モネ、マティス、シャガールなど有名な画家の作品がずらり74点。 ポーラ美術館コレクション展『甘美なるフランス』が渋谷で開催中。

LEARN 2021.10.12

箱根仙石原にある〈ポーラ美術館〉のコレクションを展示するポーラ美術館コレクション展『甘美なるフランス』が渋谷〈Bunkamura ザ・ミュージアム〉で開催中です。19世紀後半から20世紀中頃までに活躍した画家28名の絵画をじっくり鑑賞してきました。

近代都市化するパリと印象派の画家たち。

会場は〈Bunkamura〉の地下1階です。
会場は〈Bunkamura〉の地下1階です。

箱根、仙石原の森に囲まれた〈ポーラ美術館〉は、西洋絵画、日本の洋画からガラス工芸、化粧道具など約10,000点のコレクションを持つ美術館です。

Photo:Yuya Furukawa
Photo:Yuya Furukawa

ポーラ美術館コレクション展『甘美なるフランス』では豊富なコレクションの中から19世紀後半から20世紀中頃までにフランスで活躍した画家28名の74点もの絵画を展示。同じ頃パリジェンヌたちが使った美しい化粧道具も展示されています。

左がクロード・モネの『睡蓮』(1907年)。
Photo:Yuya Furukawa
左がクロード・モネの『睡蓮』(1907年)。

Photo:Yuya Furukawa

展覧会は4つの章に分かれていて、印象派の作品が中心の第1章は「都市と自然」と名付けられています。印象派の巨匠モネの作品は6点の展示。1870年代の作品はパリに最初にできたサン・ラザール駅を描いた『サン=ラザール駅の線路』やパリから鉄道で15分ほどのセーヌ河畔の町アルジャントゥイユの風景を描いた『セーヌ河の支流からみたアルジャントゥイユ』が展示されています。

そしてモネといえば『睡蓮』。1890年代に50代でジヴェルニーという村に移り住み、池のある庭園を作って200点ほどの睡蓮の作品を残しました。そのうちの1点も展示されています。

ピエール・オーギュスト・ルノワールの『レースの帽子の少女』(1891年)。左にあるのは同時期の19世紀後半に作られた『エナメル金彩バラ文香水瓶』。
Photo:Yuya Furukawa
ピエール・オーギュスト・ルノワールの『レースの帽子の少女』(1891年)。左にあるのは同時期の19世紀後半に作られた『エナメル金彩バラ文香水瓶』。

Photo:Yuya Furukawa

ルノワールの『レースの帽子の少女』は、光沢あるドレスを纏った少女の夢見るような表情に惹きつけられます。ふさふさとした帽子が柔らかそう。ルノワールは肖像画家としても成功した画家で、表情豊かな人物を描いた作品など全部で8点が展示されています。

理想の表現を求めたポスト印象派。

Photo:Yuya Furukawa
Photo:Yuya Furukawa

第2章は「日常の輝き」というタイトル。セザンヌ、ゴッホといったポスト印象派と呼ばれる画家たちの作品が並びます。彼らは印象派の画家たちが開発した技法に影響を受けながら、それぞれが理想とする表現を目指して制作していました。

ナビ派と呼ばれるボナールの『地中海の庭』は、この展示室でひときわ大きな作品です。奥に見えるのは地中海で、その手前に棕櫚(シュロ)の木、そしてたくさんの黄色いミモザの花が描かれています。女性と子どもが手前に描かれて、地中海を臨むテラスの穏やかな空気が感じられます。この作品は第1次世界大戦中の1917年から18年に描かれたもので、ボナールは同時期に同じような構図の装飾画を数点描いたそうです。

これまでにない新しい表現を確立したマティスやピカソ。

アンリ・マティス『襟巻の女』(1936年)。
Photo:Yuya Furukawa
アンリ・マティス『襟巻の女』(1936年)。

Photo:Yuya Furukawa

そして第3章は「新しさを求めて」。マティスやデュフィらの「フォービズム(野獣派)」と呼ばれる強烈な色使いや、ピカソらが確立した「キュビズム」など新しい表現が生まれました。第2章の展示室とは、明らかに筆遣いや構図が違うことに気づきます。

