能登屋英里さんと安藤秀通さんのMy Better Room 心に“余白”を作る整理と収納。

LEARN 2023.07.04

整理して収納すると、あれどこ?とモノを捜す時間がなくなり、何を着よう?と選択する時間も減り、所有しているモノが把握できると無駄な買い物もしなくなる。自分にとって大切なモノを知り、好きなモノに囲まれた生活で得られるのは、やりたいことに充てられる時間や、ストレスのない日々から生まれる“心の余白”でした。
整理収納業界のパイオニア的存在として交流の深い能登屋英里さんと安藤秀通さんが話す整理収納の生み出す“心地よい暮らし”とは?

「まずは“自分の家の写真を撮ること”から」-能登屋英里

ヴィジュアルコンサルタント 能登屋英里

―整理収納に目覚めたきっかけは?

能登屋英里(以下、能登屋) 結婚した頃、ブログとかインスタに家を載せる人が増えてきていて、「どこを切り取っても理想の家にしたい」と考えるきっかけになったのがインスタだったんです。うちは夫がストック型で、モノは少ないのにトイレットペーパーだけ山ほどあったり、出しっぱなしが多くて、その理想と現実にモヤモヤし出して。オシャレに写真を撮りたいのに、夫の変なアルミラックが写っちゃうみたいな(笑)。そこからどんどん好きなモノだけを残しているうちに今のダイニングセットに出会って、このテーブルに合う壁、家具…とやっていき、今の理想形になるまで3〜4年はかかったと思います。

安藤秀通(以下、安藤) 私は家に帰っても安らげない、休まらない、何かやらなきゃって常に追われる暮らしだったんです。狭いことを言い訳にして部屋も散らかっていて。インテリアは好きだったから、どうにか変えたいと思っていたとき、なんでうまくできないのかを気付かせてくれたのが整理収納アドバイザーの講座でした。自分では整理収納できてるほうだと思っていたのに、全然できていなかったこともわかって。着てないTシャツが700枚とかあって、それを手放せたのも講座を受けたおかげ。

能登屋 そして人の家を片付けるのに変な快感を覚えるようになっていくっていうね(笑)。

―理想の暮らしが見えてきてよかったと思うことは?

安藤 自分の好きな空間を作っていく過程で、だんだん人間関係や人生の悩みの質が変わってきたんですよね。昔は本当に他人の目を気にしてばかりで、自分がこうしたいとかじゃなくて、こうやったら何か言われるかな?みたいな感じで考えることが多くて、集中できないタイプだったんですけど、今は家にいると気持ちがすごく穏やかで。毎朝起きたらちょっとだけボーッとしようと決めていて、その時間にインスピレーションが湧いてきたりして。あと、私の場合は見えている部屋の景色が今の自分を作ってくれている感覚があって、〝落ち着く〞とか〝こういう暮らしをしたい〞と思えるようになったのも、この部屋にしたからと思うんです。あと単純に、洗濯とか家事が楽になりました(笑)。

能登屋 私は小さい頃から、テーブルセッティングしてナイフとフォークで何かを食べることが好きだったんです。コーヒーや紅茶をゆっくり淹れることに目覚めてからは、そういう素敵な空間を作りたいと思うようになって。テーブルセッティングして食べることが、自分の家でできるようになったのは大きいですね。友達を家に呼んでもてなしたいという気持ちがずっと強かったから。今の家も〝人が集まる家〞をテーマにしています。

安藤 人が集まる家だし、英里さんにも人が集まりますよね。

能登屋 ありがとうございます(笑)。あと、キレイなクローゼットにしたいと思って、同じハンガーを80本まとめ買いしたことがあったんですけど、今は40本まで減らせました。ハンガーがどんどん減っていくのが気持ちいいし、着ない服が出ないのもいい。自分の好きなモノだけのコレクションを持つ気持ちよさがわかってくると、洗濯も楽になって、仕事に集中できるようになったのは仕事が趣味の私にはうれしい変化です(笑)。

「整理収納アドバイザーの講座を受けて人生が変わりました」-安藤秀通

安藤秀通 整理収納アドバイザー

―ご自宅で一番のお気に入りのスペースはどこですか?

能登屋 カフェの厨房っぽいテイストのキッチンですね。リノベーションした際にリビングを広く取りたくて考えた配置なんですが、ここで暮らす私たちにもお客さんにも必ず目に入る場所だからこそ、キッチンにはお金をかけようと決めました。キッチン用品など、モノは少ないほうではないけど、厳選して、合わないモノは削ぎ落として。最終的に行き着いたブラックとシルバー系のツールで色を統一したら、バラついて見えないことに気付きました。〝見せる収納〞だからキレイに保とうという発想もありますね。見せてやる気が出るタイプなので。

安藤 今でこそ植物に囲まれてますが、以前は植物はお世話が大変だろうと敬遠する派でした。それは心に余裕がなかったんだなって。整理収納アドバイザーの講座を受けてから2カ月間、毎日空いてる時間を〝整理〞に充てたんです。そこで自分の部屋が好きなモノと必要なモノだけになる感覚に初めて辿り着いてすごくスッキリしたんですけど、そのとき1〜2個だけあった植物がすごく癒しになっていることに気付いて。それから植物がどんどん増えていくんですが(笑)、これはまさに〝心の余白〞ができて気付いたこと。ほかにもパートナーと映画を観てるときとか、ふとした瞬間に〝こんなホッとする時間、前はなかったな〞って。「今度家のここをこうしたいね」と会話が弾んで、忙しくて毎日が楽しいですね。

―訪問サポートなどのお客さんで一番多い悩みはなんですか?

能登屋 モノの住所が決められない人が多いですね。家はオシャレな感じの人が多くて、雑貨もかわいいのが置いてあったりするけど、整理して収納する片付けができない人が多いかもしれない。

安藤 そうそう。おうち自体はオシャレでなんとなく収まってはいるんだけど、引き出しの中がぐちゃぐちゃだったり、ぎゅうぎゅうに詰まっていたり。子供が自分で元の場所に戻せないとか、家族が管理してくれないケースも多かったりします。あとは、モノを捨てられないお悩みが多いですね。

―暮らしを変えるためにすぐにできることはありますか?

安藤 電子レンジで何かを温める間など、ちょっとした時間に細かい掃除をやっておくと掃除時間の大きな時短になるんですよ。それで空いた時間に読書したり、インスタグラムを見る自分時間にしたり、パートナーと話したりする家族時間に充てています。まずひとつアクションを起こしてくれれば、それだけで変わると思ってます。例えば毎日下駄箱から靴を出すときにモヤモヤしてるなら、どこが使いづらいのかを探るとか。そういうアクションを起こしてみると、自分で解決できるかもしれないし、やっぱりできないってなるかもしれない。でもやらないでモヤモヤを放置するより、やって失敗したほうが絶対いいですよね。

能登屋 私がアドバイスするなら、まずは「自分の家の写真を撮る」。お客さんにも「片付けないでありのままの状態の写真を撮って送ってください」ってお願いしていますね。〝どこが使いづらいのかを探る〞もそうですけど、まずは自分で気付くことが大事な一歩だと思うので。

photo : Bunpei Kimura text & edit : Mana Takemura

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