新幹線の駅から日本でいちばん近い島へ船で14分! 広島県三原市で瀬戸内のめぐみとアートを満喫する週末旅。【前編】
広島県の南部に位置する三原市は、瀬戸内海に面した城下町です。昔から交通の要所でもあった三原市は、羽田空港から飛行機とバスで約2時間、山陽新幹線の駅もあってアクセスは良好。城下町として栄えてきた歴史とタコをはじめとする瀬戸内海の恵み、アートなど魅力に溢れた三原市に1泊2日で伺ってきました。
三原のタコとブランド鶏を堪能! 瀬戸内海を望む絶品イタリアレストラン。
〈Trattoria di Miramare FURUOKA〉は、地元でも人気のイタリアンレストランです。特産の「三原やっさタコ」やブランド鶏「神明鶏」を使った料理がいただけます。
すべての席から瀬戸内海を望むことができる開放的な雰囲気も魅力です。ふと視線を上げると船が進む光景が見えるのもロマンチックです。
まず提供されたのが地元の野菜を使ったサラダですが、玉ねぎを使ったドレッシングがフルーティーで奥深い味。メインへの期待が膨らみます。
立派なタコの足に釘付けになってしまう「三原やっさタコのペペロンチーノ 瀬戸内レモンの香り」。ふんだんに散らされたレモンの皮のさわやかな香りが、食欲をそそる一皿です。ほんの短時間、火を通しただけという新鮮なタコは、その柔らかさにびっくり。レモンのスライスも入っているさわやかなオイルソースにも瀬戸内の恵みを感じます。
こちらは「三原やっさタコと魚介のトマトソース」。3時間も煮込まれた大ぶりの「三原やっさタコ」が殻付きのエビ、プリプリのタラ、ムール貝といった海の幸や、さらりと上品なトマトソースと組み合わせられていて豪華! タコはナイフで軽く切れるほど柔らかで、パスタに入っていたタコとは異なる食感が楽しめます。
最後にいただいたのは、三原市のブランド鶏「神明鶏」を使った「神明鶏のポルチーニクリーム煮込み」です。骨付きもも肉がまるごと1本贅沢に使われています。一度コンフィにしてから煮込んだという鶏肉はジューシーで骨離れもよく、ボリュームがあることを忘れてあっという間に食べてしまいました。ポルチーニ茸の香りが高くクリーミーなソースとも相性ぴったりです。
お料理に合わせていただいたワインは、〈瀬戸内醸造所〉による「ACE (No.1)2018」です。三原で栽培されたブドウ、ニューベリーA100%で造られています。イチゴジャムを溶かしたような色とは裏腹に、スッキリと辛口のワインは、地元・瀬戸内の魚介類との相性を意識しているとのこと。瓶内発酵による微発泡性や10%ほどと低めのアルコール分も特徴となっていて飲みやすいワインです。
〈瀬戸内醸造所〉のワインは、ぶどうを石川県輪島市のワイナリーに運んで醸造されていますが、近年中に〈Trattoria di Miramare FURUOKA〉から程近い造船所跡地に独自のワイナリーを作る予定。今後は三原の食材と相性がますますいいワインに育っていきそうです。
〈Trattoria di Miramare FURUOKA〉
■広島県三原市須波町1-21-15
■0848-67-6777
〈陶工房 PolePole〉の陶芸体験で自分だけのお土産を。
続いて訪れたのは赤いドアがセンスを感じさせる〈陶工房 PolePole〉です。工房を営む陶芸家、安田あすかさんの作品が買えるだけでなく、事前に予約すると2時間程度で陶芸体験ができます。
陶芸体験は2種類の土と釉薬の組み合わせを、サンプルを見ながら選ぶところから始まります。黒い土と白い土、どちらを選ぶかによって、同じ釉薬を使っても焼き上がりの色は変わると聞くとワクワクせずにはいられません。
早速、作業開始! 選んだ土を麺棒で丸く伸ばして形作っていきます。厚みが均一になるように、ガイドとなる棒状の板を両端に置いて、麺棒を土の上で転がしますが、なかなか上手に丸くなりません。
土を丸く伸ばしたら、縁を少しずつ立ちあげてお皿の形状にしていきます。
工房で準備されているスタンプやクッキー型などで自由に模様を付けるところまでを体験で行います。
〈陶工房 PolePole〉
■広島県三原市須波西1-5-25
■0848-51-7864
■10:00~16:00
■日月休
■陶芸体験 大人1人2,500円、子ども2,000円 要事前予約
目に焼き付けたい三原の多島美を望む竜王山展望台。
瀬戸内海に大小さまざまな島が浮かぶ独特の風景は「多島美」と呼ばれます。三原駅から車で20分ほどのところにある竜王山展望台は、瀬戸内海随一の多島美が臨める場所として、観光客や地元の人にも人気の絶景スポットです。
展望台からは海の向こうにある四国山地や、天気によってはサイクリングで人気のしまなみ海道10橋のうち7橋が一望できることもあります。
竜王山展望台からは、瀬戸内海を横切る船舶の様子や、瀬戸内海の島を肉眼でも見ることができますし、山頂には無料の望遠鏡も設置されています。眼下に広がる美しい景色に、ついつい時間を忘れて長居をしてしまいそうです。展望台からは今回宿泊した島、小佐木島も見ることができました。
竜王山展望台
■広島県三原市沖浦町
14分間の船の旅でたどり着く、島民6名の小佐木島でアートと海の幸を堪能!
