醸造と匠の技。秋田が誇る文化を改めて味わう。 伝統的な手仕事が残る街、秋田県・湯沢市へ。知っておきたい地元スポット〈石孫本店〉、〈阿部始こけし店〉。

LEARN 2021.01.21

秋田県南部に位置する湯沢市。稲作が盛んなこの地域には数百年前から「鹿島様」と呼ばれる人形道祖神をお祀りする民衆文化が根付く。そこには伝統的なわら細工の意匠が息づいていた。今回は秋田県・湯沢市を訪れたら立ち寄りたいスポットや地域の伝統工芸品をご紹介します。

見て、体験する、日本の発酵文化を知る場所に。

“米どころは酒どころ”というだけに、秋田は銘酒がそろう。湯沢市内にも歴史ある酒蔵が多く散在し、岩崎地区も元々は造り酒屋が並ぶ醸造の町。江戸末期からその醸造の技術を活かし、味噌造りや醤油造りが盛んになったという。その蔵元が今も残り、このエリアを発酵の町として再び盛り上げている。そのひとつが〈石孫本店〉。安政2(1855)年創業の165年続く老舗だ。明治期に作られた醸造蔵は今も現役で、国の有形文化財に指定されている。歴史ある木樽を使い、職人(蔵人)が創業当時と変わらぬ、手仕事で味噌・醤油造りを丁寧に継承している。

〈石孫(いしまご)本店〉

仕込み蔵だけでなく、昭和初期建造の歴史ある離れ座敷も必見。スープに百寿を使った土曜日限定の稲庭中華そばも人気。春にはマイ味噌造りも。
■秋田県湯沢市岩崎字岩崎162
■0183-73-2901
■10:00~16:00 第2土休

常時1,000本以上、こけしファン垂涎の名店。

もともと漆器店だった店に店主が趣味で収集していたこけしを並べ、展示販売を5年前から開始。木地山こけしだけでなく、東北12系統のこけしがすべてそろう。保存状態がよく、美しいこけしたちが並ぶ様は圧巻!
もともと漆器店だった店に店主が趣味で収集していたこけしを並べ、展示販売を5年前から開始。木地山こけしだけでなく、東北12系統のこけしがすべてそろう。保存状態がよく、美しいこけしたちが並ぶ様は圧巻!

また、湯沢の職人技といえば川連(かわつら)こけし。岩崎地区から車で20分ほどの川連町は、奥羽山脈の豊富な木材と漆を使った漆器の町として800年の歴史を持つ。漆器挽きをする木き地じ師したちにより、余った木材でこけしが作られるようになったのは、明治期からだという。教えてくれたのは〈阿部始こけし店〉の阿部均さんだ。

「川連こけしは、最初は子どもの玩具として生まれたものですが、やがて湯治場の土産品として多くの愛好家を生みだしました。木地山系といわれ、頭と胴が一本の木から作られている技法が特徴なんですよ」鹿島様と同じく、こけしも土地の技を残し、伝えるもの。一筆で描かれたおだやかな表情や昔ながらの前だれに、秋田のあたたかで素朴な「めんこい」がぎゅっと詰まっている。

〈阿部始(あべはじめ)こけし店〉

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木地山こけしの名工・小椋久太郎の作品など、ここでしか手に入らない貴重なものが多数。木地山系の作家は30名ほどの作品がある。
■秋田県湯沢市川連町大舘上山王50-7
■090-5237-2027
■10:00~17:00 不定休

(Hanako1192号掲載/photo : Yoichi Nagano text & edit : Kana Umehara)

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