花井悠希の朝パン日誌 夜から朝を駆け抜ける!鳥取県智頭町〈タルマーリー〉のパンをテイクアウト
出会いというのは不意打ちだ。そんな当たり前の事を改めて感じずにはいられない出会いがありました。それはコンサートで訪れた兵庫県でのこと。小高い山の中腹にある素敵なコンサートホールへ伺ったときのことです。会場の素敵さにただでさえ浮き足立っていた私の前に現れたのは、鳥取の名店〈タルマーリー〉のパン。
なんだこれはーっ!!夜なことも忘れてうっかり大きな声が出てしまいそうなほど一口の衝撃がすごいです。パリパリ、バリバリと割れる表面は天ぷらみたいに空気をたっぷり含んで、口内にサクサクサクっを響かせます。そして間髪入れずにやってくるクミンのキリッと冴える香りと味のアクセントにのっけから心掴まれてしまいました。なんだこれは!?と二度見してしまいます。
パンの表面にまで及んでいるチーズの油分は底では揚げパンのようなカリカリを演出し、チーズ本体からは塩味とゴーダの香りがふくよかに膨れ上がり、もうとっくに心掴まれている私をゆすりにかかる。これ以上何する気よー!と警戒する気もないくせに抵抗する素振りを見せれば、引き締まった塩気と目眩くゴーダチーズの香りがより一層本領を発揮して、クミンと手を取りここにしかない複雑で深い味わいと香りを作り上げます。もう花井は囚われの身ですと田舎の母に伝えてください(帰ってこい)。
岡山県津山産の自家製粉の全粒粉は挽きたての新鮮な香りの良さが際立ちます。こちらは全粒粉酵母×ビール酵母とのこと。添えられた説明書きを読むと、パンの説明に始まり原材料や酵母は何を使っているかまでわかるので、より深く考察しながら自分の味覚と五感と情報処理能力を駆使していただきます。己が試されているようで嫌いじゃないです(むしろ燃える)。
オーガニックのマチュアチーズをのせブラックペッパーを振っていただきました。ガリっとしっかり強度のあるクラスト。大小様々な気泡が小麦の豊かで爽やかな香ばしさを運んできます。風に吹かれ小麦がたくましく揺れる姿が見えてくるよう。
マチュアチーズの強い味わいと香りにこの香ばしさが柔らかさを与えてくれます。ブラックペッパーのキリリとしたフックから続く後味の余韻は、生地の持つ穀物の風味に自然と溶け込んでいって、なんて相性がいいのでしょう。私グッジョブじゃないか!?
そして、おはようございます(唐突)!
夜だけにしたらもったいないと、後ろ髪をひかれながらも朝の分をちゃんと残しましたとも。朝にはバターとチョコレートピーナッツバターを合わせてみました。合わせてみるとびっくり。酸味が顔を出します。昨夜チーズとブラックペッパーで塩気を足した食べ方では気づきませんでしたが、甘いコクをプラスしてみると今度はこの生地の持つ酵母らしい酸味が現れてくるなんて!この子は一体何顔持っているんだい?
ちなみにこのチョコレートピーナッツバターもこだわりのアイテム。原材料は落花生と黒糖とカカオニブという余計なものは一つも入っていない千葉の〈HAPPY NUTS DAY〉さんと沖縄の〈TIMELESS CHOCOLATE〉さんのコラボのもの。ここに〈タルマーリー〉さんのパンとトリプルコラボの誕生です(←勝手に)。
これまたザクザクと応えてくれる大らかな生地で、バリンバリンと弾ける生地からはそよそよそよそよーと小麦のいい香り(擬音だらけ)。母なる大地のような包容力があります(大袈裟?)。こちらはレーズン酵母×ビール酵母で出来ているそう。私の知識では何がどう作用してこの包容力とほのかな酸味ともちもち感が現れているのかわからないけど、美味しいってことはわかる(←誰でもわかるわ)!そんな生地にオーガニックレーズンがたっぷりなので、大好きなバターを溶かしてレーズンバターの刑を執行しました。言わずもがな最高でありました。選んだバターも生乳と塩のみというシンプルで素材が活きたものを合わせて。何か一つこだわりのあるものを選ぶと、それに伴って色々な選択も変わっていくなぁと実感する瞬間でした。
小さな選択を積み重ねていく先は案外大きな選択へと繋がっているのかも。きっとここでしか作ることのできないこだわりのパンを食べながら、そんなことをぼんやり考えていたら気がつけば自分なりの哲学を探すような時間に。お店のフィロソフィに影響を受けまくった私でありました。とはいえ、なかなか行けないよーって思ったみなさん。安心してください。オンラインでパンセットを販売しているのを発見しました!いつかは豊かな里山のお店のカフェでイートインする事を夢見て…。
〈タルマーリー〉を届けてくださったお客様、ありがとうございました。
お知らせ!
私が所属する〈1966カルテット〉がデビュー以来、大切に演奏してきたビートルズにGET BACKして、ビートルズデビュー60周年にちなんだコンサートを4月2日に開催します!クラシカルな楽器でロックに聴くビートルズをぜひ楽しんでくださいね。
「《GET BACK》~1966カルテットがビートルズ60周年を勝手にお祝い~」
日時:2022年4月2日(土)
場所:としま区民センター多目的ホール
13時半開場、14時開演
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