一夜限りの“賽醸大茶会”! 新潟の発酵食と伝統文化を堪能する温泉宿〈里山十帖〉の旅。~後編~
温泉宿〈里山十帖〉のプレスツアー。後編では、雪国が誇る発酵食と保存文化を表現したオーガニック料理とイベントのクライマックス「賽の神」まつりをお送りします。自然豊かな里山で日本の古き良き伝統文化が、新たな時代を醸す文化になるよう願った一夜限りの“賽醸大茶会”、どうぞご覧ください。
夕食~早苗饗 雨水の頃~
夜のイベントに合わせて、17時と少し早めの夕食がスタート。レストラン〈早苗饗〉にて、オーガニック&デトックスのコース料理を地酒とともにペアリングしながらいただきました。
なんと、イタヤカエデの樹液で乾杯!この時期にしか採れない貴重な樹液は、〈里山十帖〉の裏山“大沢山”で採れたもの。味の方はスッと全部飲み切れるほど、ほんのりした甘さでした。
雪をイメージした「白和え」の前菜から。具材は豆腐以外に、ケール・赤かぶ・和梨を和えてあり、上に蕗の葉の天ぷらが添えてあります。敬遠していた蕗ですが、苦味がまったくなく食べやすくビックリ!
「もち米入りの葱と白菜のお吸い物」は、鶏肉で出汁を取ったスープの中に、乳酸発酵させた白菜の酸味がアクセントになっていました。葱や発酵した白菜とにおいが強めなお料理には、バターとはちみつの芳醇な香りのする白ワイン「フェルミエ シャルドネ」がペアリングに。後味も残らずスッキリ。
八寸は、上から時計まわりに雪国の春夏秋冬を2品ずつ表現しており、春は「イタドリとわらびの酢味噌和え」と「独活のきんぴら」。夏は「胡瓜、茄子、茎芋のサクレ」と「茗荷とズイキのきんぴら」。秋は「自然薯の柚餅子のせ」と「干し柿と酒粕のソース」。冬は「発酵キャベツのリエット」と「じゃがいもとパンチェッタ」です。
干し柿の下は、1年以上寝かせて自然と色が変化した酒粕。お味噌のような塩気のある味わいで、甘い干し柿と相性がぴったりで日本酒が進みます!ペアリング酒には、魚沼でしか販売していない「鶴齢 特別純米酒 越淡麗55% 無濾過生原酒」のクセのない口当たりの良い日本酒とともに。
赤ワインと相性がピッタリだった「白菜ときのこのオーブン焼き」は、雪室で寝かせた甘みのある白菜を丸ごとオーブンで焼き、焦げ目をつけています。舞茸や椎茸を上にのせ、最後に醤油ベースのブラウンバターソースをかけた洋風な一品。香りがよく、食欲も増進!
身がしまった肉厚な「真ハタ」を、根菜の出汁だけでできたスープと味わいます。根菜はどれも、ホクホクとした食感が残っていて、噛むほどに野菜の甘みも感じられました。
かまくらBARでも使用されていた金さん作陶のお猪口も登場。キラリと雪の結晶のように輝く底が美しい!
お肉は「発酵猪」。マタタビの実や、アンニンゴ、カヤの実といったなかなか口にしない木の実や、ビーツ、カブと一緒にいただきます。発酵させたお肉は、旨味がぎゅっと凝縮されているのでジューシーさもありながら、まったく臭みやクセがなく、美味しかった!
〆のご飯は、魚沼産のコシヒカリをつかった山鳥の炊き込みご飯。大きなお釜に約40人分!!お釜の蓋を取った瞬間の香りがめちゃくちゃよかった。
冬の里山にとって、山鳥は貴重なタンパク源。命の恵みに感謝をしつつ、美味しくいただきました。普段忘れがちな当たり前のことを、思い出させてくれるいい機会でした。
デザートは、「金柑と発酵酒粕の自家製ヨーグルト」。食べた感じは、ヨーグルトというよりも甘さ控えめのレアチーズケーキのよう。サクサクのクラッカー、金柑の入った自然な甘さのゼリーと三層の食感が楽しめるヘルシースイーツ。
野菜中心のディナーは、発酵と保存のために塩分が効いた味付けで、意外と満足感のあるコースでした。さてこの後は、いよいよ夜のイベントが始まります!
