【長野県・松本】民藝の街で出合う、絶品シンプル朝食に、一軒家カフェ、素朴で毎日使いたい器…。
おもて・ももか/「目の前の日々を留めて置く作業」をライフワークとしながら、東京を拠点に活動。2024年3月には、自身、2冊目となる写真集『traverse(r)』の出版。ハナコラボパートナー。
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とびきり自由。だから車が好き
ちょっとした遠出や長期休暇の旅に出る時、さまざまな移動手段の中で私は大抵、車を選ぶ。イヤホンをせずに好きな音楽を聴きながら、時間を気にせず思うがままに寄り道ができる。こんなとびきりの自由は他の移動手段にはない。だから私は、気が遠くなるような渋滞にはまっても、肩が凝っても、車でドライブが好きだ。
朝晩はひんやりと涼しく、日中は過ごしやすい気温になった10月半ば。今日は朝早くに家を出て、長野県松本市までやってきた。松本の街中には数多くの民藝店があり、さまざまな手しごとに触れられる“民藝のまち”として知られている。
今回の旅の目的は松本市から車で一時間半のところにある、一年に一度しか訪れることができない〈うつわの美世〉に行くこと。長野県伊那市で作陶されている〈やきもの山上〉さんの直売所で、毎年この時期にだけうつわの展示会が行われているのだ。
どうせならつくり手が暮らす土地に訪れ、空気を肌で感じて、うつわの背景にあるものを味わいたい。そんな気持ちを原動力に、今回も手しごとを訪ねる旅が始まる。
つやっつやの米にお味噌汁。シンプルなのに満たされる山山食堂の朝ごはん
松本の朝といえば、〈山山食堂〉の朝ごはん! 早朝に家を出たのはドライブ前にこちらで腹ごしらえをする為。山好きの店主のこだわりが詰まった店内には、山にまつわる本がびっしりと並んでいて、山小屋のような心地の良い空間が広がる。
朝ごはんは、ご飯が主食のAセット、トーストのBセットから選ぶことができ、今日はとびきりお腹が空いていたので、Aセットに生卵・目玉焼き・しゃけを追加(ベーコンエッグもおすすめ)。京都のヨコシマ珈琲焙煎所の豆を使用した深煎りのコーヒーも忘れずに。
つやっつやのごはんにホッとするお味噌汁。盛りだくさんのおかず。こんなに贅沢な朝は他にはない。
ちなみにお店の奥には古道具屋さんがあり、こちらもぜひ覗いてみてほしい。いい出合いがあるかも。
お腹も心も満たされたところで、〈うつわの美世〉を目指して車を走らせる。自然豊かな里山の風景や森のにおいを感じられる気持ちのよい道のりで、あっという間の一時間半。所々うっすらと紅葉している木々に秋の訪れを感じて嬉しい気持ちに。
住所:〒390-0874 長野県松本市大手5-4-25
営業時間:【朝ごはん】7:00〜10:30L.O.【昼ごはん】11:30〜16:00(L.O.は15:00)
定休日:月曜日、火曜日
公式インスタグラム:@33shokudo
穏やかで優しい、暮らしに馴染む〈やきもの山上〉の器
〈やきもの山上〉があるのは、日本で最も美しい村と言われている伊那市高遠町。春には桜の名所として知られている高遠城址公園でタカトオコヒガン(高遠小彼岸)と呼ばれる珍しい桜を見ることができ、秋には「高遠城址もみじ祭り」が開催され美しい紅葉を楽しめる。
民家の細い道を登り進むと見えてくる、古民家に立てかけられた看板が目印。とはいえお店なのか、民家なのか、玄関には看板がないので躊躇していると、店主の宮崎さんが笑顔で出迎えてくれた。
〈やきもの山上〉の作品を作るのは宮崎匠さん、〈うつわの美世〉は宮崎理那さんが切り盛りされているそう。静かな集落に美しく佇む古民家の一角で、年に一度のうつわ展。期待を胸に玄関をくぐると、優しい光が差し込む店内に美しいうつわたちが鎮座している。
古民家の中はより一層、静謐な世界が広がっていた。高遠の里山の風景や澄んだ空気に触れ、心地の良い静けさに包まれていると、以前、わたしが初めて〈やきもの山上〉のうつわを手に取った時に感じられた穏やかで優しい親しみやすさを思い出す。
改めて、ここで手に取る〈やきもの山上〉のうつわは味わいと解像度がより鮮明に、より一層愛おしくも感じられる。お店で手に取って感じること、つくり手が暮らす土地まで足を運んで感じられること、その違いはとても大きい。
ちなみに、〈やきもの山上〉のうつわを取り扱っている民藝店が松本市に一軒、松本市から車で二時間の高山市にもう一軒あるそう。年に一度のうつわ展に来られない方は、取扱している民藝店までドライブするのも◎。
※〈やきもの山上〉のうつわは、オンラインショップからも購入可能です。
住所:〒396-0305 長野県伊那市高遠町長藤板山1940
公式インスタグラム:@yamajou__
公式オンラインショップ:https://yamajou.stores.jp/
〈やきもの山上〉のうつわを取り扱っている民藝店
*松本市の〈Gallery sen〉
住所:〒390-0823 長野県松本市中山6573
公式インスタグラム:@gallery.sen
*高山市の〈やわい屋〉
住所:〒509-4121 岐阜県高山市国府町宇津江1372-2
公式インスタグラム:@yawaiya_asakura
山あいの集落に佇むカフェでいただく、天然酵母の手作りパン
〈うつわの美世〉から車で10分ほど山道を登っていくと、更に山あいの集落にポツンと佇むカフェ〈分校館〉に到着。建物の前には綺麗な川が流れていて、とても気持ちのいい場所だ。
趣のある建物の中に入ると、天然酵母の手作りパンや近くの山で採れたきのみや野草を漬けた瓶がずらりと並んでいる。エプロン姿のお母さんたちが優しい笑顔で迎えてくれます。残念ながら店内でお昼ごはんを食べる時間がなかったので、ドライブのお供にパンを購入。
素朴で滋味深いパンを一口、二口と噛み締めながら、次回は必ずここでお昼ごはんを食べると誓った。
住所:〒396-0303 長野県伊那市高遠町荊口830
営業日:水曜日、土曜日、日曜日
営業時間:11:00~15:00
公式インスタグラム:@bunkou_kan
【予算2000円】お土産は、いつでも長野の自然に触れられるアロマスプレーを
松本に戻る前に、道の駅〈南アルプスむら長谷〉へ。〈うつわの美世〉の宮崎さんから、この道の駅で手に入るアロマミストをおすすめされたので、気になって立ち寄ることに。
高遠町の自然を詰め込んだ天然精油を使用しており、赤松とクロモジの香りがするアロマミスト。どこにいても高遠町の自然の風景をいつでも思い出すことができそうな香りだ。
他にも赤松茶、クロモジの塩など、気になるものがたくさん。気持ちのよい香りに包まれて、夕方のドライブ。良い旅の締めくくりとなった。
住所:〒396-0401 長野県伊那市長谷非持1400
営業時間:【パンや】8:00~17:30【直売所】4月~11月は9:00~17:30 12月~3月は9:00~17:00【食事処】10:00~16:30(ランチタイムは11:00〜14:30)
定休日:【パンや】【食事処】火曜日 【直売所】4月~11月は無休、12月~3月は火曜日
HP:https://www.inacity.jp/shisetsu/kankoshisetsu/minamialpsmura.html
text&photo_Momoka Omote