ホップやハーブ、アガベなどを加えた”新ジャンルの日本酒”と出合いました。 日本酒の概念を覆す「クラフトサケ」って? 新進気鋭の酒蔵が集うイベント『若手の夜明け』からPick up!
日本酒界の未来を担う若手や、新進気鋭の酒蔵が24都道府県から大集合した日本酒&クラフトサケの試飲し放題イベント『若手の夜明け-sake jump- 』。9月中旬に東京・大手町で行われた同イベントに参加しいろいろと試飲するなかで、特に気になった酒蔵さんを紹介します!
24都道府県から酒蔵41軒が大集合!
今年で15年目を迎えた日本酒イベント『若手の夜明け-sake jump-』。その目的は日本酒のある風景や食卓が日常となるよう、幅広い世代に広めていくこと。日本酒フリークから普段あまり呑まない人まで、新進気鋭の酒蔵の自信作を、2時間何度でも試飲できるスタイルであれこれとトライできます。
会場には北海道から九州まで41の酒蔵と、11の酒販店が。入場する際にもらえるオリジナルのお猪口を片手に、気になる酒蔵のブースを巡ってきました。
クラフトサケとは何ぞや?
さあ、どの酒蔵を試してみよう? 筆者が迷っているとイベントスタッフさんが教えてくれました。
「今回の酒蔵さんをざっくり2つに分けると、『清酒』を扱う伝統的な酒蔵と、米を原料としながら、ルールに縛られない自由で多様な新ジャンルの『クラフトサケ』を扱う酒蔵があります」と。
実は現在の日本では「日本酒の醸造免許」が新規では発行されておらず、新たに醸造所を立ち上げるのは困難という事情があります。
そこで編み出されたのが「新ジャンルの日本酒」ともいえるクラフトサケ。清酒をつくる工程で出現する「どぶろく」のアルコールに、ハーブやホップなどを加えて、オリジナリティのある酒を販売するようになったのです(ちなみに酒税法では、クラフトサケは清酒ではなく「その他醸造酒」のカテゴリーに分類されます)。
「クラフトサケは米をベースに、フルーツやハーブなどの副原料によって変化する香りや味わいを楽しめるのが魅力です。日本酒とほとんど同じ造り方ではあるけれど日本酒ではない、だからクラフトサケという呼ばれ方をしているんです」(イベントスタッフさん)
いま日本各地で、日本酒の伝統や概念をふまえたうえで、新しいチャレンジをする酒蔵が次々と生まれているのだそう。それらの自信作をこのイベントで初めて知ることができたのは、大収穫でした。
〈稲とアガベ〉:テキーラの原料「アガベ」を加えた個性的なクラフトサケ。
さてさて前置きが長くなりましたが、今回気になった酒蔵をいくつか紹介します。
〈稲とアガベ〉は、2021年9月に秋田県男鹿市に新しくできた醸造所。テキーラの原料であるアガベからとれるシロップを添加したクラフトサケ「稲とアガベ 06 改良信交 2021」をいただきました。
「口当たりには瑞々しさがあり、フレッシュ。軽やかでクリアな飲み口に、ややスッキリとしたスマートなジューシー感。ライチや洋ナシのような果実感にほろ苦さがアクセント」(公式HPより)。
そのほか「CRAFT series 稲とコウジ 04 ササニシキ」もいただきました。こちらはジューシーでシャープな味わい、バランスのよい酸味で、スッキリ飲みやすかったです。
〈阿部酒造〉:数多くの酒職人を輩出してきた、“古くて新しい”酒蔵。
ここで修業したのち、卒業して新酒蔵を立ち上げる職人が多いことでも知られる〈阿部酒造〉。1804年から続く新潟県柏崎市の酒蔵です。「発酵を楽しむ」ことを大切に、手間暇を惜しまず、つくりたいものを楽しみながらつくることを目指しています。
「VEGA」は低アルコールで、甘みと酸味のバランスがとれた日本酒初心者にぴったりのお酒。ワイングラスで呑むのがオススメだそう!
〈haccoba - Craft Sake Brewery-〉:焙煎したり、ゴキブリの卵鞘を使ったり⁉ 自由な酒づくりで斬新なクラフトサケを発明。
そんな〈阿部酒造〉から巣立った酒職人から生まれたブランドを2軒ご紹介します。
まずは、酒造りが免許制になる明治時代以前の「自由な酒づくり」こそが、発酵文化の源流であると考え、ジャンルを超越した酒づくりを追求する〈haccoba - Craft Sake Brewery-〉。
公式HPをのぞくと、名前を見ただけでおいしそう……とそそられる「おこめとぶどうとホップと」や「おこめとカカオのスタウト」、はたまた思わずギョッとしてしまうゴキブリの卵鞘(らんしょう)を使った「卵鞘酒 -Good Old Koji Idea-」など……バラエティに富んだラインアップが魅力的です。
〈WAKAZE〉:フランスと日本の2拠点展開。赤ワインの樽で熟成したSAKEもデビュー。
続いては「日本酒を世界酒に」を目標に、日本とフランスに酒蔵を構える〈WAKAZE〉。伝統的な手法を用いながら革新的で「誰も飲んだことのないSAKE」をワールドワイドに発信しています。
かつての修業先〈阿部酒造〉と、そこの同窓生である〈WAKAZE〉〈haccoba - Craft Sake Brewery-〉〈LIBROM CRAFT SAKE BREWERY〉によるコラボレーションプロジェクトから生まれた「僕たちの酒 SHOYA IMAI」がイチオシ。各酒蔵が同じお米を使ってそれぞれの持ち味をいかしたお酒を生み出しました。
その〈WAKAZE〉バージョンはなんと、赤ワインのピノ・ノワール用の樽にいれてフランスで熟成させたもの! 樽の香りとぶどうの風味を感じる唯一無二のクラフトサケを堪能できます。
〈UGO〉:水のようにスイスイ飲めて、日常的に愛せる酒を。
最後に紹介するのは……クラフトサケではなく日本酒の若手ブランド〈UGO〉。1875年に広島県呉市で創業した〈相原酒造〉から生まれました。全国的に展開する清酒「雨後(うご)の月」とは差別化しているそう。
「ひと口目のインパクトが強すぎるお酒は、ともすれば料理に勝ちすぎたり、一杯空くころには飲み疲れてしまうもの。しかし『UGO AURORA』は、水のテクスチャを最大限にいかした透明感のある飲み心地で、最初の印象は地味でも料理の名脇役としてスイスイ呑み進められます。気づけば一杯空けているような、さりげなさが特徴です」(酒蔵スタッフさん)
仕込み水を使ったサイダーや、麹甘酒クラフトコーラも発見。
イベント会場には、日本酒の仕込み水を使った「酒蔵サイダー」や、麹甘酒と自然由来の素材でつくったクラフトコーラ「kuracola」のほか、イベントに参加した酒蔵のロゴマークをあしらった「Anything コラボ前掛け」などのオリジナルグッズも販売されていました。
これまで日本酒は敷居が高いなと思っていた人も、個性あふれるクラフトサケならより気軽にトライできるはず。秋の夜長に、一杯試してみては?
『若手の夜明け-sake jump- 』
■公式Instagram
※2022年のイベントはすでに終了