語り出したら止まらない!私の最愛料理本。
アナウンサー・宇賀なつみ
料理好きなら誰もが持っている“バイブル”的な存在を聞きました。レシピに刻まれた思い出の理由とともに語られた、その“推し”の理由とは?
MY BEST COOKBOOK:『 ごちそうさまが、ききたくて。─家族の好きないつものごはん 140選 』栗原はるみ
料理の原体験と家族の思い出が凝縮された一冊。今、自分が作る料理のルーツもここに。
1992年に発売され、ミリオンセラーを記録した名著は宇賀なつみさんにとって家族の思い出そのもの。「幼い頃、我が家の食卓に並ぶ料理の多くは、この本からだったと記憶しています。特に週末、テレビを消して、家族そろってゆっくり会話をしながら食事をとる時間には、いつも栗原さんのレシピがありました。今もお正月に実家に帰ると、必ずこの本のレシピのひとつ、“牛たたきの野菜巻き”が出てきます」
中学生の頃、初めてひとりでキッチンに立ち、作った料理もまたこの本の「ひじきご飯」だったそう。「あまり上手にできなかったことも含めて、覚えています。作れたものの、母の方がおいしいなっていう完成度で。今振り返ると、中学生にしては渋すぎるチョイスですよね〜」
そう言って、ケタケタと笑った。現在、本は手元にはないというが、その理由は自身の舌と脳の隅々まで、レシピが染み込んでいるから。「毎年作る夏野菜の揚げ浸しを筆頭に、今でもハンバーグはひと口サイズで作るし、豚肉なら梅干し、じゃこならピーマンと反射的に頭に浮かぶ組み合わせも、すべてこの本がルーツ。久しぶりに手に取ってみると、改めてそれを実感しますね」
いわゆる料理の基礎を教える本ではない点にも惹かれるという。「私、ずっとグラタンはじゃがいもと長ネギ入りの食べ物だと思っていたんです。この本ではそうだったので。だから、初めて外で食べた時に、玉ネギや鶏肉、マッシュルームが入っている方がベーシックだと知って驚いて。でも、そういった固定観念にとらわれないレシピがたくさん提案されているのも、惹かれる理由かもしれません」
彼女にとって、料理は家事の中で唯一、好きな作業。「作り出す楽しさ、自分で好きに設計できる自由さが料理にはある。レシピ通り作らなくたって、“最後においしければいいじゃん”って思える余白があるのもいいんでしょうね。そしてたぶん、栗原さんの本にも同じにおいを感じていて。“ほどよくゆるく、肩の力を抜いて作ればいいのよ”って言ってくれている気がするんです」
MY FAVORITE RECIPE
帰り際、「急に冷え込んできたし、帰ったら久しぶりにグラタンを作ってみようと思います」とスタジオを後にした宇賀さん。後日、送られてきたのが下の写真だ。「ネギが大きめで、見た目は美しくないかもしれません!(笑) でも、味は変わらずおいしかったです」というメッセージが添えられていた。