インテリアにもSDGs。誰かのために受け継ぎたくなる素敵な布づかい
おおわき・ちかこ/自身のブランド〈キチカ〉〈コキチカ〉を休止後、2016年より新たな創作活動「ワンダーフルライフ」を始動。ジャンルを超えたさまざまな分野の国内外の作り手たちと協働し、発信を行っている。
せっかく出合えた布を次の世代に受け継ぎたい。
大脇千加子さんがさまざまな作り手とともに、豊かな物語性と世界観をもつものづくりを届ける活動「ワンダーフルライフ」を始めたのは2016年。その住まいには多種多様な創作物があふれているが、なかでも布は多い。それらは「ワンダーフルライフ」を始めて以降、出合ったものばかり。「この先作れないと思うもの」がほとんどだという。
「環境なのか素材なのか人なのか。でもせっかくここまで残ってきた布に出合えたからこそ、次の世代に繋ぎたい。形だけを真似るならば早いけれど、古いものは手間がかかっていて、補修には長い時間が必要です」
高校生の頃から憧れた〈イッセイミヤケ〉で働き、そのものづくりを見て、服を突き詰めていくと布になり糸になることを学んだ。布と触れ合ううちに、自分の中から色や図案を出そうという概念は変わった。あるものをどう活かすか。だからこそ身の回りの布が、彼女の思考や創作を刺激する。
傷んでしまったソファカバーに替わって、布を学んでいた頃に出合ったキルトをかける。日々最も目に触れる布は、すっかり自分のものになったいまも学びを与えてくれる。触れて、めでて、次への可能性を模索する。そのためにまず、偏愛する布で日々を楽しんでいる。
インドで出合い、次に繋ぐ布。
ハンガーラックにかかる服をカバーするのは、インドのプシュカルで出合った刺繍をパッチワークしたタペストリー。今後、こうした布を使ったポーチの展開を予定している。
繊細で美しいカディは大切な一枚。
インドの人間国宝に認定される職人の手により極細の糸で織られた、モスリンと呼ばれるカディ。一辺7m超の大判で、繊細な刺繍が施されている。大脇さんにとって大切な一枚。
まずは手元にレスキューしたい。
廃業した国内の機屋に眠っていたインテリアファブリックのデッドストックを救いだしたもの。製品に使うにはわずかな尺しか残っていないが、次に繋げる可能性を模索中。
大切な布を受け継ぎ、使い切る。
アフリカを代表する伝統的な織物、クバ布を用いたバッグやサンダルなどを発表する大脇さんが、その端材を用いて作ったオブジェ。余すことなく、大切な布を使い切ろうとする。
インスピレーションを与えてくれる端材。
インドで手に入れた古いサリーの端材を束ねたもの。鮮やかで色とりどりな布が大脇さんにインスピレーションを与えてくれる。誰かにとっては処分の対象でも彼女には宝物。
受け継いだ布をアップデート。
古い布をパッチワークで繋ぎ、それを奄美大島の伝統的な泥染めを行う〈金井工芸〉で染めてもらった。化繊などの一部素材が染まらずに本来の色を残し、新旧入り交じる姿がいい。