雪上イベントへ出発!
お腹も満たされたところで、いよいよ夜のイベントへ!もちろん、昼間に渡された「賽の神」で必要な人形を持って、いざ出発です。
キャンドルと会場を照らしているライトの灯りを頼りに向かいます。〈里山十帖〉の周りには山しかないので、もちろん街灯もありません。空を見上げると、普段街で見る倍以上の数の星でいっぱい!冬の澄んだ空気もあって、夜空がとってもキレイでした。
道すがらキャンドルが置かれている場所には、ひとつずつ椿がセットに。
ここが雪上ステージ。すでに右奥の「賽の神」前は、人だかりで盛り上がっていました。
どこに人形を置こうか真剣に悩む大人たちのワクワク感が伝わってきます。
私も商売繁盛と一年間の無病息災を願って、人形に想いを託しました。
そこへ、(左から)茶人の松村さん、陶芸家の金さん、書道家の万美さんの3人が、松明を持って登場!
「賽の神」に火が点きはじめると、炎は一気に燃え上がり、寒さが一瞬でなくなるほど暖かい空間に包まれました。炎の燃えるさまは、まさに圧巻のひとこと!
そして、雪上パフォーマンスとなる舞台はこちら!雪の上に畳と茶道具。奥にはまるで、和紙のようにキレイに整えられた舞台が準備されています。
万美さんが墨の入った壺と筆を持ち、
松村さんが濃茶手前の準備を始めました。
すらすらと、雪の上に字を書いていく万美さん。「雪の上に書くのは始めてです」とお話されていたのですが、迷う様子もなく筆が進んでいきます。雪がライトに反射しキラキラと輝いていて、美しかった。
「賽の神」の“賽”と、茶事、陶芸、書道など古き良き文化に敬意を評し、新たな時代の文化を醸す祈りを込めた「賽醸茶事」の“醸す”という言葉を組み合わせた造語の「賽醸大茶会」。
“大”の部分には、松村さんが点てた濃茶と金さんの器が「賽の神」へ納められ、コラボレーション!
新しい時代の文化を切り開くような斬新なパフォーマンスで、“賽醸大茶会”は無事に終了しました。
2日目の早朝6:30。
チェックアウトは嬉しい11時。早起きして向かったのは、露天風呂です。朝日とともに入浴が楽しめる、この豪華な眺め!!朝日が温泉に映り、“逆さ富士”ならぬ“逆さ朝日”も楽しめちゃいます。早起きしてよかった~!と思えた最高の瞬間でした。
身体が喜ぶ朝食。
昨日のオーガニック・デトックス料理のおかげで珍しく空腹で向かえた朝。朝食は魚沼産コシヒカリの玄米、納豆に野沢菜などの古漬けをいれた新潟の郷土料理「切り菜」、白い「だし巻き卵」、手づくりの「日替わりお惣菜」、無添加で水も使用していない「すりおろしにんじんジュース」、日本海で採れた「いわしの生姜煮」、野菜たっぷりの「お味噌汁」など、身体にやさしいメニューが並びます!
「だし巻き卵」が白っぽく見える理由は、鶏のエサにコシヒカリを入れているからなんだとか。鬼おろしですった荒目の大根おろしとお醤油で食べるとご飯がどんどん進んでしまい、おかわりは白米に変更して、ペロリと2膳いただきました!
朝のお味噌汁は、自分で作ります。用意された土鍋には、昆布とかつおの合わせだしが準備されているので、好きな具材を入れてお味噌を溶くだけ。お味噌の加減を、自分好みに調整できるのが嬉しいですよね。
食べ終わったあとは、また温泉に浸かってギリギリまで雪景色を堪能し、リフレッシュすることができました。温泉と雪国が培ってきた発酵食文化でデトックス体験をしてみてはいかがでしょうか。チェックアウトする頃には、身体がスッキリするのを感じられるはずです。
〈里山十帖〉概要
■新潟県南魚沼市大沢1209-6
■025-783-6777
■JR大沢駅から無料送迎バスあり
■公式サイトはこちら