本の扉はどこでもドア。 ジェンダーについて考えるきっかけをくれる本4冊。おうち時間で知らない世界を覗いてみよう。
物語のなかに没入したり、知らない世界を覗いてみたり、新しい言葉に触れたり、本の扉はどこでもドア。いつだってどこにいたって、開けばアクセスできる別世界。そこで、今回はジェンダーについて考えるきっかけになる本をご紹介します。
ジェンダーを考えてみる。
ジェンダー(Gender)とは「性」を意味するが、生物学的な性別(Sex)に対し、社会的・文化的につくられる性別のことを指す。日本はもちろん、世界中でこの性に基づく偏見や不平等が顕在化しており、最近ではそれを題材にした本が多く出版。セクハラ、賃金格差、教育格差、性暴力、虐待...。ジェンダーの不平等がもたらす問題はとても根深いが、世界中で女性たちが声を上げているのを知ると勇気づけられもする。
① 『お砂糖とスパイスと 爆発的な何か─不真面目な批評家 によるフェミニスト批評入門』 著・北村紗衣
イギリス文学から『アナ雪』まで、映画や文学、演劇等の芸術作品をフェミニストの視点で語る批評集。批評というと難しく感じるが、語り方はいたって平易。取り上げられた作品が観たくなること必至。作品から女性像や男性性、女性性、性差別などをズバズバ斬る様は、まるで探偵のようで痛快。(書肆侃侃房/1,500円)
②『女であるだけで』 著・ソル・ケー・モオ、 訳・吉田栄人
マヤの先住民族の女性オノリーナが夫殺しで有罪となり、その後恩赦で自由を勝ち取るまでの道程を描く。文字も読めず14歳で売られた彼女は夫から日常的に暴力を受けていた。刑務所で文字を覚え、書くことで「初めて人間になった」。女性の絶望を描きつつ女性たちの連帯がもたらす希望に涙。(国書刊行会/2,400円)
③『82年生まれ、キム・ジヨン』 著・チョ・ナムジュ、 訳・斎藤真理子
主人公であるキム・ジヨンの誕生から学生時代、受験、就職、育児までの半生を克明に描く。家では炊きたてのご飯を先に弟に振る舞われ、就職活動でも男子が優遇され、会社では大きな仕事を任せてもらえない…。どのエピソードもあるあるとうなずきたくなるものばかり。秋には映画も公開。(筑摩書房/1,500円)
④ 『バッド・フェミニスト』著・ロクサーヌ・ゲイ、 訳・野中モモ
著者は40代のハイチ系アメリカ人女性。女性蔑視のリリックのラップ音楽が好き、可愛いものとピンクが大好きで、従来のフェミニストに抵抗を感じていたという「バッド・フェミニスト」な彼女が語る、アメリカに根深い差別や格差、不寛容についてのエッセイ。知性とユーモアに満ちた言葉に刮目。(亜紀書房/1,900円)
(Hanako1184号掲載/photo:Kenta Aminaka text:Keiko Kamijo)