ピカソと並ぶ20世紀の巨匠のひとり、マティス。『襟巻の女』は肘掛け椅子に座る女性が描かれています。表情は微笑んでいるようですが、私にはどこか挑戦的な感じがします。背景やスカートに使われている黒い格子がそう思わせるのでしょうか。

ラウル・デュフィ『パリ』(1937年)。
Photo:Yuya Furukawa
ラウル・デュフィ『パリ』(1937年)。

Photo:Yuya Furukawa

デュフィの『パリ』は色使いの鮮やかさが目を引きます。4つのパネルに朝から夜を描き分けて、エッフェル塔と薔薇も大胆に配置。都会的で軽やかなパリの空気を感じさせる作品だと思いました。

芸術の都、パリに世界から集まったエコール・ド・パリの人々。

左の2つがモーリス・ユトリロの作品。奥には28名中唯一女性のマリー・ローランサンの作品も。
Photo:Yuya Furukawa
左の2つがモーリス・ユトリロの作品。奥には28名中唯一女性のマリー・ローランサンの作品も。

Photo:Yuya Furukawa

第4章は「芸術の都」。新しい芸術を産んだパリには世界から若い画家たちが集まりました。シャガールやモディリアーニらはエコール・ド・パリと呼ばれて、モンマルトルやモンパルナスを活動拠点にしていました。

ユトリロはエコール・ド・パリでは珍しいフランス人。生まれ育ったモンマルトルの風景を多く描いています。『ラ・ベル・ガブリエル』という作品もそのひとつです。画面の左側に壁に何かを書いているのは画家自身で、思い人への気持ちを描いているそう。そう聞くと、画家に少し親近感を感じてしまいます。

Photo:Yuya Furukawa
Photo:Yuya Furukawa

外国からやってきたエコール・ド・パリの画家たちは、戦争によって翻弄された人もいました。ロシア(現ベラルーシ共和国)出身でユダヤ人のシャガールは、一時はアメリカに亡命。シャガールの描くファンタジックな世界の背景にはそんな経験もあったのかと思わされます。

19世紀後半に作られた『緑色ガラス化粧セット』。
Photo:Yuya Furukawa
19世紀後半に作られた『緑色ガラス化粧セット』。

Photo:Yuya Furukawa

作品には全て解説が添えられていて、画家や作品についてはもちろん、当時の社会背景まで含めて、じっくり楽しめる構成になっています。

この展覧会には背景となる3つのテーマがあります。それは「時代を映す、輝く"女性像"」、「画家たちが愛した"パリ"」、「フランス各地への"旅"」というもの。19世紀後半から20世紀半ばにかけて、女性のファッションや化粧が変化し、産業革命を経てパリは近代都市に。人々が田舎で余暇を過ごし、画家たちもに郊外や南仏に移り住んで作品制作を行いました。当然、変化は美意識にも及びます。

会場入り口付近にはフォトスポットが用意されています。
会場入り口付近にはフォトスポットが用意されています。

展覧会のタイトルになっている「甘美なるフランス(ラ・ドゥース・フランス)」とは、美しく、穏やかで、稔り豊かなフランスとその文化を賛美するため、古くから親しまれてきた表現とのこと。「甘美なるフランス」の美意識は、フランスで活躍した画家たちによって時代に応じてアップデートされながら受け継がれてきました。

パリだけでなく、箱根も以前より遠くなってしまいましたが、絵画の中に表れる美意識の移り変わりを渋谷で感じてみてはいかがでしょうか?

ポーラ美術館コレクション展『甘美なるフランス』
■東京都渋谷区道玄坂2-24-1 Bunkamura ザ・ミュージアム
■ ~11月23日(火・祝) 
■休館日 10月26日(火)
■10:00~18:00(入館は17:30まで)、金・土~21:00(入館は20:30まで)
※会期中のすべての土日祝日および11月15日(月)~23日(火・祝)はオンラインによる入場日時予約が必要です。
■入館料(当日) 一般 1,700円 大学・高校生 1,000円 中学・小学生 700円
公式サイト
※会期や開館時間が変更になる場合があります。最新情報は公式サイトを確認してください。

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