シュールな面白さから心揺さぶられる名作まで。珠玉の猫マンガ12選
とりさわ・ひかり/マンガと本を題材に、インタビューや書評、紹介記事などを手がける。『SPUR』連載「林士平の推しマンガ道」の構成、執筆も担当。家にはキジ白の親子3匹がいる。
よこい・しゅうこ/東北芸術工科大学准教授。マンガを専門に執筆、研究。文化庁メディア芸術祭マンガ部門選考委員、芸術選奨推薦委員などを歴任。長毛猫ニコと暮らす。
猫の名キャラクターが登場!
1. 『ラブストーリーを追いかけて』

猫らしく人間くさいメロウなドラマ。
ピコピコ動くものは追ってしまうのが猫の性。ラブも失恋もまた然り。ベタな設定も昭和の空気も猫が演じれば鮮やかに息を吹き返す。擬人化されつつ猫そのものの動きを見せる絵に痺れ、仔猫のかわいさに悶絶!(鳥澤さんセレクト)
雑誌『Casa BRUTUS』で連載されたトレンディドラマのような猫マンガ。令和の東京を舞台に、社内恋愛、駆け引き、失恋、得恋、猫のかわいさまで大盤振る舞い!
マガジンハウス 全1巻 2,200円 © ほしよりこ
2. 『小さなお茶会』

猫に招かれて夢のようなお茶会へ。
いつもお茶を飲みながらおしゃべりしている、猫のぷりんともっぷ。昭和の名作ですが、詩情あふれるメルヘンな世界観はどこか哲学的でもあり、今も新鮮です。猫とお茶は心を和ませる最強のタッグ!(横井さんセレクト)
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1978年から『花とゆめ』で連載された、猫の夫婦の日常を描いた名作が復刊。全205話に番外編6話、短編、エッセイ、原画ギャラリーも収録したA5判の愛蔵版。
宝島社 このマンガがすごい! comics 上中下巻 3,300円~
© 猫十字社/宝島社
猫こそが救世主だ!
3. 『みゃーこ湯のトタンくん』

ピトピト肉球の感触が人を救う。
名前と飼い猫のこと以外記憶をなくした男が猫だらけの世界に迷いこむ。行き場のない彼を湯に誘い、仕事を教えるのは虚実の結節点にポチンと佇む黒白の猫。日常をがんばる、懸命に生きることの源には猫がいる!(鳥澤さんセレクト)
「みゃーこ湯」という名の銭湯に集うのは、店主も客も猫、猫、猫。道で行き倒れていたところを猫のトタンに助けられたハラ(唯一の人間)は番台修業に精を出す。
ミシマ社 全1巻 1,650円
4. 『うちの猫は仲が悪い』

猫への愛が日常を鮮やかに彩る。
パートナーが病気になり、落ち込んで帰宅した谷口さんを、猫たちが普段どおり迎えるシーンが忘れられません。「なーんもしてくれない」「でもいつも通りでいてくれる」猫に、救われた経験がある人は多いはず。(横井さんセレクト)
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10歳のフミちゃんと3歳のウニちゃん。マンガ家と暮らす2匹の猫が仲良くなる日は果たしてやってくるのか? 猫のいる日常を真摯にポップに活写したエッセイ。
KADOKAWA 全1巻 1,210円 ©Natsuko Taniguchi
猫のためなら何でもできる!
5. 『いるのにいない日曜日』

猫語を理解する秘密の方法。
鼻のブチがかわいいハチワレ猫の梅。平成初期らしく出入り自由の気ままな家猫暮らしなれど、風邪をひけば飼い主はやきもき。猫の言葉が理解できる怪しげな方法まで実行してしまう気持ち、痛いほどわかります!(鳥澤さんセレクト)
三好さんの家には夫と妻と猫1匹。時おり小さな謎が挟まれながらも淡々と流れゆく時間を綴る。1990年代初頭に話題を呼んだ『三好さんとこの日曜日』の続編。
KADOKAWA ビームコミックス 全1巻 748円 ©三好銀/KADOKAWA
6. 『三毛猫モブは猫缶を稼ぎたい Mobu’s Diary』

