学芸員ラジオDJ・DJAIKO62さんがおすすめする、今見ておくべきアートとは? 「マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展」、〈三菱一号館美術館〉で開催。〜今度はどの美術館へ?アートのいろは〜
ラジオ番組で美術展を紹介するうちに美術館巡りの面白さに目覚めたというDJAIKO62さん。コラム連載第17回は〈三菱一号館美術館〉で開催中の「マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展」をご紹介します。
クリエイティブな才能を多角的に発揮した天才デザイナー、マリアノ・フォルチュニ。
マリアノ・フォルチュニ、初めてその名前を聞く、という人もいるかもしれません。ヴェネツィアでは彼のアトリエ兼住居だった邸宅が〈フォルチュニ美術館〉として1975年に開館し人気のスポットです。スペインで生まれ、ローマやパリを経て17歳からはヴェネツィアで過ごしたフォルチュニ。デザイナーとしてだけではなく、絵画、写真、舞台芸術にも才能を発揮、さらにビジネスマンとしてのセンスも飛びぬけていたそう
布の魔術師が発明した「デルフォス」とは。
多彩な彼の功績を示す上でハイライトといってもいいのが「デルフォス」の発明でした。19世紀末、女性はコルセットで締め上げウエストを細く補正、その上から衣服を身につけていました。一方でデルフォスはゆったりと身に添いつつもストンとしたシルエットが特徴的で、上質な生地と特殊に加工されたひだは現代においても完全な再現はできていないそう。デルフォスを開発したのがフォルチュニ36歳の頃、その後プリーツやプリントの特許を取得し、40歳で〈フォルチュ二〉社を設立しました。この「特許」ですが、フォルチュニのビジネスマンとしてのセンスを裏付けるものでもあり、生涯を通して34もの特許を取得しています。
図録内、三友晶子さん(東京家政大学博物館学芸員)のコラムによると、知人宛の手紙の中で「日本のシルクを手に入れなければならない。」「あれがないとどうしたらよいかわからない」と記しているそう。生地の入手元ははっきりしていませんが、日本のシルクを使っていたかもしれませんね。
デルフォスはプリーツを保つためにこうしてねじって箱に保管していました。「クリーニングはNY店へ」とも書かれており、アフターケアにも余念がなかったことがわかります。
父も画家だったフォルチュニ、絵画の基礎はヴェネツィア派の巨匠たちの作品を模写することで学び、自分の作品に活かしていくようになったそうです。
原点は絵画、画家としての活動。そこから写真、彫刻、舞台美術、デザイン、ファッション、テキスタイル、いずれの分野においても見るものを圧倒するクオリティで創作をしました。デルフォスで知られる彼ですが、〈フォルチュニ美術館〉協力だからこそ見られる日本初公開の展示を通じて、フォルチュニの作家人生そのものに触れる機会としてほしい、そんな回顧展でした。
グッズも上質です。
※写真は内覧会時に申請・許可を受けて撮影したものです。転用・転載はできません。
「マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展」開催概要
■会期:2019年7月6日(土)~10月6日(日)
■休館日:月曜休館(但し、祝日・振り替え休日の場合、9/30とトークフリーデーの8/26は開館)
■開館時間:10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで(金曜、第2水曜、会期最終週平日は21時まで)
■会場:東京都千代田区丸の内2-6-2〈三菱一号館美術館〉
■展覧会公式サイト:https://mimt.jp/fortuny/
※チケット情報やアクセス他、詳細は公式サイトをご確認ください。