高島平をぶらり。圧倒的スケールと生活の息遣い|花井悠希の「この街この駅このパン屋」
FOOD 2023.04.06
ヴァイオリニストの花井悠希さんがお届けする、新しいカタチのパン連載。1つの駅、1つの街にフォーカスを当て、ここでしか出会えないパン屋さんを見つけていきます。
2軒目:温かな光に誘われて。〈Do monsieur(ドゥ ムッシュ)〉
夕方に差し掛かり、駅前に灯つ暖かな光に吸い寄せられるように立ち寄ったこちらのパン屋さん。たくさんの方が続々と訪れ、街の人に愛されているのが伝わります。
見た目よりもずっと軽やか。けしの実のプチプチつぶつぶした細かいアタックの連続を受け止める、軽やかで繊細な口当たりの生地。カマンベールチーズのまろやかなコクを縁取ります。
甘いに傾くことも、しょっぱいに傾くこともなくお食事パンにもおやつパンにもなれる柔軟性の高い子。
人気商品のこちら。フレンチトーストに、卵、周りにはマヨネーズという甘じょっぱい系代表なテイスト。第一印象は甘いフレンチトースト。がっつりとハムエッグがオンしたところに、焼けてとろりんと緩んだマヨネーズがジャンキーな油脂感と酸味で、黒胡椒が待っていました!とキリリと冴える。これ一つの充実感たるや。朝に食べてシャッキリ出かけたくなるパン。
日もすっかり落ち、駅に向かうと、どこまでも均一に並ぶ灯りがきれいでふと足を止め魅入ってしまいました。子供一人で自転車にのって公園に遊びに行く光景があちこちで見られて、東京だけど故郷に帰ってきたようななんだか懐かしい気分になる街。時代は流れ、子供の遊びも多様化してきているように思っていたけど、私が子どもの頃見てきたものと変わらない姿がそこにはありました。なんだか安心するなぁ。
ふとメランコリックな気持ちになったら、またここに帰ってこよう。