それぞれのやりがいや思いをインタビュー。 「宇宙まわり」で働く女性たち。/JAXA「きぼう」フライトディレクタ・関川知里さん
一見、男性ばかりなのでは?という印象を持たれがちな宇宙業界。実は多くの女性たちが生き生きと活躍しているという。宇宙にまつわる仕事をしている方の、やりがいや思いとは?今回は、JAXA「きぼう」フライトディレクタ・関川知里さんにお話を伺いました。
憧れていた宇宙の現場で業務を達成する喜びを実感。
宇宙飛行士と同様に“狭き門”だといわれるフライトディレクタに志願し、その目標を叶えた関川知里さん。難しい業務をこなす姿を見ているとかなり遠い存在のように感じてしまうが、関川さんが宇宙の仕事に興味を持つようになったきっかけは、意外と身近なものだった。
「子どもの頃から『美少女戦士セーラームーン』が大好きなんです。作品を通じて惑星の名前を覚えたし、今思えば、理学部に進学したのもセーラープルートの影響だったのかなって。劇場版の『かぐや姫の恋人』には宇宙飛行士のキャラクターとJAXAの前身である宇宙開発事業団に似た“宇宙開拓事業団”という組織が登場するのですが、それがJAXAという存在を意識するきっかけとなりました」
「チームをまとめて宇宙飛行士の仕事をサポート。」
管制室では、運用管制チームが24時間体制で国際宇宙ステーション内にある「きぼう」日本実験棟の運用をサポート。宇宙飛行士はもちろん、NASA管制室と通信することが多いため、英語力も欠かせない。「宇宙にいる方々と初めて会話した時は『自分の声が宇宙まで届いたんだ!』って胸が高鳴りました。国際宇宙ステーションはグリニッジ標準時を採用しているので、日本の夕方頃に宇宙飛行士たちが起きてきて、朝礼が始まります。それから5分刻みで計画された仕事が始まるのですが、そのために必要な手順書を作るのも私たちの仕事です。宇宙へ送る前にたくさんの人に確認してもらわなくてはならず、なかなか根気のいる業務ですね」
電力通信や船内環境の管理、宇宙飛行士との交信など、さまざまな専門分野の管制官を束ねるフライトディレクタは、オーケストラにたとえると指揮者のような存在。実験が予定通りに終わらなかったり、機器が壊れてしまったりと、不測の事態が起きた時もまわりの人々を率いて解決へと導いていく。
「難しい実験やトラブルをみんなで一丸となって乗り越えた時は、達成感と喜びを感じます。ここ数年で少しずつ民間企業の実験が増えてきていますが、宇宙での作業を実行するには安全性の確認なども含めて想像以上に時間がかかってしまい、スムーズに対応しきれない部分もあって……。でも、せっかく宇宙に関心を持つ方が増えているのだから、みなさんに私たちのやり方を理解してもらいつつ、JAXAのシステムをアップデートして、もっと効率的に宇宙の仕事を進められたらと思っています。より多くの人に宇宙に親しみを感じてもらえたらうれしいですね」
漫画や写真集、SF映画など宇宙を感じられる作品が好き。
【1】油井飛行士と大西飛行士の書籍は、宇宙船内の様子を知るための参考書に。
【2】幼い頃に手に入れた『美少女戦士セーラームーン』は今でも大切に愛読。仕事にはヘッドセットが欠かせない。
Profile…関川知里(せきがわ・ちさと)
大学院を修了後、JAXAに入社。現在は「きぼう」日本実験棟の運用管制室でフライトディレクタとして働く
【BIOGRAPHY】
2005:大学・大学院の理学部地球惑星科学科で隕石について学ぶ。
2011:JAXAに入社。種子島宇宙センターで設備のメンテナンスを担当する。
2014:筑波宇宙センターに移り、研究開発部門で衛星を宇宙に打ち上げるための試験や手続きをサポート。
2016:有人宇宙技術部門へ異動。「きぼう」日本実験棟の運用管制室チームを取りまとめるフライトディレクタを務める。