エンドロールはきらめいて
-えいがをつくるひと-Profession #3 撮影 飯岡幸子
CULTURE 2023.07.18
エンドロールの暗闇できらめく、映画と生きるプロフェッショナルにインタビュー。
第3回目のゲストは撮影の飯岡幸子さんです。
「私なりの撮影をしよう」とは考えない。
自ら映画を観始めたのは大学時代。『トレインスポッティング』やウォン・カーウァイの『天使の涙』なんかが流行っていた時で、毎週末、映画と芝居を観るために地方から東京へ高速バスで通っていました。帰りはいつも終バスで。
東京藝大の大学院に進学しようと決めた時「撮影・照明コース」を選んだのは、色々な監督と仕事ができるのが魅力的だったから。監督コースに進む道もありましたが、私は自分の作品で、ほかの人にカメラを回してもらうことが想像できなかったんです。でも、その逆なら全然できるな~、と。
自分の場合、撮影の仕事をする時に「どういう画(え)を撮りたいか」を先に平面で想像することはほとんどありません。「美しい画を撮りたい」という欲もあまりなくて。あくまで現場という空間の中で、カメラを置く位置を考えていきます。場所の広さや光の向き、人の位置などの条件や物語の流れを考えていけば、然るべき場所というのが必ずあるはずなんです。すでにあるその場所を探し出すのが撮影の仕事だという感覚ですね。
もちろん、多くのお客さんは「このシーンをどの方向から撮っている」などと気にかけないと思います。でも、そういう積み重ねの上でしか伝えられないものも絶対にあって。
そうやってワンカットずつ撮影してきた映像を通して観ると、「私の撮影」みたいなものが浮かびあがるかもしれませんが、最初から「私なりの撮影をしよう」と考えることはありません。撮った素材がどう使われるかも、あまり気にならなくて。いかに現場で精度を高められるか、キワキワのところで撮影している瞬間が一番面白いです。