それぞれのやりがいや思いをインタビュー。 「宇宙まわり」で働く女性たち。/KIBO宇宙放送局 プロデューサー・南郷瑠碧子さん
一見、男性ばかりなのでは?という印象を持たれがちな宇宙業界。実は多くの女性たちが生き生きと活躍しているという。宇宙にまつわる仕事をしている方の、やりがいや思いとは?今回は、KIBO宇宙放送局 プロデューサー・南郷瑠碧子さんにお話を伺いました。
宇宙と地上を繋ぐ、楽しいプロジェクトを実現。
広告やマーケティングなど、いくつかの職種を経験したのちにプロジェクトデザインスタジオ〈バスキュール〉に所属した南郷瑠碧子さん。現在は、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」に開設した「KIBO宇宙放送局」のプロデューサーとして活躍している。
「JAXAにJ-SPARCという民間事業者とのパートナーシップがあると知り、宇宙で何かやりたい!と志願。初めはロケットにプロジェクションマッピングして……などと考えていましたが、想像以上にお金と時間がかかるんですよね。だから、物を打ち上げるのではなく、『きぼう』の中でできることから企画を考えるようになりました。宇宙に行ける人はまだまだ限られている中、宇宙から見える地球の姿を広く共有することで、“ここに住んでいる”ということを客観的に考えるきっかけになればなと」
「果てしなく広がる宇宙の魅力をみんなに届ける。」
2021年9月にはJ-SPARCのサポートから離れ、「KIBO宇宙放送局」を事業化。コストや工数にシビアになり、これまでは「宇宙でこんなことをしたらどうなるだろう?」と気軽に相談できていたことも、慎重に進めていかなくてはいけなくなったそう。
「宇宙での実験は、たった1つの行動に対しても綿密に手順を決めなくてはならなくて。フライトディレクタさんに『これじゃ時間が足りないですよ』と指摘されることもあり、遠隔で人に何かをお願いするって大変なことなんだなと実感しています。軌道が直前に変わることもあるし、計画を立てにくいというのが苦労するところですね」
宇宙のプロじゃないからこそ、柔軟な発想でワクワクするような企画を実現できることも。2021年末には年越しライブ配信を行い、宇宙でのカウントダウンや宇宙から見る初日の出を視聴者に届ける予定だ。
「私たちは自分に大きなミッションを課しているつもりはなくて。『こうなったらもっと楽しそうだな』という気持ちを原動力に働いています。実は、これまで宇宙飛行士との通信は音声がメインで、テレビ中継も音声しか届いていなかったんです。でも、私たちのシステムを使えば、タイムラグはあるけれどお互いの顔を見ながら会話ができる。つまり、スマホとインターネットさえあれば、宇宙にいる人と会話ができちゃうんです。自分の姿やメッセージが宇宙まで届くって考えると、胸にグッとくるものがありますよね。そういう体験をより多くの人に届けたいなと常に考えています」
企画を考える際の参考にしたり、宇宙ファンと繋がるきっかけにも。
南郷さんの仕事に欠かせない「#きぼうを見よう」というウェブサイトでは、国際宇宙ステーションの現在位置をARで確認できる。Twitterで全国の人々と「今見えました!」と共有し合うことも。
Profile…南郷瑠碧子(なんごう・るみこ)
宇宙と地上を双方向で繋げる「KIBO宇宙放送局」で、企画やキャスティング、時には番組出演まで幅広く担当。
【BIOGRAPHY】
メキシコ生まれ。中学までメキシコ育ち。高校だけ日本で進学し、大学からアメリカへ。
2005:東京糸井重里事務所に入社。Webページや商品などのデザインを手がける。
2012:国内クリエイティブエージェンシーへ転職し、デジタル広告やブランディングキャンペーンに携わる。2014外資系クリエイティブエージェンシーでプロジェクトマネージャーとして働く。
2016:バスキュールへ移り、デジタル領域、リアルイベントやIoTのUI / UXなどのプロジェクトを担当。
2020:「KIBO宇宙放送局」が開局。プロジェクトのプロデューサーとなる。