花井悠希の朝パン日誌 vol.57 クロワッサンさえあればいい!仙台&大分にある名門ベーカリーの絶品クロワッサン。…〈kazunori ikeda individual〉と〈クロワッサンとコーヒーの店〉
クロワッサン好きな人手挙げてーーー?はいはい、沢山いらっしゃいますね(心の瞳で見ています)。パン屋さんに行くと必ず買うパンはクロワッサン!という方も多いのではないでしょうか。今回はパンの中でもそんな花形なパンともいえるクロワッサンにクローズアップ!しかも今回は仙台の有名パティスリーからと、大分県由布院にある、店名からしてクロワッサンに真っ向から挑むお店からお届けします(また都内じゃなくてすみません)。北と南、1,470キロも離れた2店ですが、どちらもクロワッサンにかける情熱を感じられてワクワクしてしまいましたよ。そんなお店のクロワッサン、気になりませんか?
パティスリーのクロワッサン…〈kazunori ikeda individual〉
「バターの余韻がいつまでも続き、ノーマルのクロワッサンがもはや味を感じられなくなります。」
ケーキもクッキーも美しく美味しい仙台を代表するパティスリーさんのショーケースの上に並んでいたのはクロワッサンとこの説明書き。ぶるるんと身震いするほど潔い主張と、ケーキにも負けないくらいの美しさと品を放つクロワッサンを見て、確信を得ました。この子はきっと裏切らないと(何があった?)。こちら基本はケーキ屋さんなのでパンはクロワッサンくらいしかありません。だからこそクロワッサンにかける情熱を感じて胸が高鳴ってしまいました。ちゃんと美味しくカフェオレを入れて、頂きます。
フランスのイズニーバターを用い焼き上げられたクロワッサン。もはやこれはバターでしょう(おい)。どこを切り取ってもバター、有り余るほどバター、ほとばしるバター、誰がなんと言おうとバター(しつこいわ)。バタークッキーをしっとりと焼きあげたかのようにバターの旨味を知らしめます。表面はサクサクと弾み、シロップが塗られているからか甘さがキラリ。このサクサクはあくまでもオモテの顔というか、サクサクの表情にも隠せないほどバターの油分が満ちています。
表面から空洞を挟んで内側は、待ってましたとばかりに風味も味わいも食感もさらに訴えかけてきます。バターは焼かれる前は液体だったよ?と言わんばかりにバターでしっとりしていて、そのしっとり加減はカン◯リーマアムの内側のよう。食べ始めた唇がテカテカとグロスを塗ったみたいに艶が出ているのが何よりの証です。バターを感じようなんてこちらからしなくてもバター自体のコクと味わいの主張がしっかりしていて、もはやこの子はクロワッサンと言う名のもとに生まれたバターなんじゃないかと(何言ってんだ)。
サクサクした食感で軽やかでいて一枚一枚がバターの重みでずっしりなクロワッサン。確かにこんなにしっかりしたクロワッサンの味わいを知ったら、シンプルなクロワッサンは、クロワッサンじゃないわーい!ってなりかねません。知ったら最後ってこのことかも。
君の名は?…〈クロワッサンとコーヒーの店〉
由布院の観光名所の一つである金鱗湖。その辺りでお茶でも飲もうかしらと歩いていたら出会ったお店。おしゃれな店構えにコーヒースタンドかな?と近づいてみたら、ショーケースに鎮座していたのはクロワッサンではありませんか!看板をよく読むと〈クロワッサンとコーヒーのお店〉。あまりにど直球な店名に、意気込みを感じずにいられません。ノーリサーチでたまたま出会えたなんてさ、運命だよね(知らんがな)。
わしゃーと口内にうずめたい!口内いっぱいにわっしゃーとこの子を詰め込みたい!!一口食べてこんな風に思ってしまったのは何ですか?病ですか?いや、全てはきっとこのサクサクサクサクのせい。この爽快なサクサク感は、パリパリとも違ってさらさらと繊細な波形となって崩れていきます。層の幾重にもなる重なり、その一枚一枚の層が規律正しく等間隔で整列されているような厚みと重なり方をしています。
かといっていつまでも口内でそのサクサクの存在感をくっきり浮き上がらせているわけではなくて、サクサクからシャラリシャラリと細かくなって、最後にはふわんとした柔らかさに包まれる。だからその変化を口内のすべての壁で接して感じたくて、お口いっぱい頬張りたくなるんです。満ちるバターの脂質なコクと甘みが頃合いを見て広がって、今わたしは美味しいものを食べているんだという幸福感をあたえてくれますよ。
その生地で作るパンオショコラ。生地の面白さに神経が持っていかれそうになるところを濃い濃いチョコレートが、俺を見ろと言わんばかりにグイッとわたしの顔をそちらへ向けてきます。その少女漫画に出てくる男子のような強引さにキュン(擬人化しがち笑)。
クロワッサン生地の甘みとバランスを取るようにしっかり苦味があるチョコレートが溶けると口内はチョコレート一色。カカオのまろやかな苦味とコクにうっとりと酔いしれること間違いなしです。隙を見てサクサクと甘みとともにクロワッサン生地が顔を出せば、もうそれで十分。私もあなたも彼のトリコです。
みんな大好きなクロワッサンだからこそ、クロワッサンで堂々と勝負する二店より取り上げてみました。どちらもオンリーワンな個性を放つクロワッサン。なかなかすぐに行けない場所かもしれませんが、お近くに行かれる際にはぜひ体験してみてくださいね。