エンドロールはきらめいて
-えいがをつくるひと-Profession #4 映画美術 中村哲太郎
エンドロールの暗闇できらめく、映画と生きるプロフェッショナルにインタビュー。
第4回目のゲストは映画美術の中村哲太郎さんです。
人物が生きてきた時間を想像させる美術を。
映画美術は、監督や作品のイメージを具体化する仕事です。例えば主人公の部屋を作る場合は、どこに家の鍵を置くんだろう、冷蔵庫の中はどんな感じだろうと、その人の暮らしぶりを心の中で演じながら置くものや配置などのプランを練っていきます。装飾部さん、大道具さん、小道具さんなどに用意してほしいものを指示するのも、この仕事の役割です。
自分はいつも、登場人物が生きてきた時間を想像できるような、説得力のある美術を目指したいと考えています。役者さんは毎回イチから誰かの役を演じていますが、同時に画面には体の皺など、役者さん自身が積み重ねてきたものも映り込んでいるじゃないですか。そういう状態に対して、美術から「作りもの」感が出てしまったら、やっぱり悔しくて。美術でも、その空間の歴史や皺のようなものまでを映し出せたらと願っています。
難しいと思うのは、自分と遠い存在の暮らしを再現する時でしょうか。例えばご老人の家なんかは、紋切り型の美術にならないよう気をつけています。みんながみんな、畳にコタツ……な部屋を選ぶわけではないと思うので。人に聞いたり本を読んだりもしながら、その人の過ごした時間をとにかく想像していますね。
映画美術は、生きて見てきたものがそのまま反映される仕事だと思うんです。例えば今自分は子育てをしているのですが、そのことによって子供のいる家への解像度がグッと上がった感覚があります。それがまた仕事に活きる時がくるはずで。だからもしも今、映画美術に憧れながらもほかの仕事をしているという人がいたら、その経験はきっと活かせるはずだと伝えたいです。年齢制限はありません。