伝えたかった、言葉たち。 山崎怜奈の「言葉のおすそわけ」第13回
アイドルとしてはもちろん、ラジオパーソナリティとしても大活躍。乃木坂46の山崎怜奈さんが、心にあたためていた小さな気づきや、覚えておきたいこと、ラジオでは伝えきれなかったエピソードなどを、自由に綴ります。
(photo : Chihiro Tagata styling : Chie Hosonuma hair&make : Yu Kuroda)
「頼るの練習中」
人を頼るのが苦手だった。厳密に言うと、今もあまり得意ではない。そういう悩みを言うと、大抵の場合「人のこと信じてないんでしょ」とものすごく寂しいことを言われてしまうし、そんなふうに思われてたんだ・・・と尚更傷つくので黙っていた。違う、真逆なのだ。私は、自分のことを信じられずにいるから、100%素の自分なんてお見せしていいものではないと思ってしまうのだ。その根底には、人から好かれたいという欲と、弱さをさらけ出すことで相手に負担をかけてしまうのではないかという懸念が混在している。最初から「甘える」という選択肢が手持ちのカードに無ければ、突き放されたり距離を取られたとしても痛い思いをせずに済むのではないだろうか、そんな理屈である。
自分の機嫌を自分で取れだなんて巷でよく聞くけれど、いざ実践しようとしてもそう簡単に上手くはいかない。好きなものを食べる、ゆっくり湯船に浸かる。それでも苦しさを処理しきれない事が増えてきた時、おそらく今必要なのは、自分でなんとかする強さではないような気がしてきた。例えば、もはや一人ではどうにもならなかったらそれが得意な人にお任せしたり、ネットで調べれば大体分かるようなことでもあえて尋ねてみたり。自信がないからこそ、人になんとかしてもらおうとする勇気が圧倒的に足りていないのだ。
とはいえ、他者の干渉を受け入れるにも気力体力が必要で、億劫になってしまう時もある。でも人に気持ちをもたれかけさせることは、「今回助けてもらったように、あなたがしんどいときは助けたいと思っているんです」という意思表示にもなるのではないだろうか。相手に甘えることが、相手を甘えさせてあげることにもなるならば、自分のよろしくない一面を見せるのも悪くはないな、とすんなり思えてしまった。誰かが自分を気にかけてくれている、受け止めてくれる、これ以上に励まされることはないだろう。
人になんとかしてもらおうとする勇気は、自分だけにメリットをもたらすような、独りよがりの勇気ではない。だから私は、すぐにひとりでどうにかしようとする癖を、少しずつ矯正していかなければならない。自分で自分をなだめて誤魔化すのではなく、それぞれが抱えた問題を分け合って、共に耐えようとする。どこにいようと「何をやるか」よりも「誰とやるか」を大切にしたいなら、弱さを隠さず、ゆるやかにもたれ合って生きていった方が良いのだろう。もちろん頼り過ぎは良くないけど、全ては持ちつ持たれつなのだから、人に頼り、優しさをお借りすることにいちいち罪悪感を持つ必要はない。
頼れるところは頼る。信じるところは信じる。そして最終的には何があっても全て自分の責任だと腹を括る。今はそれが、私に必要な強さであるような気がしている。