花井悠希の朝パン日誌 テラスでデニッシュを。…〈danish Bar〉と〈Laekker〉

LEARN 2020.04.02

春真っ盛り。桜がポンポンと咲き、ルンルンとスキップを繰り出したくなるほどの青空と陽気だけど、それを心から楽しむことが出来ない新型コロナウイルス感染症の現状。先行きの見えない未来。心配しない方が難しい状況の中で、本来元気なはずの自分の心すら萎んでしまいそうですよね。そんな中でも皆に食べることの幸せを変わらず届けてくれているパン屋さんたち。外出自粛などでいつもより増えた自分のための時間は、テイクアウトしたパンをゆったりお家で楽しむいい機会かもしれません。テラスで食べられたら最高だけど、テラスがなくたってカーテンを開けて窓を開け放てばもうそこは即席テラス席です。朝の光を浴びたらとても気持ちいいはず。春の陽気を含んだ風はきっと、皆で見上げるはずだったあの満開の桜や、芝生の横で生き生きと輝くあの葉っぱ達を揺らしてここまで来たはずだから。

サクッとはお任せあれ…〈danish Bar〉

全国に10店舗ある〈danish Bar〉。アンデルセングループの〈LITTLE MERMAID〉がやっているデニッシュブランドです。どのお店も駅や商業施設の中にあるので、通りがけにサクッと買える(デニッシュだけに)便利なお店。

「カリカリシュガー」
「カリカリシュガー」

チュロスのように、気軽に食べ歩きが出来る感じの袋に入れてくれます。すっくと伸びるスティック状になったデニッシュは見るからにパリッとした見た目で、所々に貼りついた大粒の砂糖はつぶつぶが白く光って眩しい!ワンハンドで持てる手軽さにウキウキと高まってフランクフルトのように勢いよくかぶりついてみたならば、サクッと来てすぐにふくよかな柔らかさの弾力に包まれました。見た目のシャキッとそびえ立つ様相と、デニッシュ=さっくりなものだと待ち構えていた私よ、甘かったな。こんなにもほっくりもっちりしているなんて!嬉しい誤算です。

全国 danish Bar

もう一つ嬉しい誤算が。デニッシュに砂糖だから、めちゃめちゃに甘いのかと見積もっていたら思ったより控えめなんです。デニッシュらしい生地の甘みはありつつも抑えめで、所々塊となって貼りついた砂糖がしゃりしゃりじゃりじゃりと食感の合いの手を入れながら溶ける時、甘みがもう一押し繰り出してくる塩梅。お散歩しながら食べるのもきっと楽しいけど、ちゃんとお家で向き合って頂いても美味しいデニッシュでした。おやつにもいいですよね。これから駅とかで見つける度に買ってしまいそう!

麗しのデニッシュ達…〈Laekker〉

去年の10月に代官山にオープンしたばかりのお店。こちら北海道産バターと小麦を使用した最高級デニッシュ専門店とのことで、期待が高まります。ショーケースに並ぶ美しさもお値段も、ケーキのような最高級の風格でドキドキしましたが、その美味しさも最高級!!完成度の高いスイーツのようなデニッシュでした。

焼きたてを運良くゲット出来たので、急いで家に帰っていただきましたよ。あまりの隙のない佇まいに、どこからいこうか迷います。普段なら端っこからいくところだけどなぁ、と迷いながら半分にナイフを入れると、時間軸が倍速になったような錯覚が!堰を切ったように、中に詰められていたカスタードや苺のコンポートが溢れ、トップの苺がその雪崩に乗っかって滑り落ちてきたから、慌ててその断面からガブリ!なんですか、この食べ物は(デニッシュです)。この世のサクサクを全て手にしたような軽やかさではありませんか。焼きたてに出会えたのでデニッシュがまだ内側の水分を吸ってないからかもしれないけれど、全ての食べ物で一番軽いんじゃないかと思うほど軽い!サワッサワでサッッッックサク!それに加えて、バターのコクと甘み、旨味、香ばしさがどんどんと出てきます。考えつくバターのいいとこほとんど持ってやしませんか?こんなに軽いのにこんなに芳醇な風味だなんていいとこ取りにもほどがあります。

でもこのパイ、実は器なんです。カスタードとトップに飾られた生のイチゴ、そしてイチゴのコンポートという夢のような共演を受け止め見守るための器。器いっぱいに詰まったのはフレッシュな味わいのイチゴのコンポートと、トロトロのカスタード。全部がまばゆい透明感を纏っています。どこまでも瑞々しく、クリアな味わい。限りなく生に近く、甘みを閉じ込め風味を引き延ばしたコンポートがカスタードのトロトロと手を組んで水のよう。もはや液体です。故に、目を離したら一瞬にして決壊します。じっくり食べたい気持ちがあるのに、美味しさに惹きつけられるのと決壊を防ごうと気持ちが急いて、大切に食べたいのにそうはさせてくれない時間勝負。パイとどっちが主役だなんて決められない。負けられない試合がここにあるのです(何の?)。

ふっふー。運がいいことにこちらも出来立てのタイミングに立ち会えたのです。パンの神様は引き続き私に味方してくれるみたいです(※前回参照)。同じようにサックサックと軽やかに弾むパイの間には、必ずバターのコク深い香りと味わいが花開き忙しい。隙間という隙間に抜け目なくバターの主張を放ち、食べ進めるほどにその味わいは深くなります。

代官山 Laekker

あっちがコンポートならこっちはキャラメル。同じくとろとろなカスタードの上を無抵抗に滑り落ちるのは同じく水のようなキャラメルです。苦味がきらりと光ってフレッシュバナナの味わいを包みます。デジャヴのようかと思いきや、この苦みを記憶に刻み込んでさっきと似てるものとは思わせない鮮やかさは見事です。

「クロックムッシュ」
「クロックムッシュ」

お家に入ってリベイクしてからいただきました。甘くないデニッシュになると、あのパイがシャキシャキとまるで千切りキャベツのような歯応えに感じてくるのだから不思議。そこに溢れ出るバター、有り余るバター。バターの風味はもちろんたわわだよと言いたいのです。その中にはとろりんとしたホワイトソースに、ハムにチーズ。こちらはあのジューシーな洪水のようなことにはならなくて、テクスチャーは少しもったり。全部足し算だけど、ホワイトソース達が濃厚すぎないのとこのサイズ感のおかげでとてもバランスのいい一品です。ホームパーティーとかで前菜代わりに出てきたら、とてもかっこいいと思います(惚れます)。

この子もリベイク!こちらのデニッシュ生地への感動をここまでツラツラと書いているんだから、デニッシュ生地だけ食べてみたいって思う方もいるはず!ちゃーんとご用意ありましたよ。でも、ただプレーンなだけじゃないんです。塩がパラリとシャクシャクのデニッシュにふられているのです。どこまでも広がるバターの甘みとコクでのっそりと豊満な世界にキラリと光る星のように時折塩が冴えて、グッとしまる。なにかとプレーンを選ぶあなたにも、私みたいになにかと変化球選びがちなあなたにも刺さる、少しだけ変化をつけたプレーン。気が利いています。

なにかと落ち込んでしまうこんな時だから、どこにもいかないでいてくれるその陽の光、まろやかな風を全身で感じて、自分に美味しい恵みをプレゼントしてみませんか?デニッシュの豊かな美味しさはきっと心をあったかくしてくれるはず。ほんの少しだけでも上を向いて、あともう少し体も心も春を感じられる時を気長に待ちましょう。

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