友と2匹ではじめてのお仕事へ。
ワガママで怖がり、気分が乗らない時は眉間にシワ。まるいボディのモブが、どのコマをとっても最高にチャーミング♡「カワイイ! なんでもしてあげたい!」という気持ちを抑えながらページをめくっています。(横井さんセレクト)
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香港出身、英国で学んだ人気イラストレーターが台湾で発表した初コミックスの日本語版。猫のモブが安穏とした家猫生活から一念発起、猫カフェに働きに出ることに。
玄光社 全2巻 各 2,200円 訳:陰山有加 ©黒山 キャシー・ラム/玄光社
猫の猫らしさを堪能する
7. 『性悪猫』

猫には詩情に満ちた言葉が似合う。
仔猫が外で遊んでいる隙に飼い主に甘える母猫の絵は「梅雨」の1コマ。これを見たいがために新聞を購読する人もいるに違いない、なじみの姿の奥には「仔猫みたいに/抱いてよ」という静かな願いが燃え盛っている。(鳥澤さんセレクト)
マンガ家であり、詩を書き、エッセイも遺した伝説の作家による、仔猫、母猫、野良猫、無頼派、甘えん坊まで猫満載の27編。カラー&モノクロイラストも収める。
小学館クリエイティブ 復刻名作漫画シリーズ 全1巻 1,540円
©やまだ紫/小学館クリエイティブ
8. 『今日もネコ様の圧が強い』

猫の頭の中をのぞいてみると?
SNSで注目を浴びた作品だけに、猫好きにとっての「あるある」エピソードが満載。気位が高いネコ様たちのリアルな表情や仕草に引き込まれます。極上ふわふわの肉球と得意げな表情。これぞ国宝。(横井さんセレクト)
information
飼い猫と知人の猫をモデルにしたキジネコ様&クロネコ様の日々を綴る。SNSで発表された作品に、エピソードや裏話などの描き下ろしマンガを加えた書籍化第1弾。
KADOKAWA 既刊1巻 1,375円
猫の目で世界を見つめる。
9. 『綿の国星』

猫だって想いと言葉に溢れている!
人の形をして猫の耳と尾をつけ一張羅を着たチビ猫。満員電車、魚屋の反撃にも季節の変遷にもガラス玉のような瞳をチカチカキラキラ。世界は驚きと喜びと危険と哲学に満ちていることを思い出させてくれる。(鳥澤さんセレクト)
雨の道端に行き倒れていた小さな猫。浪人生に拾われ、チビと名付けられて猫アレルギーの母と小説家の父との3人家族に加わる。いつか人間になることを夢見ながら。
白泉社文庫 全4巻 607円~ © 大島弓子/白泉社
10. 『るすばん猫きなこ』

震災の記憶を語り継ぐ新しい物語。
海辺の町で地震が起き、「一晩くらいなら」と家に残された仔猫・きなこ。家族の帰りを待って“おるすばん”する猫の視点で大震災や原発事故を描きます。著者の新たな代表作にして、猫マンガの新境地となる予感。(横井さんセレクト)
information
生後2カ月でここなの家にやってきた仔猫。ある日街を襲った地震と津波によって離れ離れになってしまった猫と少女と家族の物語。来年3月に単行本第1巻発売予定。
講談社『モーニング・ツー』で連載。公式HP、コミック DAYS で配信中 © 今日マチ子/講談社
猫暮らしの楽しみ。
11. 『ぎんちゃんとわたし』

猫暮らしの愉悦は毎日のなかに。
「ぎんちゃんと私の毎日は忘れてしまうもので出来ている」。思い出せるよう描き溜められたマンガは、頭突きも喉の音も、隙間に入り込んだりする猫の快やワクワクまで描きつけられて優しい永遠性を帯びている。(鳥澤さんセレクト)
生後10日ほどで拾われて大山家にやってきたぎんちゃん。2014年から著者のSNSで発表された猫の日常を丹念に描いたエッセイの一部と、描き下ろしも収録。
幻冬舎 全1巻1,320円
『白猫、黒猫、しましま猫』

三者三様の魅力をフルカラーで。
「猫をよく知らない人にも楽しんでもらえる内容に」という編集者からの要望に応えて作られた一冊。猫との暮らしにある何気ないおもしろさがつまっています。スタイリッシュな絵柄と鮮やかな色使いも素敵です。(横井さんセレクト)
information
幼い頃から一緒に暮らしたチャオ、実家にきたぐうちゃん、現在進行形の同居猫ちふ。猫を描き続けてきた画家が暮らしを共にした3匹の魅力を綴るフルカラーエッセイ。
幻冬舎 全1巻1,430円 © カマノレイコ/幻冬舎




















