ふわふわコッペに優しさ挟んで。 都内で愛され続けるパン屋さん。懐かしさを感じる老舗のパンが、やっぱり美味しい。
おしゃれなベーカリーも素敵だけど、ふらっと立ち寄りたくなるのは、どこか懐かしく作り手の顔が浮かぶようなパン屋さんだったり。東京都内にある老舗のパン屋さん2軒をご紹介。地元の人から愛され続ける、美味しいパンを食べに行きませんか?
1.変わらず、真摯に、美味しいパンを。〈藤乃木製パン店〉/富士見台
先代から受け継ぎ、使い続けているオーブン。店主の加藤良一さんが3時からひとりですべてのパンを焼いている。
オーブンは昭和43年製というからもうすぐ半世紀。いまのオーブンのようにデジタルで温度調節できるのではなく、ダイヤルをまわして職人の勘で最適な温度を探り当てる。このオーブンでなければ、あの香ばしさは出ないだろう。すべてが昔ながら。パンの種類も、作り方も。
おやつにぴったりなミニサイズのコッペパン。たっぷりの生クリームと、真ん中に鎮座する缶詰のみかんが郷愁を誘う、「mini生クリームパン」100円。焼きそばやコロッケを挟んだミニ惣菜コッペも人気だ。
技術が発達しいろいろ便利な材料が出たけれど、目もくれず、シンプルな材料で作る。「それしかできなかったんですよ」 とご主人は言う。「伝統を守っています」 と胸を張ってもいいのに、自分が特別なことをしているなんて気持ちは少しもない。ただ日常を積み重ねる。
2.たくさんのファンのために、続ける。〈しみずやパン店〉/西荻窪
創業48年の老舗。対面式のショーケースがあるのみ。地元の喫茶店が40年以上贔屓にするなど、味に定評がある。
パンが好きで職人を目指したという店主の金原勇三郎さん。妻の幸子さんが亡くなって一時閉店した際には、住民が店先に寄せ書きをして復活を応援するほど愛されている。
コッペパンを1日に何度も焼いては、その都度冷ましてサンドする。タマゴサンドが一番人気。ポテトサラダやカツ、焼きそばサンドも。すべての商品がそろうのは13時くらい 。
(Hanako1128号P42,43掲載/photo:Yoichi Nagano text:Hiroaki Ikeda(essay), Kaori Hareyama)