世田谷生まれ松代育ちのマーマレードが地域をつなぐ、とよこさんと出かけたまつだいへの旅|モデル asacoの4回目の育児 – fourth time around
夫婦ふたりで、新潟県十日町市の”まつだい”という町に出かけました。
きっかけは前回のコラムでご紹介した地域の畑「タマリバタケ」で知り合ったとよこさん。彼女が世田谷の夏みかんを使ってマーマレードを作っているのは話に聞いていたのですが、その製造を毎冬この時期にまつだいで行っていると知って、急遽その現場を見に行くことにしたのです。
ちょうどわたしと夫で手がけるフード業マフィオが「語る、台所」をテーマに掲げて【katarite】(語り手)という名前に一新したタイミングでもあって、きっとなにかある! と呼ばれるように現地へと向かいました。
とよこさんと世田谷で待ち合わせをして、一緒に電車に揺られて3時間ほど。お昼ごろに雪深いまつだいに到着しました。
出迎えてくれたはじめましての阿久澤さん、東京から先に現地入りしていた星くんとちひろちゃんと合流して、まずはオススメの「まつだい里山食堂」でみんなでお昼ごはんをいただくことに。
大きな窓から見える雪景色がとっても美しくて、そのうえどこかノスタルジックな雰囲気が漂っていて、この感覚ってなんだろう……と思っていたら、なるほど。
食事を終えて建物の外に出て気づきました。2012年開催の大地の芸術祭で一度来たことがあったんです(笑)。
芸術祭=十日町のイメージだったから、まさか自分たちが”まつだい”に来ているとは思わず……。とは言え、時を経てこんな形で再訪するだなんて、巡り合わせっておもしろいものです。
さて、それから今回滞在する宿へ。「どぶろく製造所」というパンチのあるネーミングに、お酒大好きなわたしと夫はテンションがめちゃ上がったのですが、滞在中は製造自体はお休みしていて心底ガッカリ(笑)。
でも、お客さんが集うお部屋には囲炉裏もあって、THE雪国の日常を味わうことになりました。
そのあと、とよこさんオススメのカールベンクスさんカールベンクスさんが手がける「澁い-shibui」というカフェへ。
建築デザイナーの彼は、古民家を再生して日本の古き良きを伝えている方です。古い=価値がないのではなく古いものにこそ歴史や思いが詰まっている。使い捨て・大量消費に疑問を呈しつつ、そんな想いが「澁い」に詰め込まれています。
ラッキーにもご本人にお会いできて実際に建物内の案内もしていただいて(リノベーションして現れた天井の梁が本当にすばらしかった!)彼のメッセージを直で受け取ることができました。
さて、マーマレードの現場を見る前にまだまだつづきます。早めにお風呂を済ませて向かったのは、まつだい駅でお出迎えしてくれた阿久澤さん手がける「トロノキハウス」。
こちらもベンクスさんが手がけた古民家を再生した建物で、阿久澤さんのご自宅でもあり、まつだいにやって来る人たちの滞在場所でもあります。
もともとは東京の外資系有名ホテルでバリバリ働いていた彼ですが、棚田(山の斜面などの傾斜地に、階段状につくられている田んぼ)に魅せられてまつだいに移住をして、トロノキハウスを拠点に町を盛り上げるさまざまなプロジェクトに関わっているのだそうです。
そして、お風呂までむかえに来てくれたとっても気さくな男性、正力さんがトロノキハウスのお料理を担当しているのだと知って、俄然ここでの食事も気になるわけです。
今回は見学だけだったけれど、次回は絶対にこちらに滞在したいと思っています。
1日目はこのまま夕飯タイム。宿泊するどぶろく製造所にて、とよこさんが近所に住む地域おこし協力隊の若いお二人にも声をかけてくれて、みんなでごはんを食べました。
若者の高木くんのご両親がまさかの(!)わたしの地元浜松に在住とのことで、まつだいの町おこしの話題が浜松にまで及んで(謎にめちゃくちゃ盛り上がった!笑)世代を超えて地域をどう盛り上げるかワイワイ話せるしあわせを噛みしめつつ、ディープな夜を過ごしたのでした。
もちろん翌朝はしっかり二日酔いでしたけど……(笑)。
さて。2日目、とよこさんのマーマレード作りがスタートし、ついにその現場を目の当たりにすることができました。
工場のような場所を想像していたらいわゆる民家の台所で、まつだいの方がマーマレード作りに携わります。というのも、雪深いまつだい、冬はお仕事が減ってしまうそうで、とよこさんはまつだいに少しでも雇用を生みたいと言います。
マーマレードのキャッチフレーズは”世田谷生まれ松代育ち”、まさに地域と地域の架け橋のような存在なのだと実感しました。
そのあと、とよこさんが「まつだいの支所長さんに会いに行く」と言うので理由を尋ねると「世田谷のみんなに田んぼを貸してくれないか交渉するの」とのこと。
なぬーー!? 行政に依頼するって結構ハードル高くない!? と思いつつ、わたしもちゃっかりその場に同席することに。そしたら、支所長の樋口さんととよこさんはマブダチほどの仲で(さすが!笑)、今回の話し合いで地元まつだいで手付かずになっている田んぼを世田谷のみんなで再生させよう! と話が進みました。
樋口さんは「まつだいが世田谷の方々の活動場所になればいいなぁって思うんですよ」とおっしゃってくれて、年末にオープンした「松代棚田ハウス」という宿舎も見学させてもらうことに。
そしたらね、そのキッチンに見覚えのある姿が! きのうお会いした正力さん(笑)。聞けば、彼はここでもお料理を担当するのだそうです。
そして、この企画には阿久澤さんももちろん関わっていて、まつだいで個々に出会ったみんなが線でつながっていることに感激。
棚田ハウス所長の小山さんから「東京ではできない経験をここでたくさんしてほしい」と言葉をいただいて「世田谷から仲間をたくさん連れてきます!」と鼻息荒く約束をしました。
とよこさんのマーマレード作りの現場を見学するだけのつもりが、まさかこんなにも濃い2日間になるとは。
それもこれも「世田谷のお宅でそのまま地面に落ちてダメになってしまう夏みかんを見て、救済したいって思ったの」という当時30代だったとよこさんのその想いからつながったご縁。
そして、樋口さんの「まつだいは皆さんにおもてなしはしません。だって、仲間ですから」という言葉どおり、今回の滞在を通じて”お客さん”ではなく”お友だち”のスタンスにこそ地域にあたらしい風を吹かせる鍵がひそんでいると感じました。
さて、【katarite】(語り手)を名乗るわたしと夫はこれから食を通じてなにができるでしょうか。2022年、まつだいとのつながりも生まれてどんどん楽しくなる予感!
そして、だれよりもこの交流に関わらせたいのは子どもたち。日本中にお友だちがいるってこんなにもゆたかなんだよって、大人のわたしたちがちゃんと伝えていけたらいいなぁと思います。