連載〈HOME SWEET HOME〉 食のプロのセンスをインテリアから学ぶ。
CASE18 山崎祐嗣 LEARN 2024.05.24

おいしいものを作る人、おいしい場所をプロデュースする人。
食に関わるプロフェッショナルのセンスを、プライベート空間のインテリアから学びます。

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個々でも、みんなでも。成長する家族がにぎやかに。

順々に育っていく子供たちの成長を見守りながら、夫婦も楽しく過ごす。山崎祐嗣さんが、
家族の5年後、10年後を考えてホームタウンに建てた、日の光があふれる明るい家。

クスノキの一枚板が見事なダイニングテーブルは、海外に移住した友人から譲り受けた。
クスノキの一枚板が見事なダイニングテーブルは、海外に移住した友人から譲り受けた。

しらすと一口に言っても、チリチリに乾燥させたものからふっくらした釜揚げまでいろいろで、どんなものが好まれるかは、地域の食文化と関係が深いんですよ」
これまでよく考えたことがなかったしらすのことを、山崎祐嗣さんがわかりやすく教えてくれた。水産加工品仲卸の6代目で、富岡八幡宮の歳時記を暦に育った江戸っ子。2022年、界隈に家族と暮らす家を建てた。

晴れの日も雨の日も親子、姉妹が交わる家。

クスノキの一枚板が見事なダイニングテーブルは、海外に移住した友人から譲り受けた。
クスノキの一枚板が見事なダイニングテーブルは、海外に移住した友人から譲り受けた。

子供は中学3年生から幼稚園の年長までの四人姉妹。妻の志津子さんと計6人で暮らす、令和の東京には珍しい大家族である。真新しい家には、山崎さん夫妻が考える家族のあり方が細かに反映されていて、結果、とてもオリジナリティあふれる造りになっている。
まずユニークなのがキッチンの中に1人用の小さなカウンターテーブルがあることだ。「小学生と中学生、学年ごとに出かける時間が違うので、朝食は別々に食べる。このテーブルがあると、一人ずつの支度や片付けが楽なんです」と、志津子さんが説明してくれた。もう一つ、やはりキッチンのそばに、子供たちが勉強に使う小部屋がある。集中するのにはうってつけの広さで、わからないことがあればすぐ母親に尋ねられる。
子供部屋は、二段ベッドを二台置いた〝合宿所スタイル〟。年の離れた姉妹が空間を共有することも、今の時代にあっては貴重なことだ。夫妻の寝室の一角にも、幼い妹たち用の小さな文机を置いている。晴れの日も雨の日も、ご機嫌な日も喧嘩をした日も、親子、姉妹が必ず顔を合わせる家。大人も子供も家に帰ったら、まず3階のダイニングに上がって「ただいま」と、家族に顔を見せてから、それぞれの場所で過ごすのが、山崎家の大事なルールだ。

いいものを受け継ぐ暮らし。開放感のある明るい家で。

昭和40年代まで材木業が盛んだった一帯に立つ家は、流通の要だった河川が目の前で、窓の外は視界が開け、四季折々の風景が広がる。豊洲市場が仕事場の山崎さんは毎朝、夏でもまだ暗い時間に家を出るが、昼過ぎには帰って午後を家で過ごせる。日当たりと開放感は、譲れなかった条件だ。若い頃は家業など継がず好きなことをしたいと思った時期もあったけれど、大学時代に転機があった。春休みにしらす生産者のもとでアルバイトをし、人から聞いて父の偉大さを知る。目利きで信頼を得て海と食べ手をつなぐ仕事を、受け継ごうと決心した。

日々の暮らしはまだ子育て真っ最中ゆえ、子供が中心になりがちだが、大人の楽しみもおざなりにしない。山崎さん、志津子さんともにアートが大好きで、リビングから寝室までさまざまなアート作品を飾っている。それからグリーンも。大小の観葉植物が家中に豊かに配されているが、多くは、役目を終えたオフィス用のレンタル品を譲り受けたものだ。「うちに来ると、どんどん元気になるんです」と、志津子さん。家具も、友人、知人からの〝お下がり〟が多い。
「今使っているものも、いずれ生活に合わなくなったら、誰かに譲りたいし、それは子供たちかもしれない。そう考えると値は張っても長く使えるものを、と考えるようになりました」と夫婦で声を揃える。家族ぐるみで付き合う友人との関係も大事にしている。小さな店なら丸ごと収まるほどの広さのキッチンとリビングダイニングには、料理人の友人たちが家族連れでよく遊びに来るのだという。
今、志津子さんはマンダラ塗り絵の作成に夢中で、近い将来、工房を開く予定なのだとか。ガレージ脇には、十分なスペースがある。新しい家で、夢は実現に向けて進んでいる。

屋上を除いて計217 m<sup/>2 の3階建て。1階は広いガレージと玄関のみ、2階は主寝室、子供部屋とバスルーム、3階がキッチン、リビングダイニング+子供の勉強部屋。
屋上を除いて計217 m2 の3階建て。1階は広いガレージと玄関のみ、2階は主寝室、子供部屋とバスルーム、3階がキッチン、リビングダイニング+子供の勉強部屋。

極上しらすを家でも毎日、たっぷり食べる。

山崎祐嗣 HOME SWEET HOME

上質なしらすが、常に食卓に。「時代もあったのでしょうが、子供の頃、親父が家に持ってくるのは在庫の古いもので、それが嫌だったから、自分はとびきりを家族に届けています」と、山崎さん。ご飯が見えないほどたっぷりと、贅沢に。志津子さんの茨城の実家からの野菜が彩りを添えることも。

ESSENTIAL OF YUJI YAMAZAKI

家族の暮らしを豊かにするスペースを、大切に。


( ART )
暮らしの場に、アート作品を。
階段の壁や出窓を利用したギャラリースペース。子供たちの作品や、山崎さんが敬愛するアーティスト・GOMAさんの作品などが並ぶ。

アート


( KIDS )
親の目が届く、子供の勉強部屋。
3階の空間で唯一壁に囲まれた勉強部屋だが、窓があって閉塞感はなし。4人姉妹の入試が中学、高校と断続的に続く家で、利用は受験生が優先。

子供部屋


( GREEN )
みずみずしいインドアガーデン。
植物園のボランティアスタッフとして働くほど植物好きの志津子さんのために造った、家の中の庭園。水道、排水完備と、ショップ級のスペック。

インドアガーデン

photo_Norio Kidera illustration_Yo Ueda text & edit_Kei Sasaki

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