ゆるキャラ「やっさだるマン」も登場! 広島県三原市で瀬戸内のめぐみとアートを満喫する週末旅。【後編】
広島県三原市は歴史が息づく城下町です。万葉集のころから酒どころとして知られ、室町時代から続くお祭りでは近隣の自治体からもたくさんの人が集います。一方で、瀬戸内の海で育ったおいしいタコのブランド化にも熱心。歴史ファンならずとも、みどころたっぷりの三原市での週末旅レポート後編です。前編はこちらから。
全国でもここだけ! 新幹線のホームと直結している城跡、三原城。
宿泊した〈宿NAVELの学校〉を後にして、再び客船に乗って三原市街に戻った2日目は、三原城跡から城下町を巡ります。驚いたのは三原城の跡がJR三原駅に直結しているということです。三原城の天守跡には駅の構内にある階段から上がります。
三原城は16世紀中頃に、毛利元就の三男で知将として知られた小早川隆景によって築かれました。満潮時には城が海に浮かぶように見えたことから三原城は別名「浮城」とも呼ばれたといいます。
しかし明治時代に物資を運ぶため鉄道を通すことになったとき、山と海に挟まれて平地が狭かった三原では〈三原城〉を解体した場所に線路が敷設されることに。そのため現在に至るまで城跡内にJRの駅があるという、全国でもここだけの珍しい場所です。
駅周辺を歩くと要塞として築かれた三原城の名残があちこちにあります。線路が通る高架下に立派な石垣もありました。
天守台の周りにはお堀が残されていて、約200匹の鯉が泳いでいます。このうち4匹は頭部にハートの模様がついているという縁起のいい鯉。4匹とも見つけるとハッピーなことが起こるといわれているそうですよ!
願いが成る? 「三原だるま」の面相書き体験で自分だけのだるまをお持ち帰り!
三原市でタコと並んで地元の人たちに親しまれているのが縁起物の「三原だるま」です。三原のだるまには「願いが成るように」と内部に小石や豆が入っていて、振るとかわいい音がなるのも特徴です。
ちょうど開催されていた三原市の4大祭りのひとつ、「神明市」では「だるま市」も開催されます。見ものは、高さ3.5メートル、重さ500キログラムという日本一の大きさのだるま! 現在使われている大だるまは4代目だそうです。
毎年約500軒もの出店が並び、3万人の人出で賑わう「神明市」は室町時代が起源という長い歴史をもつお祭りです。三原の人たちは「神明市」で買った家族の人数分のだるまを神棚に飾って、家族の安全と繁栄を願ったそうです。
三原市東町にある極楽寺の境内には〈青山コレクション達磨記念堂〉という7000体ものだるまを収蔵した私設博物館があります。
〈青山コレクション達磨記念堂〉には全国各地で民芸品として作られたり、企業や商品のキャラクターとして活躍したりした様々なだるまが所せましと展示されています。
三原駅の傍にある三原観光協会の〈三原だるま工房〉では、だるまの面相書きが気軽に体験できます。
面相書きをするのは玉子よりひと回り大きいぐらいの小ぶりのだるまです。用意された絵具と筆や竹串を使って思い思いの顔を描きます。
面相書きをするのは玉子よりひと回り大きいぐらいの小ぶりのだるまです。用意された絵具と筆や竹串を使って思い思いの顔を描きます。
描いただるまは、数分間乾かしてから持って帰ることができます。個性的な表情のいいダルマがたくさんできました。
「神明市」
■毎年2月の第2日曜を含む金土日の3日間
〈青山コレクション達磨記念堂〉
■広島県三原市東町3-5-1 極楽寺内
■0848-62-2985
※見学は要予約
〈三原だるま工房〉
■広島県三原市城町1-1-1
■0848-63-1481
■だるま面相書き体験 600円
瀬戸内の早い海流が育てたおいしいブランドタコ「三原やっさタコ」。
