唯一無二の空気。 つまみは常時1000種類以上!常連が絶えない店〈銀座ROCK FISH〉店主から学ぶ、愛される店の秘訣とは。

FOOD 2020.10.07

大銀座の街を支えるプロフェッショナルな技の数々。ここでは“賢人”をクローズアップ!今回は、様々なお客さんを惹きつける〈銀座ROCK FISH〉間口一就さんのもとを訪れました。息の長い常連客を惹きつける技に注目です。9月28日(月)発売号「大銀座で叶うこと。」よりお届け。

ハイボールの良きお供、つまみ作りの技。

キレ、爽快感、飲み応え、どれを取ってもピカイチの名物・氷なしハイボール1,150円。液体の冷たさで曇ったグラスの背景に、ずらりと本が並ぶ景色も味。/チーズが、揚げ物が…一杯をもっとおいしく
キレ、爽快感、飲み応え、どれを取ってもピカイチの名物・氷なしハイボール1,150円。液体の冷たさで曇ったグラスの背景に、ずらりと本が並ぶ景色も味。/チーズが、揚げ物が…一杯をもっとおいしく

バー〈ロックフィッシュ〉は、店主・間口一就さんの技が詰まった店だ。例えば店の名物の氷なしハイボール。希少なサントリー角瓶の復刻版を使用しているが、作り方はいたってシンプル。冷凍庫でキンキンに冷やしておいたウイスキー60mlとウィルキンソンの炭酸本をグラスに注ぎ、レモンピールの香りをまとわせるだけ。…なのだが、これがどうしたって同じようには作れない。何度チャレンジしても。爽やかな香り、シャープなのど越しとすっきりとした後味が恋しくなり、つい銀座へと足を運ぶことになるのだ。

ハイボールだけではない。酒飲み、酒場好きにはたまらない「背表紙が読み物」になる本のセレクトとディスプレイの技。酒瓶から缶詰、謎のオブジェまであらゆるものが飾られていながら、ホコリっぽさも雑然とした雰囲気もない空間作りの技。気いちげんさくだけれど毅然とした、一見も常連も分け隔てない接客の技。どれ一つとっても簡単には真似ができない要素が組み合わさることで、唯一無二の空気を醸している。

銀座ROCK FISH

もう一つ、忘れてはいけないのが、つまみ作りの技。つまみに関する著書も多い間口さんだが、店でも常時1000種を用意。缶詰をアレンジしたものから、サンドイッチ、オムレツまでバリエーションも豊富だ。間口さんのつまみがすごいのは、誰もが知っているものを、どこでも手に入る材料で作っているのに、圧倒的なオリジナリティがあること。山
椒風味の「オイルサーディン」や〝揚げない〞「スコッチ・エッグ」といった定番は、もはや発明の域。「よそと同じ味ではつまらないけれど、おいしくなければ意味がない。作って満足ではなく、お客様に食べていただいてこそのものです」と間口さん。

例えばハムカツは、提供時にかけるコチュジャンソースとマスタードが、タマゴサンドはほんのり利かせた酒粕が、ユニークかつハイボールに合う味作りの肝になっている。
銀座に店を構えて18年になるが、つまみのメニューはその頃からほとんど変わっていないのだとか。「数年ぶりにいらしたお客様が〝あれないの?〞とがっかりされるので」このおもてなしの心もまた、息の長い常連客を惹きつける技なのだ。

全メニューの中からほんの一部をご紹介!
【Appetizer】

スコッチ・エッグ
マヨネーズとケチャップで和えたコンビーフでゆで卵を包み、白ごまをまぶしたオリジナル。「日本にここしかない」との注意書きに偽りなし。1,150円。

オイルサーディン
イワシの山椒煮から着想を得て、純米酒としょう油、山椒の実で味付け。ピリ辛がハイボールに合う。京都〈竹中缶詰〉のオイルサーディンで。1,150円。

【Cheese】

小なすのピクルスとさいころチーズ
グリーンオリーブのように見えるのは、小なす。定番の辛子漬けではなく、辛子入りのピクルスにし、チーズと合わせることで洋酒に合う味に。700円。

奈良漬け3年熟成とチーズ
洋の東西を問わず相性のいい発酵食品を組み合わせた一品。奈良漬けの熟成香とチーズのコクが、口の中で溶けあう。ピリッと黒胡椒を利かせて。650円。

【Sandwich】

きゅうりとコンビーフのサンド
コンビーフの中にあらかじめマヨネーズ、ケチャップを練り込んでおくことで、味がなじむと同時に、オーダー後、スピーディーに提供が可能。1,200円。

サンドウィッチ(サーディンとトマト)
サーディンとトマトのダブルサンドは、断面もため息ものの美しさ。パンをトーストすることで、ハイボールとの相性がさらにアップする。1,700円。

【Fried】

ハムカツとポテトサラダ
コチュジャンソース&マスタードのソースがちょっぴりジャンクなイメージだが、太白胡麻油でからりと揚げた、上品な味。ポテトサラダと一緒に。750円。

ポークカツの抜き
ポークカツサンドの「パン抜き」、つまりカツのみ。「丼のアタマ(具材)」的発想の名もユニーク。香ばしい衣とジューシーな肉にハイボールが進む。800円。

間口一就さんが技と知恵を感じるお店は?

1.〈日東コーナー〉
銀座で70余年続く洋風酒場。2018年に東銀座から宝町に移転「。名物のロールキャベツはここだけの味です」
■東京都中央区銀座1-27-10 ザ・アソシエイトビル 1F
■03-3535-6567
■11:30〜23:00LO(ランチ〜14:00、ディナー17:30〜)、土13:30〜22:00 日祝休

2.〈銀座アスター本店〉
創業1926年、本格中国料理店の先駆。「年月をかけて磨かれた味は、年を重ねるごとにありがたみが増します」
■東京都中央区銀座1-8-16 GINZA ASTER BLD
■03-3563-1011
■11:30〜14:00LO、17:00〜20:00無休(年末年始を除く)

3.〈ミカド珈琲店 日本橋本店〉
日本橋で創業のコーヒーロースター直営喫茶店。「50年以上続く名物のモカソフトは、中央通りを歩きながら食べるとさらにおいしい」
■東京都中央区日本橋室町1-6-7
■03-3241-0530
■7:00(土日祝10:00)〜17:30LO 無休

〈銀座ROCK FISH〉

銀座ROCK FISH

2000年に大阪で創業し、2002年に銀座に移転。間口一就さんは、雑誌やテレビなどでも大活躍。つまみのレシピ本や『バーの主人がひっそり味わってきた 酒呑み放浪記』(秀和システム)ほか著書も多い。
■東京都中央区銀座7-3-13 ニューギンザビル1号館 7F
■03-5537-6900
■14:00〜21:30(土日祝〜18:00)不定休

(Hanako1189号掲載/photo:Kazumasa Harada text:Maki Kakimoto)

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