【SDGs A to Z: S (Sake) 】環境や社会とつながる酒造り。
瓶に入っているとあまり意識されないけれど、すべてのお酒は農作物から生まれるもの。原材料の調達や生産にサステナブルな視点をとりこむことで、あらたなお酒の可能性が広がっている。
【焼酎】大地の恵みを自然に還す、循環のなかで焼酎を造る。黒木本店
「焼酎は原材料の香りの個性を強く残した大地の香水のようなお酒です。自然環境そのものが香りや味わいに影響をもたらします」
そう語るのは、〈黒木本店〉5代目の黒木信作さん。農業から焼酎造りを行い、さらに製造過程で生じる廃棄物を有機肥料として自然に戻す自然循環農法を実践している。天候や病気の影響を受ける側面がある一方、ものづくりを一貫して行える強みを活かして、有機栽培や新品種の栽培にも積極的。大地を敬う姿勢は製品の力強く美しい焼酎の香りに表れている。
【クラフトジン】循環経済の実現を目指す、 新時代のジンの蒸留所。エシカル・スピリッツ
カカオ豆の外皮や、廃棄予定のビールに酒粕。これまでのジンの常識ではなし得なかった個性的で多様なベーススピリッツとボタニカルでジンを造り出しているのが、〈エシカル・スピリッツ〉だ。コンセプトは「Starring the hidden gem(隠れた才能をステージへ)」。「世の中には、まだまだ多くのhidden gemがあります。ふと口にしたおいしいものがエシカルな素材なものであるという、新しい当たり前をつくっていきます」と〈エシカル・スピリッツ〉代表取締役の山本祐也さん。
【日本酒】原料の米作りから酒造りまで一貫して行う22の酒蔵。農!と言える酒蔵の会
搾りかすは酒粕に、米の削りかすは煎餅に、発酵樽は漬物樽に。長い歴史がある酒造りは循環のなかに存在してきた業界。そこにあらたな流れが生まれている。「高齢化や過疎化で耕作放棄地となった農地を蔵が引き受ける動きもあります。農業と醸造が分離することもあるなかで、地域農業や自社で米を作っている酒蔵同士で連携して、活動していこうというのがこの会です」と関谷醸造蔵元で会の代表理事の関谷健さん。一杯のお酒は、地域や日本の里山風景を守ることにもつながっている。