今回のメインイベントは小佐木島での宿泊です。小佐木島は三原駅から徒歩5分のところにある三原港から小さな客船に乗って渡ることができ、新幹線駅からいちばん近い島ともいわれています。
三原港から小佐木島まで行く船は1日4本。50人乗りの客船に乗ります。
14分という短い船の旅ですが、瀬戸内の景色を海上から眺めていると、“船の旅”特有の旅情が存分に感じられました。
小佐木島に降り立って30メートルも歩くと、古い民家を改装して作られたアートギャラリー、〈BH2〉に着きます。
〈BH2〉は「集落再生プロジェクト」として三原市の隣にある尾道市在住の現代美術家、柳幸典さんと広島大学准教授の八木健太郎さんによって設計されました。
小さな施設の中には、世界的に活躍する日本画家、千住博さんの作品が展示されています。
〈BH2〉内では、かつて地域でよく見られた床下の貯蔵庫部分も活用。
貯蔵庫部分は上部の和室からガラス越しに見えるようになっていて、中には島の模型が設置されています。
〈BH2〉は、2020年9月12日から11月15日まで三原市、尾道市、福山市の広い地域で開催される『ひろしまトリエンナーレ2020 in BINGO』の会場のひとつにもなる予定です。
〈BH2〉
■広島県三原市鷺浦町須波2796
島に唯一ある宿、築90年のゲストハウスで堪能する島の味。
宿泊したのは2018年6月にオープンしたゲストハウス〈宿NAVELの学校〉です。現在北海道札幌市で活躍し、幼少期を三原市で過ごした建築家、鈴木敏司さんが築90年の古民家をリノベーションして開いた宿です。
私が利用したのは母屋から畑の間を通って3分ほど歩いた戸建てタイプのはなれです。入り口が縁側になっていて、なんとも趣があります。
はなれの室内はメゾネットになっていて、天井が高くリビングも広々としています。
ロフトのような寝室は、古い梁がポイント。古いクギもそのまま活用されています。
こちらは母屋のお部屋です。4部屋すべて、すだちやゆずなど柑橘類の名前がついています。
〈宿NAVELの学校〉はゲストハウスながら夕食と朝食がついていて、母屋に隣接する〈おばあちゃん食堂〉で食事ができます。島で獲れた魚や島民の皆さんが育てた野菜を使った料理が中心です。特に夕飯は釣り名人でもある宿の方が、目の前の海で釣った新鮮な魚の幸が並びます。
まずお頭つきでいただいたのが、西日本ではアコウと呼ばれる高級魚、キジハタの煮付け。
ドーンと登場したのはスズキ、コブダイの昆布締め、アコウ(キジハタ)のお刺身。1枚1枚が厚く切られていて、どれも食感がプリプリです。
お刺身はなんと、もうひと皿。マダコとアオリイカのお刺身もひと目見ただけで新鮮とわかる透明感があります。
島で取れたサザエの甘露煮や、三原の地野菜の煮物といった小鉢料理も丁寧に作られています。
特別なお料理として出していただいたのはタイの酒蒸しです。わふわに蒸された立派なタイからは昆布とお酒のいい香りがします。島で取れた柑橘のダイダイで作られたポン酢でいただきました。
そしてサヨリと島で取れたサツマイモの揚げたての天ぷらもいただきました。サヨリの天ぷらは脂がのっていてふんわりと柔らかな食感!
最後にはタコめしと魚のアラで作ったお吸い物までいただきました。三原名物のタコを使ったタコ飯は、出汁をたっぷり吸ったお米と柔らかいタコの組み合わせで、何杯でも食べられそうな味でした。
〈おばあちゃん食堂〉のメニューの一部は、宿の方の釣果次第。今回は特に大漁だったとのことで、海の幸をたっぷり堪能できしました。
翌朝はサヨリの干物をメインに、島でとれた野菜をたっぷり使ったヘルシーな朝ごはん。島で取れた柑橘を使った酢の物も、島の区長さんのお手製という漬物も、絶妙なお味でした。
〈宿NAVELの学校〉
■広島県三原市鷺浦町須波2782
■0848-87-5130
■1人1泊 10,800円〜
小佐木島はわずか6名の島民が暮らす、夜は街灯もない静かな場所です。新幹線を降りてから最短20分で到着する小さな島で、島ならではの時間を過ごす週末はいかがでしょうか?
三原市で過ごす週末旅の後編はこちらから。
三原観光協会
■三原市役所観光課
■0848-67-6014
■公式サイト