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まだ見ぬパン屋さんへ。 ディープなパンに出会える街。目黒〈les joues de BéBé〉&白金〈Boulangerie Franz〉/池田浩明のまだ見ぬパン屋さんへ。
パンラボ・池田浩明さんによる、Hanako本誌連載「まだ見ぬパン屋さんへ。」からお届け。今回は、意外にも渋谷、恵比寿よりパン屋さんが少ない街だったが、新店舗が相次いでオープンし、パン好き御用達の街に変貌。白金へ足をのばせば、マニア心をくすぐるディープなパンに会える2軒を紹介します。
1. 目黒〈les joues de BéBé〉焼きたてのパンとコーヒーで、理想の朝が迎えられる場所。
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権之助坂の近くに今年7月にオープンした〈les jouesde BéBé〉は、薄暗い中に円形の陳列台。そこに輝くようなパン。国産小麦、高加水の生地。料理的な具材を盛りつけたり、カレーパンやメロンパンのようなおなじみのパンもイノベーションされて。
母体となった〈大衆ビストロジル〉の小林 周(まこと)シェフは、視察に訪れた福岡で出会った人気店〈パンストック〉の印象を興奮気味に語る。「びっくりしました。パンであんなに人を魅了するって。参考にさせてもらい、うちらしいパンに落としこんだ。僕はフレンチ出身。フレンチの技術で、新しいパンを作りたい」。
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「スパイシーラムとパクチーのサンド」は、仔羊肉にやさしく火入れしたパティの、血を思わせるような激しい香りに、北海道産全粒粉のやさしい深みが応える。

「ピスタチオクリームパン」のカスタードは徹底的になめらかで、北海道産小麦を使った高加水の生地もろとも、水風船が割れたように一気にあふれ、甘い液体を湧きださせる。
選り抜きの食材を使い、パン職人の粕谷裕彰(かすやひろあき)さんとコラボ、試作に妥協はない。
新感覚のぷよぷよ塩パン「パン・ド・ベベ」には、小林さんが「世界一おいしい」と語るパール塩をトッピング。塩味がやさしく、旨味がじわじわ伸びてくる。塩の量をめぐって何度となくテストした。
「ひとつまみもないぐらい。試作するたび、もっともっと少なく。生地に力があるので微量でいい」
おいしいパンとおいしい具材の出会いが、日々繰り返される。
〈les joues de BéBé〉について
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〈les joues de BéBé〉/レ ジュド べべ
住所:東京都目黒区目黒1-3-15 リードシー目黒ウェストビル1F │地図
TEL:050-5589-5122
営業時間:8:00〜22:00
定休日:不定休
高加水パンを、〈大衆ビストロジル〉で培ったフレンチの技術でおいしく。
2. 白金〈Boulangerie Franz〉鬼才シェフが放つ、クリエーションの数々。

第一線のフレンチ料理人がパン屋を開店したら? 福田祐三(ふくだゆうぞう)シェフは、画家が絵筆を握るように、自由な想像力でパンを描きだす。彼の持つパレットに絞り出されているのはとびきり鮮やかな季節の色彩だ。
旅で出会った食材はやがて、巡りきた旬にパンとなる。9月は題して「muscat festival」。山梨県・勝沼の〈朝日園〉から届いた大粒のシャインマスカット。それを、ピエモンテのオッチェリバターたっぷりの食パンに、原価が心配になるほどどんどんのせる。清らかな食パンの内側で弾けるマスカットの滴りは「シャイン」という言葉にたがわず光り輝く。
ライ麦パンには、〈朝日園〉に福田シェフが3度通って、やっと送ってもらえることになった、ドライにしたシャインマスカット。レーズンパンがこんなに贅沢でいいのか? マスカットの香りの高まりと、小麦の高まり、両者は同じひとつの頂きで邂逅、感動的な結合を遂げる。

毎日が新作だらけ、商品数はごくわずか。パン屋の常識を超越した店だが、福田さんは意に介さない。
「正解なんて誰が決めるものでもないじゃないですか。自分がおいしいと思ったパンを出せばいい」
クリエーションが今日も生まれる。
〈Boulangerie Franz〉について
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〈Boulangerie Franz〉/ブーランジェリー フランツ
住所:東京都港区白金5-10-11│地図
営業時間:12:00〜売り切れ次第終了
定休日:月〜木曜日
人気レストラン〈FRANZ〉の福田祐三シェフが昨年11月オープン。同店の呼び物、カンパーニュが中心。通販可。
Navigator…池田浩明(いけだ・ひろあき)
「パンラボ」を主宰しながら、ブレッドギークとして、日本全国のパン屋さんを巡り情報を発信する。いち早く国産小麦にも注目し、日本のパンの未来をみつめる。
■パンラボblog:panlabo.jugem.jp