ドリアン・ロロブリジーダのゆずれないもの〜第12回〜
こだわりなど捨ててしまえ?

LEARN 2024.08.13

踊り場世代のドラァグクイーン、ドリアン・ロロブリジーダさんの"ゆずれない、ゆずりたくない、でも時々ゆずっちゃってるかもしれない?!大切にしているコトやモノ”をゆるーくご紹介する連載です。

ハッシュタグは#ドリゆず。あなたのゆずれないもの、なんですか?

今月のゆずれないもの/こだわりなど、全部捨ててしまえ?

Hanako WEBをお読みの皆様、ごきげんよう。ドラァグクイーンのドリアン・ロロブリジーダです。

暑い…。暑いわぁ。『こんな凶暴な暑さの中、ジムでトレーニングする方はいったいどいうつもりなんでしょう。理解ができないわ……』と、アタシも去年の夏まではそう思っていました。去年までのアタシは、『暑さで食欲が落ちて夏痩せしちゃうかもしれないし、そうならない為にもしっかりカロリーを摂取しなきゃ!でも一応薄着の季節だから、食後のデザートはアイスクリームやラクトアイスを避けて氷菓!氷菓にしましょ!夏バテなんてしてらんない!』と息巻いていましたが、わんぱくな食欲はどんな暑さにも屈せず、夏痩せなどするはずもなく、体重をしっかりキープしたまま食欲の秋に突入する…というのがお決まりの流れでした。ところがアタシは今、ジムで7kmウォーキングした後にこの原稿を書いているのです。

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、5月に新しいYouTubeチャンネル『Durian's Powder Room』が開設されました。自身のライブパフォーマンス映像をお披露目するチャンネルは元々やっていたのですが、今回開設したのは、様々な企画を立てたりゲストの方を呼んだりする、より“YouTubeらしい”内容のもの。そこの企画の一環として、この数ヶ月は人生で何度目かになるダイエットをしているのです。ありがたいことに最近では、映画やドラマなど、後々まで残る作品にスッピンで出演する機会も増えてきました。しかし、いざ完成した作品を観てみると、いつもフェイスラインや腹回りの様子がおかしいのです。『やっぱりキャメラって横に広がって見えるのねぇ…』と自分に言い聞かせてきましたが、そろそろその言い訳も無理が出てきたので、(文字通り)重い腰を上げて、週に2回ほど近所のジムで1時間早足でウォーキングする習慣を3カ月ほど続けています。その結果、4月頃の体重から比べると5~6kgは絞れております。くそぅ…もうちょっと早くこの習慣を始めていれば、あの映画もあのドラマもあのNetflixも、もっとスリムな状態で撮影に臨めたのに…。このダイエットを通して“準備をしておくこと”の大切さを痛感しているので、これからは日々のお仕事に真摯に向き合うと共に、未来のもっと大きいステージのために様々なトレーニングを始めたいと思います。ドリアン、頑張るんだから!!

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さて、1年間お届けしてまいりました「ドリアン・ロロブリジーダのゆずれないもの」も、今回でフィナーレです。最後の「#ドリゆず」として皆様にお伝えしたいことは【こだわりなど全部捨ててしまえ】ということです。この1年間を全て台無しにするような言葉に、戸惑いや怒りを感じられる方もいらっしゃるかもしれません。しかしアタシはあえて最後に、このことをお伝えしたいのです。

たしかに過去11回に渡ってご紹介してきたアタシの様々なこだわりは、“今”のアタシにはとても大切なものたちです。ステージでの気構えも、パートナーに感謝を忘れないことも、笑顔やうがいを大切にすることも、ゆで卵や中島みゆきへの愛情も、今のアタシの人生を充実させ、キラキラとしたものにしてくれる大切なこだわりであり、そのための手段でもあります。しかしそれらのこだわりは、二十年後、三十年後のアタシの幸せをも約束してくれるものなのかどうかは全く分かりません。

アタシはいつも、“手段の目的化”には気を付けなければいけないと感じています。人生を豊かにするための手段だったはずなのに、いつしかその手段を実行することが優先になってしまい、本来の目的であった豊かな人生から全速力で遠ざかっていく…そんなケースもいくつか見てきました。自分や周りがずっと変わらずそのままならば、今のこだわりや習慣を続ければいいと思いますが、人や環境というのは絶えず変わり続けるものです。そんな諸行無常の人生の中で、ある特定のこだわりにしがみつき続けることは、とても危険な行為だと思うのです。こだわりやスタイルというのは、その時の自分を自分たらしめるための大切なものでもありますが、自分という檻に縛りつける鎖にもなりえるのではないでしょうか。

とは言え、いっさいスタイルを持たずにフラフラすることをオススメしているわけではありません。最終回に皆様にお伝えしたいのは、“どんなに大切なこだわりだったとしても、それが自分の幸せを妨げるものになってきたら、迷わず捨て去ってもいい”ということです。ゆずれないものをゆずることができたときに、アタシたちの人生はよりしなやかになると思います。そうすることで、過去の自分という重しを脱ぎ捨てて、新しい自分として軽やかに人生を泳いでいけるようになると、アタシは信じています。

これからもアタシは、様々なこだわりを持ったり手放したり繰り返しながら、ジタバタと生きていくんだと思います。お互いジタバタしながら人生をサバイブしてまいりましょう。

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今回も最後までお読みいただきありがとうございます。ミラーボールの下でふらふらと踊ったり歌ったりしているだけだったアタシに、『Hanako』という誰もが憧れる素敵な媒体で連載の機会を下さった編集部の皆様、そして飽きもせずアタシのよもやま話にお付き合いいただいた読者の皆様、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。アタシの取るに足らないこだわりの数々が、皆様のこれからの人生の“何かしらのきっかけ”になれたのなら、これ以上の嬉しいことはございません。

またどこかでお目にかかれることを楽しみにしております。それでは、ごきげんよう。またね

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text_ Durian Lollobrigida collage_Fumiko Oda edit_Wakaba Nakazato

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