「励ましも脅しもたいして違わない」蛙亭イワクラ、コジコジから得た学び | 連載【即断すぎて周りがとめる】vol.12

あるとき、ファンの方に「イワクラさん、『コジコジ』に出てくるゲランに似てます」って言われたんです。わたしの顔がゲランになってる似顔絵を描いてくれて、『コジコジ』の１巻も差し入れてくれて。子供のころ、テレビアニメにもなっていたから知ってはいたんだけど、見た目がファンタジックだから、「かわいい漫画なんだろう」と思ってあんまり関心がなかったんです。でも読んでみたらハマってしまいました。「うわ、なにこれ、めちゃくちゃおもしろい！」。急いで続きの本も買いました。

　『コジコジ』はさくらももこ先生のギャグ漫画。「メルヘンの国」に住む、動物なのか人なのか、子供なのか大人なのかもわからない、謎の宇宙生命体「コジコジ」が主人公。シュールな笑いに満ちあふれていて、ちょっとブラックな部分もあって。コジコジは、何があっても、何に対しても動じないし、スルースキルにあふれていて。飄々と生きているんです。その感じがめちゃくちゃ面白いし、憧れます。とにかく、この顔、このかわいらしいキャラクター造形からは想像できないようなことを言う、そのギャップが好きです。

コジコジは名言だらけ。「コジコジは生まれた時からずーっと 将来もコジコジはコジコジだよ」「飛べない時はゆっくり休めばいいじゃん 仕方ないよ飛べないんだからさ」「じゃあコジコジと同じだね コジコジも何の役にも立たないよ」「いーのいーの 励ましも脅しもたいして違わないよ」「えっ悪いの？　遊んで食べて寝てちゃダメ?」とか。哲学的というか深いというか。

いちばん好きなのは、海で泳いでいたコジコジが小さなタコにバカにされるシーン。「おまえバカだろ。バーーーーカ」とタコが言うと、コジコジは「そうだよ　よく知っているね　キミは物知りだね」とサラッと受け流す。面食らったタコが「なんだよ　その帽子変なのっ　アハハ」ってさらにバカにしようとするんだけど、コジコジは「そうだよ　変なんだ　アハハ」。このすべてを受け入れる感じがすごく好き。

そしてあるとき。「レインボー」のジャンボたかおに「『コジコジ』が好きなら『ちびまる子ちゃん』も漫画で読んだほうがいいよ」と勧められました。ジャンボは「僕はちびまる子ちゃんで育ちました」って言うほどさくらももこ先生の大ファン。わたしはテレビアニメしか知らなかったので、これも衝撃を受けました。まる子の性格が本当に悪くて、ブラックで（笑）。とにかく、さくら先生の作品は、漫画がすごい。アニメしか観たことがない人はぜひ読んでみてください。

「そいつどいつ」の市川刺身もさくらももこ先生が大好き。以前、『コジコジ万博』が東京の立川で開催されたときに、一緒に行きました。巨大なコジコジが名言やギャグをしゃべるコーナーがあったり、コジコジが通う学校の教室をイメージした空間があったり、アニメ『コジコジ』のエンディング映像に入り込んで、電気グルーヴが歌うエンディング曲「ポケット・カウボーイ」にあわせてダンスできるスポットがあったり。子供たちがめちゃめちゃ踊ってたんですけど、一緒になって踊りました（笑）。

刺身と一緒にめいっぱい楽しんで帰ろうとしたとき、子連れのお母さんがバーッと走って追いかけてきました。「芸人さんですよね。いつも観てます！」。うれしいお言葉でした。すると、お母さんが連れていた５歳くらいのお子さんが、「これ、あげる」ってキーホルダーをくれました。きっと大事にしていたものだったと思うんです。わたしは感激して「ありがとう！　大事にするね！」と受け取りました。

会場を出たとき、もらったキーホルダーをよく見てみたら、ポケモンでした。