全国名喫茶エリア&名物グルメ。
川口葉子がナビゲート 前編
日本全国にはエリアごとに独自の発展を遂げた喫茶文化があります。その地ならではの特性と、一度は訪れたい喫茶店と代表メニューをライターで喫茶写真家の川口葉子さんに教えてもらいました。
札幌|〈 夜パフェ専門店ななかま堂 〉
シメパフェ文化が根付く洋喫茶大好きエリア。
寒い季節に暖かい室内で冷たいアイスクリームを楽しむという習慣が札幌にはあるそう。近年は、ディナーやお酒を呑んだ後にパフェを食べる“シメパフェ”文化が定着。写真映えする華麗なパフェがSNSを通して共有されやすいという点も見逃せません。〈ななかま堂〉は、夜パフェ専門店として有名な一軒。美しいビジュアル、素材を何種類も組み合わせることで、最後まで飽きさせない味と食感のバリエーション、くすっと笑えるネーミングが魅力ですね。
盛岡|〈 光原社 可否館 〉
土地が生んだ文豪、宮沢賢治を愛する名喫茶あり。
盛岡はレベルの高い喫茶店文化、コーヒー文化が息づく城下町。宮沢賢治ゆかりの街としても知られる地で、作品に由来する喫茶店の〈光原社〉は、宮沢賢治の生前に出版された唯一の童話集である『注文の多い料理店』を世に送り出した出版社。現在は、民藝品を扱うショップと、喫茶店〈可否館〉を構えています。「くるみクッキー」は、ほろりとした歯ざわりのクッキーで、香ばしい風味のくるみをサンド。コーヒーと好相性です。
藤沢|〈 喫茶ジュリアン 〉
作家や画家が滞在した歴史の面影が残る町。
藤沢は大正時代に別荘地として発展し、芥川龍之介など多くの作家や画家、学者たちが滞在し、ゆたかな文化を醸成しました。喫茶店の名前に、そんな歴史の名残りが薫るのが、大きな丸窓が目をひく〈喫茶ジュリアン〉です。店名は、スタンダールの小説「赤と黒」の主人公、ジュリアン・ソレルに由来するのだと、お店のオーナーにうかがいました。イチゴ味の赤とメロン味の緑、美しい2色のソーダを組み合わせた「ペアソーダ」が人気です。
静岡|〈 喫茶ポプラ 〉
盛り上がりを見せる、新たな喫茶エリア。
静岡といえばお茶の産地。かつては、わざわざ店で日本茶を飲むものではないという認識が強くありましたが、近年は日本茶カフェも増えています。ですが、喫茶店といえばやはりコーヒー。〈喫茶ポプラ〉の「フルーツサンドイッチ」は、先代マスターが考案し、数年前に復活したメニューです。四角くカットしたサンドイッチを放射状に並べるアイデアが素敵で、フルーツが並ぶ断面が美しい。新鮮なフルーツの香りが弾ける一皿です。
名古屋|〈 コンパル大須本店 〉
「足し算の美学」が光る 日本有数の喫茶エリア。
名古屋では、休日は家族そろって喫茶店で食事をする習慣があります。重きを置くのは「お値打ち感」。それ故、お得気分を味わえるよう、コーヒーにトーストやゆで卵をサービスで付ける、モーニング文化が定着したのだと思います。〈コンパル大須本店〉の名物メニュー「エビフライサンド」にも足し算の美学が。エビフライだけではなく、ふわふわタマゴとキャベツをはさみ、ソースも自家製のカツソースとタルタルソースのダブル使い!