画に登場する新進気鋭の映画監督・フィリップがどこまでも嫌味なやつでクギ付けでした。傲慢さや曇りのない自己肯定感は、若さゆえの悪いところであり、良いところだと思います。監督も若くして世に出て成功しましたが、いま振り返ってみて、ご自身は若いころ、どんな人間だったと思いますか?
――主人公のモートは劇中「人生の意味とは何か」と何度も自問します。私は、以前取材した禅寺の僧侶が、「人生に意味はない」と悟った、と言っていたのが印象に残っています。彼は「人生の意味は何か」を探究するために修行を重ね、結果、「意味なんてない」ことがわかったと。監督は、「人生の意味」についてはどう感じていますか?
――SNS時代はモートのような教養や経験より、ビジュアルが優先しているように思います。そして、若く、美しいものの価値がより優先され、歳をとることに恐怖を感じ、アンチエイジングに必死な人が増えています。監督は「歳をとること」についてどう捉えていますか?
――じゃあ、誰もが老いていく中、変わるもの、変わらないものはありますか?
――ところで、モートはモノクロで夢を見ますが、監督の夢の色はカラーですか? モノクロですか? 監督も映画的な夢を見たりするのですか?
――フランソワ・トリュフォーの『突然炎のごとく』(1962年)、クロード・ルルーシュの『男と女』(1966年)、ジャン=リュック・ゴダールの『勝手にしやがれ』(1960年)、イングマール・ベルイマンの『野いちご』(1957年)など、今回の映画では、監督が愛する9つの名作映画にオマージュが捧げられています。もし、死神に「死ぬ前に1本だけ過去の映画を観られます」と言われたら、どの映画をチョイスしますか?
――監督の作品でもいいですし、好きな名作映画でも。私は監督の『アニー・ホール』(1977年)は20世紀を代表する名作映画の1本だと思っています。今回の映画でも想起させるシーンがありました。
――つまり、監督は、モートと同じように、マスターピースはまだ作っていない、と?
――監督は、「映画を撮らなければ死んでしまう」とたびたびおっしゃっていますが、監督にとって映画とは何ですか?