ドリアン・ロロブリジーダのゆずれないもの〜第11回〜
拝啓、中島みゆき様。

LEARN 2024.07.11

踊り場世代のドラァグクイーン、ドリアン・ロロブリジーダさんの"ゆずれない、ゆずりたくない、でも時々ゆずっちゃってるかもしれない?!大切にしているコトやモノ”をゆるーくご紹介する連載です。

ハッシュタグは#ドリゆず。あなたのゆずれないもの、なんですか?

今月のゆずれないもの/中島みゆきへの熱烈なファンレター

Hanako WEBをお読みの皆様、ごきげんよう。ドラァグクイーンのドリアン・ロロブリジーダです。

梅雨入りをしたというのに、毎日うだるような暑さで、雨は時折気まぐれに降るばかり。「日本から四季が失われた」とささやかれて久しいですが、今年は更にそれを実感しております。去年から日傘を使用しているのですが、今年も手放せなくなりそうね…。

でもそんな今年の7月はアタシにとって特別なひと月になりそう。MCとして参加させていただいたNetflixの新番組「ボーイフレンド」が、7月9日から配信スタートするのです。この番組は日本初となる“男性同士による恋愛リアリティショー”。MEGUMIさん、ホラン千秋さん、青山テルマさん、徳井義実さんという錚々たる皆様に混じって、アタシもスタジオMCとして出演させていただいております。

実は”恋愛リアリティショー”って人様の恋愛を覗き見るみたいで恥ずかしくなっちゃってずっと苦手だったのですが、この『ボーイフレンド』はそんな気持ちを軽やかに超えて、爽やかな感動を何度も覚えました。“リアリティショーは苦手だわぁ”という方にこそ、是非ご覧いただければ嬉しいです。今年の夏は「ボーイフレンド」で決まり!

とまぁ、冒頭のご挨拶に乗じて自身の番宣をカマすという、“連載の私物化”に眉を顰めていらっしゃる方の気配をうっすらと感じながら、本日も筆を進めてまいります。

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皆様は中島みゆきという歌手について、どのような印象を抱かれているでしょうか。「暗い歌が多い」「中年の応援歌」「『糸』は好き!」「ミステリアス…」など、様々なイメージをお持ちかと思います。50年近いキャリアと、生み出してきた数多く(本当に多い!)の楽曲たちの多彩さから、100人に聞けば100通りの中島みゆき像が浮かび上がってくるのも、なんら不思議ではありません。かくいうアタシも、中島みゆきの楽曲に骨の髄まで魅せられた一人なのです。そうです。今日の「#ドリゆず」は【中島みゆきへの熱烈なファンレター】をお届けしたいと思います。長くなるわよ…。

初めて中島みゆきという存在を知ったのは1994年頃で、アタシは十歳でした。当時世間の話題を集めていたドラマ『家なき子』の主題歌として、「空と君のあいだに」や「旅人のうた」が大ヒットしていた頃。当時は特段強い思い入れもなく、「随分と力強く歌う歌手だなぁ…」くらいにしか思っておらず、それから数年後の「地上の星」とNHK『プロジェクトX』のロングヒットも、高校生だった自分にはあまりピンときておりませんでした。

そんなアタシと中島みゆきとの関係性が変わったのが、高校を卒業するかしないかの頃。当時のアタシは“近所に住むゲイのお姉さん方のグループ”に混じって遊ぶようになっていて、受験勉強の傍ら、週に何度かファミレスでご飯を食べたりカラオケに行ったりして楽しく過ごしていました。そのグループの中には、マサキ少年(アタシ)に初めてドラァグクイーンという存在を教えてくれた“勝子さん”という方がいて、よく家にお邪魔してはメイクや料理を教えてもらったりしていたのですが、ある日勝子さんから「アンタもオカマなら、みゆきくらい知っておかなきゃダメよ」と渡されたのが、中島みゆきのCDでした。

ゲイのお姉さん方と様々なお話をする中で、段々とアタシの中に芽生え出していた“オンナ(あえてカタカナで書きます)心”とみゆきの歌は見事にマッチして、そこからズブズブとみゆき沼にハマっていったのです。アタシは一度興味を持ったら、一から全部勉強したくなる性格だったので、近所のレンタルCDショップでデビューアルバムから当時の最新アルバムを全て借りてMDにダビングし、暇さえあればみゆきの歌をドップリと聴き込む生活が続きました。

もしかしたら世間一般のイメージとして「中島みゆきは暗い」というものがあるのかもしれませんが、アタシはそうは思いません。確かに「わかれうた」「ひとり上手」「うらみ・ます」「エレーン」など、一度聴いただけではその情念や怨みの質量に驚いてしまうような楽曲もありますが、そういった曲たちにも常に“弱者や不器用な者への力強い慈愛の眼差し”を感じ取ることができます。またラジオやコンサートでのみゆきさんのお喋りを聞いたことがある方は、底抜けに明るいみゆきさんをご存知なはず。名曲として名高い「時代」「誕生」「ファイト!」「重き荷を負いて」などを聴いて、本当の意味で、“命を救われた”方も多いのではないでしょうか。

アタシも今までの人生を振り返ると、ペシャンコになってもう立ち上がれないと感じるときが何度もありました。大好きだった男と別れたとき、大学を中退したとき、母親を亡くしたとき…、その他沢山ある人生のハードなタイミングで、いつも寄り添ってくれたのが中島みゆきの歌だったのです。ある時は一緒になってドン底まで沈んでくれて、ある時は優しく傷を包んでくれて、ある時は泣きっ面をひっぱたいて叱咤激励してくれました。みゆきの歌に今まで生かされてきたと言っても過言ではありません。

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ここ数年、みゆきさんの誕生日でもある2月23日には、みゆきさんへの感謝と敬愛の気持ちを込めて、友人の歌手と二人でひたすら“みゆき歌”を歌いまくるというライブを開催しています。年に一度ですが、アタシは本当にこのライブが楽しみで、毎年何を歌おうかとあれこれ考えている時間がとても好きなのです。

アタシはこれからもずっと、みゆきの歌を愛して、みゆきの歌に救われて、みゆきの歌を歌っていきたいと思います。
中島みゆきさん、同じ時代に生まれてくれて、ありがとう。

ということで、今回もアタシの偏愛をフルスロットルでお届けしてしまいました。中島みゆきに興味のない方には、なかなかに苦痛だったんじゃないかしら。でも大丈夫。そんな時にオススメのみゆきの歌はね…(懲りないドリアン)

最後までお付き合いいただき本当にありがとうございます。またお目にかかれることを楽しみにしております。それでは、ごきげんよう。

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text_ Durian Lollobrigida collage_Fumiko Oda edit_Wakaba Nakazato

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