「好き」が一番の原動力。その道のプロに聞く。 初めての『女子プロレス』の楽しみ方&観戦ポイントは?【初級編】

LEARN 2022.03.19

パフォーマンスの高さと強烈なキャラクターで多くのファンの心を掴む、女子プロレス。“勝ち負けだけではない、奥深さがある”と話す女子プロレス好きの長田杏奈さんに、ほかのスポーツにはない圧倒的な魅力、初心者も楽しめる観戦ポイントや見どころを聞きました。今回は初級編をご紹介します。

個性も怒りも爆発させた、輝く女性に勇気づけられる。

女子プロレス

数年前、ライターの雨宮まみさんに勧められたのが、女子プロレスでした。最初はあまりピンとこなかったのですが、『1985年のクラッシュ・ギャルズ』を読んでみてと。そしたら、“なんてすごい世界があるんだ”と衝撃を受けたんです。そこで描かれていたのは「クラッシュ・ギャルズ」として一世を風靡した長与千種さん、ライオネス飛鳥さんの二人の半生。特に長与さんの人生は壮絶です。

思春期に、家庭にも学校にも居場所がなく、早く自立したいと中学卒業後に女子プロレスの世界へ。そこでセルフプロデュースし、自身の“報われなさ”を克服して、人気レスラーに。多感な時期に辛い体験をした人は自暴自棄になってもおかしくなさそうなのに、彼女はそうじゃなかった。プロレスにはこういった選手が光り輝ける場所があって、一人一人の物語がたくさん詰まっている。ただ殴ったり、蹴ったりするのではなく、リングで生き様を見せてくれるんだって感じたんです。

ここには多様な価値観があります。大きい選手はもちろん有利ですが、小さい選手だって柔軟性や俊敏さを生かして勝つことができるし、新人選手は初々しいファイトで観客を夢中にさせ、ベテラン選手は言葉やパフォーマンスで惹きつけます。一人一人、個性を生かして必殺技やコスチュームを考え、キャラクターを確立し、勝負する。みんな自己表現を極めて、キラキラしていてかっこいいんです。女子プロは、いわば手作りのセルフプロデュース力に長けた人たちが集まる場所。“若くて細い=美しい”と狭まりがちな美容の世界に長く携わっている私にとって、とても勇気づけられる光景でした。

初めて試合を見た後、私は心地よい気だるさに包まれました。女性が感情を爆発させて怒ったり、殴ったりする姿を目の当たりにしたからです。現実社会ではどんな理不尽なことがあっても、女性が怒りをむき出しにして殴ることはタブー視されますよね。でも、プロレスでは良しとされる。というか、むしろ歓迎される。やられたら、やり返すし、先輩も後輩も関係ありません。試合を見ているうちに、こちらもヒートアップして「やり返せ!」と声を出して盛り上がり、抑圧されていた自分を解放できる気がします。

プロレスでは相手の技を受け、お互いの良さを引き出した上で、勝敗を決めます。どんな試合をしたかが重要で、負けの美学というか、懸命に戦った敗者に光が当たる場合も。強い選手だけがスターではないんです。そして、全力を尽くして戦った後、クタクタになっているのに熱いマイクパフォーマンスでさらに盛り上げる。そういうところも魅力です。

いきなり試合を見るのは怖いなと思ったら、まずは関連本やドラマを見てみて、その魅力に触れてほしいです。そして、過去の試合を見たいと思ったら、ニコニコ動画やCSの専門チャンネル、YouTubeなどで観賞可能なので、ぜひチェックを!解説があるのでわかりやすいし、選手のキャラクターや人間関係が理解しやすい。試合後に「〈後楽園ホール〉で会おう」と次の対決が約束される場合も。ここからさらなるドラマが展開されていくので、目が離せなくなりますよ。

プロレス入門におすすめの3冊。〜伝説のレスラーが紡いできたそれぞれのストーリー。〜

女子プロレス

1.『1985年のクラッシュ・ギャルズ』著・柳澤健(文春文庫)
若き天才レスラー2人の友情と対立、懸命な姿を描く。

2.『井田真木子著作撰集』著・井田真木子(里山社)
代表作『プロレス少女伝説』をはじめとしたノンフィクション作家の主要作品を収録。

3.『1993年の女子プロレス』著・柳澤健(双葉社)
当事者たちの証言を交え、全日本女子プロレスの真実に迫る。

ドラマから入るのもアリ。

N e t fl i x シリーズ『 G L O W:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング』シーズン 1~ 3 独占配信中
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『GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング』崖っぷちの女性たちがゴージャス・レディとして輝き出す。
1980年代、南カリフォルニアと南ネバダを舞台に、女子プロレスの世界を描いたNetflixオリジナルドラマ。売れない女優・ルースをはじめ、プロレス未体験の女性たちが、女子レスラーとして夢を掴むため、チャンスに懸けるというストーリー。物語のモチーフは、アメリカに実在した女子プロレス団体。当時のヒットチャートをにぎわせた楽曲が盛りだくさん。

Teacher…ライター・長田杏奈(おさだ・あんな)

ライター・長田杏奈 (おさだ・あんな) さん

週刊誌の編集部などを経て、フリーランスとして独立。雑誌やWebで美容や女性を中心にインタビュー。著書に『美容は自尊心の筋トレ』(ele-kingbooks)など。

(Hanako1206号掲載photo : MEGUMI illustration : Manako Kuroneko text : Mariko Uramoto, Satoru Kanai, Ami Murasakino edit : Kana Umehara)

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