三原の海は波が少なく穏やかなようで海流がとても早く、その海流の中で流されないようにと生息するタコは足が太くて短いのが特徴。蛸壷を使って生け捕りにするタコ漁が行われているので、網を使った漁法よりも捕獲するときにタコにストレスがかからないことも、おいしさの秘密だそう。
このおいしい三原のタコは「三原やっさタコ」としてブランド化されています。特別に三原市漁協協同組合の組合長さんが生きたタコを目の前でさばいてくださいました。生きのいい立派なタコは、包丁が入ってあとも動き廻ります。
捌いたばかりのタコは、刺身にして振る舞われました。醤油もワサビもなしでも、ほんのりと塩味があって、甘味も感じるタコのお刺身。舌の上でとろけるような食感でした。三原市漁協協同組合所属の漁師さんの船に乗り込むサービスを申し込むと、漁師さんがその場で捌いてくれたタコをいただくこともできます。
また、三原市漁協協同組合では、取れたてのタコを真空にして急速冷凍する方法で新鮮さを保つ方法を確立しています。
刺身にした状態や、調理しやすくさばかれたタコの足を真空冷凍の状態で配送もしてくれます。
タコのうまみがお米に染み込んだ「タコめし」やタコの天ぷら「タコ天」は三原を代表するグルメ。市内には新鮮なタコで作った「タコめし」や「タコ天」を提供するお店が多数あります。特に「タコ天」は、三原市を訪れたら絶対食べたい味です。
三原市漁協協同組合
■広島県三原市古浜1-11-1
■0848-62-3056
全国的に有名な日本酒「醉心」と〈八天堂〉のクリームパンも三原の名物グルメ。
三原市が属する吉備と呼ばれる地域は、万葉集にも登場する古くから日本酒の産地でもあります。軟水で造られた口当たりのいい三原のお酒は、目の前が海で輸送の便がよかったことなどから日本の各地で評判になりました。
現在三原市内に残る唯一の酒蔵、〈醉心山根本店〉が造る「醉心」は明治から昭和にかけて活躍した日本画の巨匠、横山大観に愛された酒としても有名です。
〈醉心山根本店〉内では、漆喰と瓦で作られた立派ななまこ壁を見ることができます。この壁の向こうは横山大観から送られた日本画の数々が保存されている記念館になっていますが、今は残念ながら開放されていません。
また醉心山根本店内にはイベントで鏡開きに使われる酒樽や、1970年大阪万博用に準備されたミニチュアの酒瓶、昭和時代に海外向けに作ったポスターなど貴重な資料が揃っていて、日本酒好きでなくても、ぜひ立ち寄りたい場所のひとつです。
現在も日本酒の品評会でたくさんの賞を取る味にはお墨付きの「醉心」ですが、女性には純米吟醸や新酒搾りたてといったお酒が人気とのことですよ。
〈醉心山根本店〉
■広島県三原市東町1-5-58
■0848-62-3251
※見学は要事前予約
もしかすると広島以外で三原市の名前をいちばん多く目にするのは、この「クリームパン」のパッケージではないでしょうか? 滑らかなクリームがたっぷり入った「クリームパン」が人気の〈八天堂〉は三原市のお菓子屋さんです。
〈八天堂港町創業店〉は三原港とJR三原駅の間にあります。やはり地元三原でも「クリームパン」は早く売り切れてしまうことが多いそうなので、余裕を持って訪れるのがおすすめです。
〈八天堂港町創業店〉
■広島県三原市港町1-5-20
■0848-67-1077
旅の最後に出会ったのは、三原市の公式マスコットキャラクター「やっさだるマン」。毎年8月に行われる『三原やっさ祭り』の踊りを披露してもくれました。「子どもには泣かれることもある」という「やっさだるマン」ですが、見れば見るほど愛着の湧くお顔です。「やっさだるマン」の法被に触れるといいことがあるそうなので、私も触らせてもらいました。
タコをはじめとする瀬戸内の海の幸、おいしい日本酒はもちろん、美しい自然にも恵まれた城下町、三原市。次の旅先として訪れてみてはいかがでしょうか?