漢方薬という選択肢を。 【保存版】現役医師が漢方の素朴なギモンにお答え!知っておきたい漢方の基礎知識&つきあい方。
「漠然としたイメージはあるけれど、漢方の具体的なことはよく知らない」。そんなビギナーが抱える素朴な疑問点を専門医師に聞いてみると…。漢方との上手なつきあい方のコツも教えてくれました。
Q.1「漢方とはどんなものでしょうか?」
A.「2,000年以上もの歴史がある日本人が慣れ親しんできた医学です。」
「漢方」と名付けられたのは、「蘭方」が入ってきた江戸時代。それまでは、医学は全て「漢方」でした。中国から伝わってきて以来、日本人の体格や環境に添うよう発展し、あの『解体新書』を翻訳した医者として知られる杉田玄白も、自分の健康維持や治療には漢方を使っていたんですよ。
Q.2「ドラッグストアで漢方薬を購入する際のポイントは?」
A.「飲み合わせも大事なので、必ず薬剤師さんに相談を。」
クリニックで診断し、処方される漢方薬と、ドラッグストアで販売されている漢方薬との違いは、濃度や使われている生薬。飲み合わせや副作用もあるので、適当に選ぶのは避けましょう。葛根湯など、自分の体質に合うとわかっているものであれば、ドラッグストアで購入してもOK。
Q.3「効果が出るまでに時間がかかるイメージがあります。」
A.「症状によっては葛根湯など、即効性のあるものもあります。」
例えば「熱が出ている」「鼻水がひどい」など、目に見えてわかるような病状には、葛根湯など即効性のある漢方薬を処方します。ですが、「疲れやすい」「慢性的に肩が痛い」など、曖昧な症状の場合には、人によって症状改善までの服用期間が長くなる場合も。
Q.4「漢方の守備範囲はどこまでですか?」
A.「外科的治療を選択したほうが明らかにベターなケース以外です。」
ガンや骨折など、手術や化学療法をしたほうが明らかに回復が早い場合、漢方の出番はその後。漢方は複数の生薬がブレンドされているため“、切れ味”という意味では劣るかもしれませんが、逆にいえば守備範囲が広い。痛みや腫れの緩和など、術後の回復を助けるのに役立ちます。
Q.5「女性のほうが漢方と相性がいいといわれる理由は?」
A.「ライフステージによる体調変化は女性のほうが多く経験するからです。」
月経がある女性は、1カ月単位でも体調変化がありますよね。さらに思春期、妊娠、出産、更年期も。しかし、ライフステージの変化による体調不良を改善する治療薬というのは、西洋医学にはほとんどありません。漢方が相性がいい理由は、まさにそこにあるんです。
Q.6「漢方は大人になってから飲んだほうがいいですか?」
A.「子供のときから飲んでも大丈夫です。」
医師の処方がある場合に限りますが、赤ちゃんでも子供でも飲んで大丈夫。鼻血をよく出す、すぐ吐いちゃう、アトピーがひどいなど、様々な症状に効果があります。10代、20代は、体が元気なので薬とは縁遠いかもしれませんが、漢方薬という選択肢があることは知っておいてほしいですね。
Q.7「肌荒れにも効果はありますか?」
A.「ニキビや肌荒れにはすごく効果がありますよ。」
漢方の知識がある皮膚科の先生であれば、ニキビにも漢方薬を処方してくれるはず。また、肌荒れの原因となる血行の悪さにも効果があるので、“飲まず嫌い”はせず、気軽に頼ってもらえたら。私自身、10代のころに知っておきたかったと思っています。
Q.8「新型コロナに効くのでしょうか?」
A.「初期症状の改善には効果があるといえます。」
COVID-19という感染症は、初期は“風邪”と同じ症状ですから、初期症状には効果があるといえます。ただ、漢方薬という発想がなく、きちんと漢方診断できる医師が少ないだけなんです(笑)。実際、漢方薬によって症状が改善した患者さんはいるんですよ。
Q.9「漢方を処方してもらうにはどのお医者さんに相談すればいい?」
A.「漢方医学を扱うクリニックをネットで検索してみましょう。」
大学病院でも漢方外来を設置しているところは全国にあります。保険診療内であれば薬代の負担は軽くて済みますので、通院しやすい場所で漢方医を探してみてください。受診の際は、まずカウンセリングから。自分の不調を説明できるよう準備しておいて。
Q.10「副作用の心配はありますか?」
A.「初診の場合は必ず服用2週間で様子を見て判断します。」
漢方薬にも副作用はあります。ですから、初診の場合は必ず2週間後の再診をお願いしています。気をつけたいのは、知識のないまま海外で漢方薬を購入すること。日本とは成分の表記方法も違いますし、すべて書かれていないことも多いのでご注意を。
Q.11「薬膳も効果を期待できますか?」
A.「できます。食欲のない患者さんには薬膳料理で改善を促すケースも。」
いきなり漢方薬、というに抵抗がある人は、漢方茶や薬膳料理から入ってもいいと思います。自分の体調の変化を敏感に察知し、薬膳で予防や改善ができるとわかれば、すぐ病院にかかれなくても心強いですよね。まずは暮らしの身近な場所で、漢方に慣れ親しんでもらえたら。
Navigator…小川恵子(おがわ・けいこ)
金沢大学附属病院漢方医学科で臨床教授、診療科長を務める。漢方治療全般を行う。関連病院のかがやきクリニックではオンライン診療も行う。
(Hanako1190号掲載/illustration : Hana Akiyama text : Yoshie Chokki)