悪しき習慣も全部のせた、前代未聞の大相撲活劇。/第15回 ヒコロヒーのナイトキャップエンタメ

CULTURE 2023.07.31

疲れた心と体に染み込む、ナイトキャップ(寝酒)代わりのエンタメをヒコロヒーが紹介。第15回は、Netflixオリジナルドラマ『サンクチュアリ -聖域-』。

『サンクチュアリ -聖域-』

15_ヒコロヒー.003 ナイトキャップエンタメ サンクチュアリ -聖域-

正直、これまでの人生で国技である相撲に興味を持ってこなかったことを後悔した。こんなにも面白いとは。本作は、北九州育ちの不良が一攫千金を狙って力士になるというあらすじ。スポ根モノの定石を、まさか相撲でやるとは。まず、力士たちの体つきがすごい。一ノ瀬ワタルさん演じる型破りな主人公・猿桜をはじめ、力士を演じる俳優たちが本物にしか見えないのだ。キャストは撮影のかなり前から肉体づくりに挑まれていたようで、そのダイナミックな取組はフィクションながら見応えが十分にあった。そして演者全員がクレイジーなところも注目。ピエール瀧さん、岸谷五朗さん、松尾スズキさん……と、激渋の曲者俳優陣が勢ぞろいしているのだ。私が名作だと思う条件の一つに「悪役が魅力的」があるのだが、本作もまさにそれ。品行方正、清廉潔白な登場人物よりも、悪者たちが存分に輝いていた。
また、古い風習やしごき、星の貸し借りなど、旧態依然とした角界の裏の顔もはっきりと描かれている。それに反抗しようとする新聞記者・国嶋(忽那汐里さん)の気の強さも大好きなのだが、その国嶋が次第に相撲に魅了されていく心境の変化も私はわかるような気がした。異常な側面があるからこそ、土俵は聖域として存在し続けているのだろう。いつか私も、両国国技館で実際に大相撲を観戦してみたい。その時はもちろん、砂かぶり席で。

text:Daisuke Watanuki

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