絶対に失敗しないために。アートを部屋に飾るときに気になるQ&A7選
おおしま・ただとも/1998年、インテリアブランド〈IDÉE〉に入社。現在はブランドのディレクションを担当。2011年には「Life in Art」プロジェクトを立ち上げ、時代性や知名度を問わず、〈IDÉE〉のクリエイションに共感するアーティストの作品や、造形や経年美をもつヴィンテージ、手仕事のぬくもりを感じさせるクラフトなどを通して美意識のある暮らしを提案している。
アートを部屋に飾りたい。
お気に入りのポストカードやフライヤーを壁に張ったりはしているけど、インテリアをステップアップするなら〝アート〞を飾ってみたい。でも、何から始めればいいかわからない!そんな人、実はけっこう多いのでは?
「漠然と探している方におすすめするなら、2万〜5万円程度、洋服1枚くらいの何かかな」と話すのは〈IDÉE〉ディレクターの大島忠智さん。日常芸術をテーマにアート(=文化)を広げる「Life in Art」プロジェクトを立ち上げ、アートのある暮らしを多角的に追究する人物だ。
「そのくらいで小さめの作家ものや、質のいいリトグラフも手に入る。服より長く楽しめると思えれば決して高すぎる買い物ではないし、逆に服1枚分ならと身近に感じられますよね」
大島さんにさらに詳しく聞いた、部屋にアートを取り入れるためのコツはQ&Aの通りだが、「自分にとってのアートとは?というところも考えてみてもいいのかなと思います」と話す。
「アートはとてもパーソナルなもの。道端の石ころや、骨董店で見つけた古道具だって、それを見るとワクワクするとか、癒されるとか、豊かな気持ちにしてくれるならば、それはその人にとってのアートといえるんじゃないかな?と。あまり気負いすぎず、日常の暮らしに取り入れてみてほしいです」
Q1 アートを飾るために、最初に覚えたいコツはありますか?
A. テーマカラーを決めてみよう!
「海外の家のように、1カ所の壁にたくさん絵を飾りたいという場合、テーマカラーを決めておくのはひとつの手。テイストも色もバラバラなものをまとめ上げるのはけっこう上級者のテクニックなので、色数を少し絞り、アクセントになるカラーを決めると、全体のまとまりを出しやすくなります」(大島さん)。黄色をキーカラーに、黒と青でまとめたサイドボード周りのスタイリング。繰り返される猫のモチーフも印象的!
Q2 はじめてのアートはどんな作品を買えばいいですか?
A. まずは小さいサイズをチョイス。
「小さいサイズのアートの方が価格が手頃なものが多いのも大きな理由ですが、あまり大きいとそれだけが主役になってしまいがち。日本の住空間にもすっと溶け込ませやすいので、初心者の方には小さめがいいかもしれないですね」(大島さん)。キッチンまわりのワゴン上の小さな空間を、フラワーベース型のオブジェや、軽いものならかけられる小さな花の陶器のフックで彩ったスタイリング。ランダムな飾り方も参考にして。
Q3 買いやすいジャンルはありますか?
A. リトグラフはおすすめです。
上の壁の作品にも多いリトグラフは、平らな石板にインクで絵を描き、化学反応を利用して印刷する版画の一種。何度も刷ることができるが、現代の機械による印刷とは異なり、インクの調合など職人たちの手作業が不可欠。「絵柄は同じでも、一枚ごとに色の乗りが違ったりと個性がある。一点ものよりは手頃な価格なのもおすすめです」(大島さん)
Q4 アートを増やしてみたくなったらどうすればいい?
A. 物同士のストーリーを作ってみる!
「アートを飾ることに少し慣れてきたら、それこそ服を着替えるように季節ごとにディスプレイを変えたり、誰かを家に迎えるときに、この人はこういう人だから、これとこれを合わせて……とストーリーを作ってみたりするといい。色やテイストを合わせるのはもちろん、物同士の間に物語を作れるような組み合わせを見つけてみてください」(大島さん)
Q5 どこに飾ればいいのかわからないんです。飾りやすい場所は?
A. 実は洗面スペースっておすすめです。
「洗面所やお手洗いが寂しいっていうお声を、実はお客様からよく聞くんです。洗面所にちょっとしたアートというのはいいかもしれませんね」(大島さん)。洗面所が素っ気ない理由のひとつは、白っぽい空間というケースが多いこと。でも実はそれ、何かと色や物が入る住空間の中では、アートを飾る場所として理想的! 水はねがあったりもするので、素材はガラスをチョイス。アートのカラーリングや造形が引き立つ、愛着の湧くコーナーができあがる。
Q6 寝室におすすめのアートはありますか?
A. ファブリックもアートとして取り入れてみましょう。
長い時間を過ごすベッドルームにもアートを取り入れたい。「ファブリックの作品ならば、地震などで万が一落ちたとしても安全。凝ったテキスタイルやラグなどにもアートと呼べるものはあると思う。固定観念にとらわれずに楽しんでほしいです」(大島さん)。写真で壁にかけているのはポルトガルのデザイナーと織職人のコラボによるラグ。床に敷くラグや、ベッドスプレッドとデザインや色をリンクさせてもよさそう。
Q7 何から何までがアートですか?
A. 自分の気持ちを動かすものはアートといえる!
「アートとは何か。それは〈IDÉE〉でも長く考えてきたことです。評価の高い作家ものだけがアートなわけではない。その人の心を動かし、物の見方を変えてくれる何か。それぞれの人が自分で見つけた美は“アート”といえると思います」(大島さん)。国籍や時代も多様なオブジェや本などに、お菓子の缶や梱包用の紐、活版印刷のショップカードなどもディスプレイしたシェルフ。自分にとっての“美しい”を集めたコーナーだ。