優しい気持ちを作る、理想の部屋づくり。 郊外に移住した人。神奈川県三浦市|〈按田餃子〉店主・按田優子『世間の物差しからずっと遠くへ。』
この数年の社会の変化を経て、都会に遠すぎない、“郊外”での生活を選ぶ人が増えている。そこで実現したライフスタイル、部屋づくりをレポート。今回は、〈按田餃子〉店主・按田優子さんのお部屋をご紹介します。
料理家であり、人気店〈按田餃子〉の経営者でもある按田優子さん。昨年、神奈川県三浦市にアパートと畑を借り、都内の自宅との二拠点生活をパートナーとスタートさせた。
住宅街を抜けた坂の上。気持ちよく視界が開けた南国風のアパートが、按田さんのセカンドハウス。1週間のうち、半分はここで過ごす。「都内に通える距離にもうひとつ家があったらいいなと思って、場所を決めずになんとなく探していたんです。ネットでこの部屋を見つけて『これは!』と思って翌日見に行き、即決。そこからとんとん拍子でした」部屋は70 m2 ほどの2LDK。玄関を入ると20畳以上のリビング&キッチンが広がり、3面ある窓から光と風が循環する。晴れた日は富士山を拝めるおまけ付きで、家賃がなんと6万円!
築50年以上の古い物件ではあるが、自由にDIYできるところも決め手になったという。「あるものを変身させたり、拾いものを生かすのが好き」と話す按田さん。壁を一部だけ塗ったり、ふたつの棚の上に天板を置いてキッチンの作業台を作ったり。近所の海で拾った石を飾り、得意の手芸でカーテンやテーブルクロスもこしらえる。インテリアの随所に創意と自作が光り、さらには引っ越しを機に揃えた家具や家電、道具類は、地元のリサイクルショップ、その名も〈爆安屋〉で「笑っちゃうほど安く」手に入れたものが大半とか。
ヨーロピアン調の小さな机やレトロな椅子の数々、大きな籐のかごなど、とても安価とは思えないユニークで佇まいのいいものたちが、風通しのいい空間でいきいきしているように見える。「今はネットで何でも買えるけど、それじゃつまらないなと。拾いものもそうですが、偶然の出合いを大事にしているので、リサイクルショップの『何が買えるかわからない面白さ』がたまらないんです」按田さんは決して「節約重視」なのではない。作業台の天板は家具職人の特注品だし、譲り受けた輪島塗の漆器はしっかりお金をかけて塗り直し、100円で買った器と同じようにヘビーユースしている。
「家や暮らしは評価してもらうものじゃない。自分が良ければいい」というのが按田さんの考え。だから、映えや世間の物差しにとらわれない。好みが近いというパートナーと、気に入ったインテリアを心おきなく楽しみ、心地よい空間づくりを進めている。二拠点生活を始めて約1年。仕事をある程度手放し、時間と心に余裕が生まれたのが一番の収穫という。タイムスケジュールで慌ただしく動く東京と比べ、生活スタイルも思考回路もまったく違うと、按田さん。「晴れたら浜辺を散歩したり畑で作業したり、雨や強風の日はミシンで何か縫ったり読書したり。自然に合わせながら、やりたいことしかしていないから楽しくて(笑)。ここで見つけたものを仕事につなげたら、また面白い展開になりそうです」
〈爆安屋 三浦店〉
■神奈川県三浦市初声町下宮田2776-1
■0120-919-608
■10:00~19:00 無休
【DATA & PROFILE】
【PROFILE】
あんだ・ゆうこ/東京・代々木上原と二子玉川の〈按田餃子〉を共同経営し、雑誌などでレシピ提案やエッセイも執筆する。現在、三浦の食材を使った新メニューを考案中。
【DATA】
■人数:2人暮らし
■所在地:神奈川県三浦市 駅からバスで8分
■築年数:54年
■居住歴:1年