ドリップで淹れる喫茶店へ。【Nel Drip】
ハンドドリップと一口にいっても、フィルターやドリッパーなど道具の選び方、ドリップの仕方はさまざま。マスターそれぞれの信条が見えてくる。
ぐすたふ珈琲[ 江古田 ]
豆の個性を引き出す、フィルター、挽き方、一雫のスピード。
ぽたぽたと点滴が垂れるように、ゆっくり、じっくりコーヒーが落ちていく。〈ぐすたふ珈琲〉店主の茅根和司さんは、日本伝統のネルドリップの灯火を絶やさないようにと、喫茶店で働き始めた。「ネルドリップで淹れるコーヒーは、トロッとした舌触り、まったりとした飲み心地が魅力です」と茅根さん。〈ホテルニューオータニ〉の〈かふぇ ぺしゃわーる〉などで研鑽を積み、2017年に自身の店を開いた。
「ネルドリップにこだわるマスターは、オリジナルのフィルターを使う方が多いはず」と話す茅根さん自身もネルフィルターを製作。「厚さが違えば透過するスピードが変わり、深さや形が違えば蒸れ方が変わります」。自家焙煎する豆は手製の4枚縫い、開店当初から人気を集めるエイジングコーヒーは3枚縫いと、使い分けているそうだ。「私が作っている4枚縫いは、すっきりとした味に仕上がります。豆のキャラクターが出やすいので、シングルオリジンにも向いていますね。個性を活かすという意味では、喫茶店には珍しくフラット刃タイプのグラインダーを使っています」
茅根さんが今、特に研究しているのはマンデリンコーヒー。「土っぽさや枯れた葉のような感じに、苦味、コク、甘味がバランスよく加わった、王道のマンデリンを目指しています。そこにスペシャルティらしいチェリー感があるといいですね」
珈琲かたの[住吉 ]
甘みと深みを出す焙煎とドリップ。
店主の片野行介さんは、焙煎を続けて30年。味わいは素材と加熱で決まるという信念から、内部まで均一に焙煎し、良い成分だけを濾し取りドリップ。独占契約の「スマトラダーク」は、欠点豆や含水率を農家へ詳細に指定。薄手のネルで、さらにクリアに。焙煎中、抽出中は通話不可。
但馬屋珈琲店 本店 [新宿]
丸みを持たせるネルの力で深煎りコーヒーをより深く。
1964年の喫茶創業からこの地で営み、店内の焙煎室で焼いた深煎りコーヒーが愛されてきた。厚手のネルでゆっくり抽出することで、よりディープな味わいになるという。定番の特撰ブレンドは、スモーキーな味わいにほのかな苦味があり、まろやか。