週末は新幹線に飛び乗って神戸で日本酒旅⁉ 日本一の“日本酒の聖地”に〈灘五郷酒所〉が今春OPEN!「50mのコの字カウンター」で26蔵の日本酒を飲み比べ。
日本酒ファンならば一度は訪れたい聖地といえば、兵庫県・神戸の海岸沿いに広がるエリア「灘五郷(なだごごう)」。「菊正宗」「白鶴」「剣菱」などこの地で生まれた日本酒の名を一度は耳にしたことのある人も多いのでは? 今年の4月下旬には全26蔵の日本酒飲み比べができる〈灘五郷酒所〉がオープン予定。呑んべぇにとっては天国のようなスポットであり、日本酒の伝統を世界に向けて発信・継承する舞台へひと足お先にお邪魔してきました!
全国で販売される日本酒の約25%が生まれる「灘五郷」。
「灘五郷」の日本酒がおいしい理由。それはミネラル豊富で良質な「六甲山の湧水」(宮水)、日本酒づくりに最適な酒米「山田錦」、蒸し米を冷やすのにうってつけの冷たく乾燥した風「六甲おろし」と、「水」「米」「風」の三拍子がそろった土地だから。
江戸時代には、酒の需要の8割を供給したといわれるほどで、現在も日本酒の生産量は日本一!
500余年の歴史を誇る「剣菱酒造」の元酒蔵を改装した〈灘五郷酒所〉。
〈灘五郷酒所〉の建物は、500余年の歴史を誇る「剣菱酒造」の元酒蔵。その歴史は古く、太平洋戦争の空襲により蔵が燃え落ち、もともと味噌蔵だったこの場所で同酒造の醸造を再開したのが昭和24年。平成7年には阪神淡路大震災で倒壊しましたが、その2年後に再興を果たし、令和元年まで醸造を続けてきました。
一歩足を踏み入れると、凛と澄み切った空気に背筋が伸びる感覚……。昔から変わらず息づいている“日本酒の神様”の存在を感じずにはいられません!
全長50mの「コの字カウンター」で、日本酒談義に花が咲く。
真っ先に目に飛び込んでくるのは、なんと全長50mの「コの字カウンター」。現在ギネス世界記録を申請中で、認められればさらに話題を呼びそうです。
こちらでは「灘五郷」が誇る全26蔵の日本酒飲み比べと、酒の肴にぴったりのお料理を楽しめます。今回は「灘五郷酒所セット」をいただきました。
「灘五郷」の日本酒は、国内では稀な宮水で仕込まれた力強くキレのある味わいが特徴。「灘五郷酒所セット」のトレーの上には、「灘五郷」を構成する「西郷」「御影郷」「魚崎郷」「西宮郷」「今津郷」の各エリアごとに、蔵元の酒が鎮座。飲み比べると、同じ「灘五郷」でつくられているのにそれぞれに異なる個性がありました。
「灘五郷」のお酒は日本全国のどんな料理にも合うといわれています。「灘五郷酒所セット」のテーマは「旬」「発酵」「相性」「地元」。神戸漁港の漁師さんから仕入れるなどした地元の食材を使い、日本酒がススムいい塩梅に仕上げています。料理監修は神戸の自然派料理店〈amasora〉の池尻彩子さん。
お酒&料理がのった素敵なトレーにも注目。麹造りの工程で使われる麹蓋に、地元で活躍するアーティスト・松本尚さんがオリジナルアートを彩ったここだけのアイテムです。
「ひねり餅体験」も!多彩なイベントでも日本酒文化を発信。
今後は日本一の酒処の魅力を世界に向けて発信するべく、各蔵による日本酒セミナーなども積極的に仕掛けていく予定。
たとえば酒蔵で蒸し米の状態を確認するために行う「ひねり餅」の体験や、京冷え、花冷え、人肌燗など温度ごとに広がる日本酒の味の幅を堪能するイベントなどなど。おいしく酔いながら、日本酒の知識を身につけられる絶好の機会です。
樽酒の魅力を伝える〈菊正宗 樽酒マイスターファクトリー〉。
「灘五郷」にある日本酒文化を学べるスポット〈菊正宗 樽酒マイスターファクトリー〉にも立ち寄ってきました。ご存知「菊正宗酒造」が運営する入館無料の“樽酒工房”。職人たちが樽づくりをする様子を間近で見学し、〈菊正宗〉が愛され続ける秘密を垣間見ることができます。
