変わらないやさしさが嬉しい。 特別な日に行きたい。懐かしい味がここにある、とっておきの洋食店3選
どこかホッとする懐かしい味で、今またブームが再燃しつつある日本オリジナルの食文化・洋食。レトロであたたかな空間が広がる店内と、古くから愛さえれ続けるメニューが揃うここは、特別な日にぴったり。オススメの3軒をご紹介します。
1.「家族の和」と共に引き継がれた昭和の味〈フランス料理 蜂の子〉/銀座
〈蜂の子〉は昭和23年に開店。初代店主・平澤平一さんの親戚が〈蜂瀧〉という料亭を構えていたため、この名がつけられた。「最初の店は銀座8丁目にあって、この写真は昭和24年ごろにお店の前で撮影したの。戦後の復興の中で、洋食の評判がまたたく間に広まって。映画スターや宝塚の方も来る人気の店でした」
その後、店は築地に移転し〈フランス料理 蜂の子〉となる。メニューには、平一さんが考案した「白スパと肉ヤサイ」、食パンを器にしたグラタン「パンコキーユ」など、低価格で親しみやすい料理が並び、中でも人気を博したのが「オムライス」だった。
「主人がみんなに食べてほしいと大切にしていたメニューだから。これだけはずっと値上げしないでいるの」と名物マダムの平澤智枝子さん。
(Hanako1142号掲載/photo : Akira Yamaguchi)
2.心までほんわか温かくなる洋食がここに。〈grill GRAND〉/浅草
浅草に昭和16年(1941年)に創業したこちらのお店。1階はテーブル席、2階はお座敷。お祝いごとやら法事やら、婦人会やらで、ご近所から頼りにされている。大らかで、まさにアットホームな雰囲気。居心地がいいこと、この上なし。また、すぐに食べに行きたくなる。浅草の洋食、クセになる。
浅草芸者のために初代が作ったメニューで、おちょぼ口でも食べられるように、普通のロースカツの半分の薄さで2枚。今も人気である。
ほとんどの料理は注文を聞いてから作り始めるから、〝私だけ〞に作ってくれているというオーダーメイド感がある。おかげで、食べているうちに心もほっかほかになってくる。
(Hanako1144号掲載/photo : Yoichi Nagano text : Michiko Watanabe)
3.創業して130年余経っても、変わらない味。〈みかわや〉/銀座
明治20年から、銀座通りで食料品店を営み、戦後、フランス料理店を開店。〈みかわや〉の洋食を「特別な日に」と選ぶ人が多いのは、創業当時のレシピが今も大切に守られているから。そのオーセンティックな洋食には昔ながらのファンが多く、親子三代で訪れる人も多いのだという。レトロモダンな内装も、一層気分を盛り上げてくれる。
きつね色にこんがりと揚がった「かにクロケット」は、カニの旨味がぎっしりと詰まった濃厚さで絶品。特製タルタルソースの酸味と抜群に合う。隠れた人気メニューハヤシライスは、ナイフとフォークが必要なほど肉が厚い。ステーキに使われるヒレとサーロインから削ぎ落とされた肉を使用しているのだとか。
アラカルトは一日中、食べることができる。
(Hanako1153号掲載:photo : Masako Nakagawa text : Kayo Yabushita)