より良い都市の未来のために。 誰もが暮らしやすく、主人公になれる街を目指して。渋谷区が行っていることって?
“ちがいをちからに変える街”を基本構想として掲げる渋谷区は、あらゆる多様性を受け入れ、区に集まるすべての人々の“ちから”を街の原動力とするためにさまざまな取り組みを行っている。福祉や教育、まちづくりの面で、注目のプロジェクトに携わる人々に想いを聞いた。
誰もが参加できる共創プロジェクトを目指す「シブヤフォント」
「私たちは、“誰もが主人公になれる街、シブヤ”を目指して活動しています。シブヤフォントは、渋谷で暮らし、働く障がいのある人の描いた文字や絵を、デザイン専門学校の学生が共創しながら一つ一つ作者と作品の個性を生かしたフォントやパターンにデザインした、渋谷区公認のパブリックデータです。多くの人に渋谷を好きになってほしい、そして障がいのある人の活動を地域の人たちにもっと知ってほしいという願いを託して、さまざまなモノやコトに活用しています。企業とのコラボでオリジナル商品が生まれたり、区職員の名刺や区庁舎の内装、工事現場の仮囲いなどにも使われ、渋谷の街中のあちらこちらでシブヤフォントを目にすることができます。そして売り上げの一部は、区内の障がい者支援事業所に還元しています。シブヤフォントのデータは、ホームページからダウンロード可能で、企業も個人も誰でも使用できるので、ぜひご活用ください。この共創プロジェクトに関わる人たちがさらに増えて、シブヤフォントが私たちみんなの日常生活にどんどん浸透していってくれたらうれしいです」。
<プロフィール>
ライラ・カセムさん(一般社団法人シブヤフォント、アートディレクター)
デザイナー、東京大学「共生のための国際哲学研究センター」上廣共生哲学講座特任研究員。専門性を活かしアートや協働制作を中心としたプロジェクトを運営する。
子どもの第三の居場所となる「みらいの図書室」
「渋谷区では、『渋谷未来デザイン』というオープン型のイノベーションプラットフォームを通して、企業、区、大学、区民も参加した産官学民連携で共創型のまちづくりに取り組んでいます。ダイバーシティ&インクルージョン事業、子育て・教育事業、サステナブル事業、スマートシティ事業、公民空間NEXT事業、市民共創議場の8つを軸に、“創造文化都市”としての渋谷のまちづくりを目指し、多彩なプロジェクトを生み出しています。最近は、子どもたちのための居場所づくりにも積極的です。『みらいの図書室』は学校でも家でもない、こどもたちが安心して過ごせる第三の居場所。さまざまな環境の子どもたちが集まり、放課後の宿題サポートやデジタルツールを活用したクリエイティブプログラム、SDGs視点の実験や学習などが体験できます。また、妊娠、出産から就学まで多様な子育ての悩みをサポートしてくれる『渋谷区子育てネウボラ』や、渋谷区全体をプレイグラウンドと捉えて、区内のさまざまな場所でスポーツを体験できるような事業も構想中です」。
<プロフィール>
小泉秀樹さん(一般社団法人渋谷未来デザイン 代表理事)
東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻教授。専門は都市計画、コミュニティデザイン、共創まちづくり。著書に『コミュニティ・デザイン学』(編著、東京大学出版会)など。
スポーツを通じて多様性について考える「パラスポーツ事業」
「東京2020パラリンピックを通して、私自身たくさんのことを学びました。1964年の東京大会が、渋谷区にとって施設や街の整備などのハード面におけるまちづくりを活性化したとしたら、今回の大会は、人々の心や考え方に支えられ、ソフト面をアップデートしたと思います。ホストシティとして渋谷区にも世界中からたくさんの人々が訪れ、地域を巻き込んで活発なコミュニケーションが生まれました。中でも私が目を見張ったのは、子どもたちの姿です。パラバドミントンの大会を観戦した子どもたちは、選手たちがプレイする姿を見て、かっこいい!楽しい! という感情をストレートに表現していました。その感性に、大いに勇気づけられ、引っ張ってもらいました。彼らには、大人がとらわれがちなステレオタイプがないのだと気づかされたんです。一般的に考えられている上(大人・教師)から下(子ども・生徒)への教育ではなく、子どもから大人に伝播していく“リバースエデュケーション”がパラスポーツを通してすでに実践されていると感じます。大人も子どもも主体となり、一丸となった感性が、未来の渋谷を作っていくのだと思います」。
<プロフィール>
大日方邦子さん(日本パラリンピアンズ協会 会長)
3歳の時に交通事故により負傷。高校2年生よりチェアスキーヤーとして歩み始める。渋谷区の教育委員、渋谷未来デザインのフューチャーデザイナーなども務める。
渋谷区制施行90周年記念特設サイト『渋谷区のちから。』
これまでの区の施策、歴史や文化の振り返りに加え、100周年を見据えたこれからの渋谷区を展望する記念誌が配布中。特設サイトでは、電子版を無料でダウンロード可能。