樽酒とは、江戸時代から愛されてきた香り高いお酒。木製の樽に入れて酒を寝かし、吉野杉の香りや成分を移すことでおいしさが深まるのです。江戸時代には、灘の酒が「樽廻船(たるかいせん)」に乗せられて江戸へと下り、「下り酒」として絶大な人気を誇っていました。
時代の流れとともに樽は安価な瓶(びん)にとって代わられるように。「菊正宗」は約半世紀前に「江戸時代から愛されてきた樽酒を家庭で手軽に楽しんでもらいたい」という想いで、「樽酒瓶詰(樽びん)」を発売。樽で寝かせ飲みごろになった樽酒を瓶につめるようになりました。
樽の組み立てには、なんと釘や接着剤は一切使われていないのだとか! 榑(くれ)をパズルのように円筒状へと組み合わせ、7本の箍(たが)だけで締め上げてつくられています。熟練の職人の技に見入ってしまいました。
後継者不足に直面……1505 年創業〈剣菱酒造〉の味を支える伝統的な「暖気樽」。
今回は特別に、赤穂浪士が討ち入りの前の出陣の祝いで飲んだとされる〈剣菱酒造〉の酒蔵見学も叶いました(残念ながら一般開放はしていません)。
自然の乳酸菌を使い約40日かけてじっくり自生酵母を育てるのが剣菱流。その時に欠かせないのが木製の暖気樽です。この中に熱湯を入れて酒母の入ったタンクに手作業で投入し、酒母を温めて「糖化」をすすめることで、酵母に「発酵」を促します。木肌を通じて温度を伝えることにより剣菱らしい風味が醸成されます。
ところが近年、この樽をつくり続けてきた職人さんが引退することに。唯一のお弟子さんがあとを継いだのですが、〈剣菱酒造〉は伝統の味を守るため、そのお弟子さんを社員として迎い入れました。さらに若い社員を彼に弟子入りさせ、後継者の育成にも励んでいるのだとか。
日本に3台しかないという、樽に巻く「藁縄」をつくる機械もこちらに。近年ではプラスチックのしめ縄を使う酒蔵が増えましたが、〈剣菱酒造〉は「うちが藁縄を続けることで、文化を守ろう」という心意気で、「藁縄」にこだわっています。
タータンチェックで想いを紡ぐホテル〈hotel it. osaka shinmachi〉。
「灘五郷」から車で走ること約25分、大阪市にある〈hotel it. osaka shinmachi〉がこの日の宿です。西長堀駅から徒歩約2分。世界で一つだけのオリジナル・タータンチェックが館内のいたるところに配されたお洒落なホテル!
受付階にはワーキングデスクやファニチャー、ウッドベンチがある「it.living」、その奥には「it.bar」やナチュラルフードの薪窯レストラン「it.oven」が。夜は薄暗い照明でとても落ち着きます。
ホワイトを基調にしたミニマルデザインの部屋にも、タータンチェックのファブリックがあしらわれていました。このオリジナルの柄には、ホテルの運営会社がもともと繊維問屋を営んでいたことから、まさに「糸を紡ぐように」時代や人を紡ぐホテルでありたいという願いが込められています。
ホテルの部屋では「菊正宗」と「剣菱」の土産を並べ、グラスでちびちびとたしなみながら、日本酒づくしだった一日の余韻にひたりました。〈灘五郷酒所〉のコの字カウンターで酔いしれるために、新幹線に飛び乗って新神戸駅を目指す週末もいいかもしれない。心踊る選択肢が増え、呑んべぇの一人として幸せに思います。
〈灘五郷酒所〉
■兵庫県神戸市灘区御影本町3-11-2
■2022年4月下旬オープン予定
■定休日:未定
■公式サイト
〈菊正宗 樽酒マイスターファクトリー〉
■兵庫県神戸市東灘区魚崎西町1-9-1(菊正宗酒造記念館隣接)
■078-277-3493
■見学時間:10:30、14:00、15:00(記念館休館日を除く毎日開催:所要時間約30分)
■定員:各回20名まで ※要予約
■入場無料
■公式サイト
〈hotel it. osaka shinmachi〉
■大阪府大阪市西区新町4-6-20
■チェックイン14:00〜、チェックアウト〜11:00
■宿泊料:8,000円
※料金は日にちによって変動する
■公式サイト