今年のドラマどうだった?2023年のマイベスト・ドラマ。
オラリー (片想い) 選
ドラマや本、美容からアート、さまざまなカルチャーで心ときめくトピックがあった2023年。2023年のマイベストを各分野に精通するみなさんに聞きました。
毎クール10作ほどのドラマをチェックし、朝ドラや配信作品にも目がない、バンド・片想いのボーカル・オラリーさん。そんなドラマフリークのオラリーさん曰く、「今年のドラマは、毎シーズンひとつは必ずいい作品があった」と豊作だった様子。そんな2023年のオラリーさんの「今年のベストドラマ」3作品とは?
【1】『日曜の夜ぐらいは…』
物語は、うだつの上がらない生活をしていた3人の女性がバスツアーをきっかけに出会い友情を深めていくというもの。脚本を担当された岡田惠和さんがすごく好きで、その時点で「絶対見るぞ!」と決めていたドラマです。光が当たらないような市井の人々を描いたドラマが好きなので、『日曜の夜ぐらいは…』は、私にすごくフィットしたんですよね。
あるラジオ番組をたまたま聞いていた人たちがものすごく仲良くなるっていう、あまり現実味のないストーリー展開もありつつ、キャストの方たちの演技力や脚本の理解力によって、「普通は起こらないかもしれないけれど、そうであってほしい」と思わされるのが、とっても魅力的。俳優さんたちの演技力に唸らされました。
ドラマ後半で岡山天音さん演じる「みねくん」が「みんなを傷つける人はちょっと許せない」「まずは目の前の自分の好きな人たちを幸せにしたい、心が広くなくてすいません」みたいなセリフを言うシーンがあって、そこにすごくグッときたんですよね。
私もつらいニュースや遠くの海外の話を聞いて考えても、やっぱりなかなか自分ではどうすることもできないし、まずは自分の子どもがお腹をすかせているとか、具合が悪くて苦しんでいる、家族が困っているみたいなことに直面する。みねくんのセリフからは、「まずは目の前の家族という小さな世界で安心して暮らせるようにしよう」という私が普段思っていることと近い感触を得て、共感しました。
【2】『初恋、ざらり』
軽度知的障害と自閉症を持つ女性と、同じ職場で働く心優しい先輩との出会いを描くラブストーリーで、風間俊介さんと小野花梨さんのW主演。小野さん演じる上戸有紗は軽度知的障害があるのですが、原作の漫画で描かれていた細かな雰囲気がちゃんと映像化されていたのがすごく良かったです!
『日曜の夜ぐらいは…』と同じで、市井の人々の生活を描きながら、いろんな人の目線を感じられるところがすごく好きでした。有紗は軽度知的障害を持っているけれど、有紗くらいの失敗や生きづらさって自分もあるなって思うんです。もちろん当事者じゃないとわからないこともあると思うし、理解されづらい部分もあると思うけれど、苦手か苦手じゃないかぐらいのもので、障害者手帳があるから特異な目で見られるっていうのはちょっと違うんじゃないかと思うこともあって。ただ、同じ職場の人や恋人の岡村龍二(演:風間俊平)の立場からすると、いろいろと気を遣うこともあるよな……とか、有紗のお母さんを見て、自分だったらどうしたかな……とか、全員に感情移入しながら、全員を愛せるドラマでした。
【3】『こっち向いてよ向井くん』
10年間恋が実らない赤楚衛二さん演じる主人公・向井くんの自分探しストーリーです。地上波ドラマのおもしろさのひとつは、時代の流れに沿ったテーマが多いことだと思っていて。『こっち向いてよ向井くん』は、最初、「顔はいいけど不器用な男の子が魅力的な女性たちに翻弄されていく感じか〜」と思って観ていたのですが、だんだん社会問題や現代だからこそのトピックに突っ込んでいって引き込まれちゃいました。
たとえば藤原さくらさん演じる向井くんの妹が、女性として結婚やキャリアなど女性ばかりが何となく損しているような日本の性質にずっと疑問を持ちつつも、夫が他の女の人にちょっと色仕掛けされるとやっぱりムカついちゃう、妻っていう権利を行使したくなる、っていうのも、すごくよくわかる。その狭間で揺れている感じがすごくリアル。
このドラマでは、そういう答えが出ないようなこと、「それぞれの意見を尊重するにはどうしたらいいのか」みたいなことがテーマになっていて。登場人物たちの、答えは出ないんだけど考えることはやめないという姿勢がすごく好きなんですよね。向井くん、すごく不器用だし、人によってはめちゃくちゃ嫌いだと思うけど(笑)、私は結構好き。向井くんが友達だったら一緒にいっぱい話したり考えたりしたいなって思いました。