夏子の大冒険 〜ちいさな美術館をめぐる旅〜 岡本太郎記念館の『対峙する眼』へ。「眼。眼。眼。」編。
ちいさな美術館を巡って、作品から想いを馳せて物語を綴るこちらの連載。第3回目の舞台は、岡本太郎さんがアトリエとして42年間住まい続けた、南青山の〈岡本太郎記念館〉。3月14日(日)まで開催されている企画展『対峙する眼』にお邪魔しました。
おぞましさと、心地よさと。
敷地内へ一歩踏み込めば、気配を感じます。それもそのはず、ここには、ありとあらゆるところに “眼” があるのです。 木陰にじっと潜むオブジェや、気持ちよさそうに天を仰いで佇む作品たち。それらにじっと見つめられます。ここでの感覚はまるで、平日の真昼間、誰もいない温室植物園で感じる、おぞましさと心地よさによく似ています。
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「眼。眼。眼。」
私は今、もの凄い数の眼に見つめられている。
私の一挙一動を見逃すまいと、もの凄い集中で固唾を飲んで私の方を見つめている。
蛇みたいな眼。くまが凄い眼。まつ毛が⻑い眼。潤んだ眼。コンタクトで黒目がちのチワワみたいな眼。充血した眼。目頭が切り込まれた眼。きらきらした眼。奥二重の眼。ゲームのしすぎで寄り目になった現代っ子の眼。垂れた眼…。
この無数の眼と対峙する、私の目はどんなであろうか。目が大きいと言われる。ホラーに出てくる人形の目みたいだと言われる。言いたいことなんてないのに、「言いたい事があるなら言え」と言われる目である。
中学生の時、受験の面接練習をしていたら「あなたは目力が強すぎるから、直接相手の目を見ては失礼だ」と面接官役の先生から言われた。相手のネクタイの結び目を見て話すように なった。高校生の時、部活のコーチのジッパーを閉め切った首元の金具を見て話を聞いてい たら、「相手の目を見て話を聞かないやつは帰れ」と追い出された。アルフォンス・ ミュシャの『スラブ叙事詩』に出てきそうな目をしたコーチだった。あの日から、私は人のどこを見ればいいか分からなくなった。
目がチャームポイントだねと言われる。二重で羨ましいと言われる。メイクが映える目だと言われる。私は普段メイクをしない。
そんな造形の目で私は見つめ返す。
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今回訪れたのは…〈岡本太郎記念館〉
岡本太郎さんの作品に必ず描かれているという眼 。まるで生きているような作品たちに見つめられると、それは試されているようでもあり、微笑みかけられているようでもありました。皆さんも是非、自身の “眼” で見て対峙してみてはいかがでしょうか。私はすっかり『太陽の塔』に会ってみたくなり焦がれています。
〈岡本太郎記念館〉
■東京都港区南青山6-1-19
■03-3406-0801
■10:00~18:00
■火休
■入館料650円
※『対峙する眼』の公開は、3月14日(日)までです。